風景が変わる


自宅窓から、出火初期段階(手前は火事とは無関係の工事現場)

こんにちは。いかがお過ごしでしょうか。

今週末に復活祭を迎えるイタリア、その後にも休日が続く嬉しいゴールデンウィークの幕開けとなるはずが、ヴェネツィアでは、ひとつ事件がありました。

対岸の火事

今日(4月15日)、午後一時過ぎ、陽が差してきたので少し窓を開けよう、とふと外を見ると、窓の下で観光客や通行人が皆立ち止まって一定の方向を見ていました。眺めがいいので立ち止まる人も多いのですが、それにしても何か変?と思って、ふと視線の方向をたどると、広い運河をはさんだ対岸、視界のほぼ右端で、いつも見なれた大きな建物から炎が上がっているではありませんか!!!
正確には、本島の南側に寄り添うようにあるジュデッカ島のほぼ西端。1896年の建設の元・製粉工場。ヴェネツィアではとりたてて古い方ではないとはいえ、ハノーバの建築家によるネオゴシックの小さな塔のついたれんが色の建物は、ヴェネツィアのおそらくちょっとヴェネツィアらしくない景色で独特の存在感を出していたものです。
1954年に倒産した後は廃墟となっていましたが、ホテル、住宅などの複合施設として生まれ変わるべく、2年前から修復工事が行われていました。
何しろ車の通らないヴェネツィア、私が気がついたときには、既に消防車ならぬ消防船が運河側に停泊し、放水していました。ところが、元々高さがある上、最上階近辺らしき火元にはなかなか水が届かず、そうこうしているうちに、「コ」の字型の建物の角部分にのっかっていた塔が崩壊。なすすべのない、そんな消火活動をあざわらうかのように、火はコの字に沿って内陸方向に燃え広がり、2時間後には「コ」の字の一辺が完全に崩れ落ちました。
途中から、ヘリコプターによる上空からの放水も行われていましたが、これは到着が余りにも遅かった、と問題になっているようです。消防隊用のヘリコプターは早い段階から上空に参上していたのですが、当初は現状把握のためだったのか、全く目に見える形での消火活動はせず。煙でうまくヘリが使えないのか・・・などと言ったりしていますが、途中から何の問題もなく使いはじめたことを思うと、確かにこのタイム・ラグは不可解なものがありました。
夕方5時半頃にようやく、火はほとんど沈静化したように見えましたが、日没後の8時半にもまだ放水を続けていました。そのため、詳細な現場検証などはこれからですが、火元が1カ所でなく数カ所らしいと指摘されており、放火の疑いが強いそうです。
ヴェネツィアでは、フェニーチェ劇場を火事で全焼したのが、1996年。その再建計画は二転三転し、ようやく今年、この秋のシーズンこそ新劇場を開幕させようと、突然急ピッチで工事を進めているところでした。そのフェニーチェ消失がまだ記憶に新しいまま起きた今日の火事は、水の上に浮かぶヴェネツィアという都市が、皮肉なことに火に弱いという事実をあらためて思い出させることとなりました。今日のように、広い運河に面した建物でさえ、1歩中に入ると、運河のないところに消防船が近づけないのは同じ。まして、劇場があるとはとても思えないような、とりわけ狭い路地や狭い運河に囲まれたフェニーチェ、布や木材が多用されていたであろう劇場が無残にも燃え落ちたのも無理もありません。
今日の火事も、被害者のなかったことだけが不幸中の幸いといえるのでしょう。

みなさまも、どうぞ火の元にはお気をつけください。
ではまた。
Fumie