再び、こんにちは。
ここ数日、ヴェネツィアでは深い霧になっています。この週末から、ヴェネツィアは正式にカーニバル期間。カーニバルは霧が一番、と思っている私は、なんとなくウキウキしていますが、車を運転する人にとっては、たまったものではありません。
違和感・2
Last Samurai(イタリアでは、l’Ultimo
Samurai)は、こちらではお正月休み開け直後の公開となりました。娯楽の少ないイタリア、冬、特に、クリスマスからお正月にかけてのお休みは、映画市場最大の稼ぎ時です。あえてその時期を避けたのはおそらく、毎年同じ監督・俳優でクリスマスに公開される映画あって、イタリア版虎さん、とでも言いましょうか。この冬はその2大コメディーに加え、指輪物語・完結編の公開も重なったためでしょう。その2大、3大対決のほとぼりも冷めた頃、登場したのが、l’Ultimo
Samuraiでした。クリスマス期間もひっきりなしに広告を打てたわけで、確信犯的とも言えます。ともかく、私が行ったのは公開2週目、ヴェネツィア郊外にあるシネコン、映画複合施設というのでしょうか、全10室のうち3室を占拠しての上映、それでも一時間以上待ちという大盛況ぶりでした。
イタリアでは、外国映画は全て、映画館でも吹き替えで上映されます。さすがに、大物俳優は常に同じ声優が吹き替えるそうで、一般イタリア人はその声が普通になるのでしょう。ところがこちらは、逆に大物ほどさすがに声のイメージもあるので、いつもはじめは声になれず、耳がぎくしゃくします。今回は、ようやくトム・クルーズの声はこれね、と慣れたころに日本人登場。日本語の会話の部分は、すべてオリジナル音声のままで、イタリア語の字幕が出ました。字幕に慣れないイタリア人が、必死に読んでいるのを尻目に、こちらは楽チン楽チン。何やら大河ドラマにトム・クルーズが出て(しかもイタリア語でしゃべって)いる、くらいの感じで見ていました。
興味深かったのは、日本人が英語をしゃべる場面、当然こちらではイタリア語に吹き替えられているのですが、それが「日本人のしゃべるイタリア語」になっていたのです。まさか渡辺謙氏その他、わざわざイタリア語も吹きこんだとも思えないし、当然こちらの声優が吹き替えているはずですが・・・特に調べていないのですが、まさか日本人声優がいるとも思えないし、これがまさにプロの仕事というのでしょうか。その違和感の無さが、逆に意外でした。
そういう、技術的な面はさておき、うかつにも、は、っと心を引かれたのは、最後の戦場の場面。渡辺謙とトム・クルーズが敵方に突っ込んでいくところ、一瞬、映像上そういう処置がされていたのか、それとも私の網膜にそう焼きついたのかわからないのですが、まわりの、他のサムライたちがすべて向こう側を駆け抜けて行く中、その二人だけがスローモーションか、または全くの静止画像として浮き上がったのです。その時に、ああ、まるで絵のようだ、と。パオロ・ウチェッロの「サン・ロマーノの戦い」(フィレンツェ、ウフィッツィ美術館、1470年頃)を思い出していました。
経済紙、Il sole 24 oreの1月18日付け日曜文化版では、トムクルーズと村の子ども達が戯れる、大きな写真を載せ、映画面の半分を使いながら、「ウエスタン・ソースの中のサムライ、天皇に仕えるヤンキーの、全くありえない話」。5つ☆のうちわずか半星と酷評でした。
それでも、映画の目的は興業収入だと思えば、これだけの大盛況ですから、十分成功といえるのでしょう。さすがに友人の中でも見たという人が多く、彼らは私の感想を聞きたがるのですが、「第1に、アメリカ映画。でも、まあ、娯楽映画としてはよくできている方なのでは」というと、割と皆納得するようです。イタリアの歴史ものだって、ハリウッドにかかれば皆、完全に別のお話。さすがに、そのまま信じこんだり、いきなりサムライにいれこんだり、というほど、今や単純ではありません。私の判定を確認してから、ああだ、こうだ、と言い始めるあたり、文句なしに絶賛、というわけでもないようです。
いろいろな意味で、違和感はぬぐいきれないけれど、東京、あるいは日本、といったモチーフが、パリやニューヨーク、ロンドンやローマのように、ごく普通に日常に登場するようになってきたということ、映画の持つ大衆性ということを考えると、悪くないのでは、と私は思っています。
では、よい週末を。
Fumie
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