『NEVER EVER』



Chapter 7 ―願いが叶う瞬間―

「7時半・・・かぁ。」

 私は行く当てもなく、ただただ歩いていた。
本当に、これで良かったのかな。

が本当に好きな人と、うまくいきますように。”

 ・・・これで、良かったんだ。
が幸せなら、私も幸せ・・・でしょ?
それに、人の気持ちを願いで変えて手に入れるなんて、悲しすぎる。
今までの時間が、何だか無意味なものに思えて。
これで良かったんだ。
たとえさんが上手くいっても。
が私に、ほんの少しでも笑ってくれるなら。
が私を、ほんの少しでも求めてくれるなら。
そしたら私、のそばにいること・・・許されるかな。

、そろそろ家に帰った方がいいんじゃねぇか?」

 背後からシオンの声は聞こえるものの、私は返事を返すことを忘れる。

「それに俺・・・そろそろ戻らなきゃ。」
「え・・・どこに?」

 やっとこっちを向いた、とでも言うような顔で、シオンは私の質問に答えた。

「天界だよ。俺、これでも天使なんで。」
「もう帰っちゃうの?」
「だって願い事は聞いてあげただろ?」
「そんなの、まだ結果は分かんないじゃん。」
「まぁ、願いが叶うかどうかは、次第だからな。」
「ちょ、ちょっと待ってよ。意味がよく分から・・・」
「ほら。が来た。」

 人込みの隙間から、息を切らしたの姿が見える。
私は慌てて駆け寄った。

、こんなトコで何して・・・」
「それはこっちのセリフだよ。こそ何してんの?」
「あー・・・私は、ちょっとブラブラ歩いてただけ。」
「こんな時間に? 1人で?」

 何だか、の顔がすごく切ない。
今にも泣き出しそうな、だけど怒ってることを強調するような声。

「危ないだろ。女の子なんだから。」
「はぁーい・・・。」
「家まで送るから。ほら、行こ。」

 もう・・・さんに会ってきたのかな。
って事は、もう結果が分かったって事?
どうしよう・・・聞くに聞けないよ・・・。

―帰り道―

 しばらく、2人の間に沈黙が流れた。
何かを考え込むようなの後を、私はついていく。
戸惑いながらも、私はに話し掛けた。

「ねぇ、何であんなトコにいたの?」
「え? ・・・を探してたら辿り着いただけ。」
「私を探してた??」
「そっ。」
「じゃぁすごい偶然だね。私もたまたまあそこに居ただけだし・・・。」
「誰かが引き合わせたみたいだな。(笑)」

 あれ・・・の微笑みが、何だか優しい。

「あのさ、。」
「ん?」
「俺、のこと好きみたい。」
「・・・・・・・・・・・・・・・え?」
「だからぁー、俺にはが必要なのー!」
「・・・さんは? 彼女に告白するんじゃなかったの?」
「そうだけど。でも、俺やっと気づいたんだ。」
「気づい・・た?」
が隣にいるのが当たり前になってて、の大切さを忘れてたんだ。さんの事は、確かに好きだった。
 だけどそれは、俺がさんに憧れてただけで・・・。本当に守りたいと思うのは、だけ・・・だから・・・・・。」
「・・・・・・・・・・。」
「何かさ、今さら何言ってんだって感じだよね。だけど気づいたのは、ついさっきだったんだ・・・。
 が隣で笑ってて、俺がその隣で笑ってて・・・そんな毎日が、俺の本当の憧れだったのかも知れない。
 俺じゃ何もしてあげられないかも知れないし、何も差し出せるものなんてないけど・・・。
 やっぱり俺は、ずーっとと一緒にいたい。それが1番の幸せだと思うから。」

 予想してなかった・・・こんな事。

「私だって、に差し出せるものなんて・・・ないよ。あるとすれば・・・変わらない確かな想い。それだけだよ?
 そんな私と一緒にいて、は本当に幸せ?」
「当たり前じゃん。が隣にいるだけで、俺は幸せなんだから。」
「お、大袈裟だよ。(笑)」
が隣からいなくなったら、きっと今の普通の生活が壊れていくと思う。それだけの存在って大きいんだよ。」
「本当・・・に?」
「うん。だから、俺たち・・・付き合わない?」
「・・・うん。」

 私が返事をした瞬間、周りの景色がフリーズした。
も、道を歩いていた人も、風で舞っていた落ち葉も、全部が止まっていた。

「な・・・何これ・・・。」
「天界に帰る時は、目立っちゃうからこーやって時を止めて行くんだよ。」

 背後から、シオンの声がする。
そして、空の雲の隙間から、光が差し込んだ。
光がシオンの体に突き刺さるように当たった瞬間、シオンに変化が現れ始めた。

「シ、シオン・・・・・だよね?」
「あはは、ビビった? これが天界での普通のサイズ。今までは小さくなってただけ。(笑)」

 まるで普通の人間の男の子みたいな身長。
だけど翼は生えたままの、シオンが目の前に立っていた。

「これで、が本当に好きな人と上手くいきますように、っていう願いは、叶えられました。
 契約により、天使シオンは、これより天界へと戻ります。」

 いつもと違うシオンの口調に、私は本物の天使を見た気がした。

「じゃぁ、俺は行くから。言っとくけど、がお前のこと好きだって言ったのは、俺が何かしたワケじゃないからな。
 あいつの本心を、俺が気づかせてやっただけなんだから。お前ら、幸せになれよ。」
「ありがと。シオンの事、忘れないよ。本当にありがとう。」

 そしてシオンは、空へと羽ばたいていった。
止まっていた時間が、また動き始める。

「よし、じゃぁ、帰ろう。」
「うんv あ、待ってよ〜!」

 もしもまた1つだけ・・・願いが叶うなら。
私はきっと、あなたのこれからの幸せを願うでしょう。