こんにちは。いかがお過ごしでしょうか。
イタリアも日常生活に戻っています。
肌寒い雨模様で始まった大・連休、3週間ほどのあいだに気候がすっかり変わり、突然夏を迎えています。ヴェネツィアでは昨日の最高気温が25℃、ローマ、フィレンツェ、ミラノ、そしてペルージャでも連日30℃を超えているようです。実はローマでも、5月にこの気温はなんと70年ぶりなのだそう。もともとイタリアは、日本に比べると春と秋が短い、と思っていた私も、狭い家の中で衣替えが追いつかず・・・大変なことになっています。
卒業の風景
連休は終わってしまいましたが、これから夏に向けて、イタリアへの旅行など検討されている方もあるかもしれません。6-7月、もしヴェネツィア地方へお出での方で、手書きで似顔絵(たいていはエロチック)とその周りに文字が書き連ねてある白いポスター大の張り紙に気付かれることもあるでしょう。その前で、輪に囲まれて、おそろしく変な扮装、カツラは当たり前、女性ならカラー網タイツに短パン、またはコスプレ風、男性の場合はたいがいグロテスクな格好の人を見かけたら、変態でもカーニバルでもありません。それは間違いなくその日の卒業生です。
ヴェネツィアといわず、もちろんイタリア全国、学校や、大学の学期の始まりは秋。ところが卒業となるとこれが一定ではなく、2-4月、6月ごろ、10-12月・・・と、ほぼ一年中、断続的に卒業シーズンというのを迎えます。
イタリアでは、卒業式、というものが存在しません。ここに来る前は、漠然と「西洋式」というのか、その日は皆ガウンをまとって、博士帽をかぶって・・・それなりの式典が行われるのか、と想像していました。ところがイタリアでは、そういう式典がないというより、そもそも学生たちが一斉に卒業しないのです。いや、ほんとのところ、イタリア全国でそうなのかどうかは自信がありませんが、少なくともヴェネツィアでは。
では、どうやって卒業するのでしょうか。簡単に言うと、まず、所定の単位を全部取り、その時点ではじめて卒論を書きます。もちろん、あと一つ二つ、というところで卒論の内容などについて教授に相談はできますが、事務手続き上はあくまでも全ての単位をとってから。ここでいってみれば「卒業中」(laureando)
という身分になります。そこでようやく、年に何回かある卒論締切日をにらんで、だいたいいつ頃卒業(しよう)というめどがたつのです。そうして卒論を準備している間に、一定の卒業期間、1-2カ月の間の何月何日に誰それが何のテーマで、というカレンダーが発表されます。
指定された当日、順番を待って教室に入ると、教壇に担当教授のほか、学部長や関連教授数人が座っています。卒論の概要を口答で説明すると、さすがに論文そのものは事前に各位に提出されているので、それを見ながら、簡単な質疑応答がなされます。人にもよるのでしょうが、30分前後でしょうか。家族、友人など誰でも立ち会い自由です。
そうして、その場で卒論に対する評価(成績)が下され、握手をして「卒業おめでとう!」となります。卒業証書はさすがに、後で事務局に取りにいくことになっているようです。
大学としての公式な行事はこれだけ。後は家族や友人でパーティーを、というところでしょう。ところが、ヴェネツィアでは上記のようなとんでもない習慣があります。
出てきたところで、友人たちが事前に準備した衣装をつけ、そのポスター、「パピーロ」(papiro、古代のパピルスのこと)を読み上げます。生い立ちからその卒業まで、ユーモアたっぷりにあること無いこと書き連ねたものですが、つっかえるとワインを飲まされたり・・・と、まあ若かりし頃には誰でも皆やっているような・・・。が、驚くのは公共の路上でやっているということです。
そうして、その扮装のまま、「ドットーレ!ドットーレ!(dottore、大学卒業生のこと)」というはやし歌に囲まれ、街の中を練り歩きます。歩いていて、「卒業した!」と日本語で言われたこともあります。もちろん「おめでとう!」と返しましたが。
ヴェネツィアからすぐ近くの町パドヴァで同様の習慣がある他は、イタリアでもほとんどないようです。カーニバルの影響なのでしょうか、それとも最も古い大学の一つであるパドヴァの伝統なのでしょうか。
パピーロは、たいてい大学の塀、住んでいる家の前など公共の壁に貼り残されるので、ヴェネツィアを歩かれる際はちょっと注意してみてください。
長くなりました。ではまた。
Fumie
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