春の不協和音

藤の咲き乱れる家

こんにちは。ご無沙汰してしまいましたが、いかがお過ごしでしょうか。

4月に3週間ほど日本に帰国していましたが、相変わらずバタバタとしておりまして、残念ながらお会いできなかった方、ほんとうに申し訳ありませんでした。また、久しぶりにお会いできた方、いろいろおしゃべりできて楽しかったです。

こちらは、不安定なお天気が続いています。
3週間ほど日本に帰国して、4月末に再びヴェネツィアに戻ってきたときには、ちょうどあちらこちらで藤が満開になっていました。濃厚な藤の香りと、日がぐっと長くなって8時半ごろまで明るいのとで、ああ、ほんとにここを一カ月ほど留守にしていたのだ、という喪失感というのではないけれど、ある意味長期的な時差のようなものに、しばらくついていけずに、くらくらしていました。
ところが、その後冬が戻ったように、寒いのと雨が多いのと。ここ数日、ようやく太陽が出て気温も上がってきたと思ったら、今朝は濃霧。行き交う船の、ひっきりなしの汽笛の中で目を覚ましました。

洗濯ストレス

このお天気で、頭が痛いのが、洗濯。ただでさえ、季節の変わり目で、少しずつ冬物を洗ってしまっていきたいのですが、どうにもタイミングが合いません。
現在、私が住んでいるのは、縦長の長屋というのでしょうか、もとは一軒だった古い、細長い建物に、1部屋または2部屋の小さなアパートが5つ作ってあって、合計8人が暮らしています。
まず、いくら干すのは室内とはいえ、やはりお天気がいい日に洗った方が乾きもいいし、なんといっても気持ちがいいものです。ところが、この長屋には、共通の洗濯機が1つ。気が知れた長屋内ではノーメイクはもちろん、室内履きにパジャマでもOK。自分のアパートに洗濯機がないのは、むしろ騒音と無縁でいいのですが、8人で1つだと、当然使いたいときにふさがっていることもしばしば。しかも、この全自動洗濯機は、何をしているんだか、一番早いコースでも2時間くらいかかります。
誰でもお天気がいい日に洗濯したくなるのは当然、お天気が不安定だと、それだけ集中します。それに加え、ここではアックア・アルタ(高潮)という問題があります。冬の風物のはずのアックア・アルタ、この冬は1-2回くるか来ないかだったのに、この春の長雨で、5月に入って何日かアックア・アルタになりました。そうすると、余計な排水は控えよう、というエコロジカルな観点もともかく、現実問題として、この洗濯機の排水溝から、水が逆流してくるので、洗濯機は使用不可能になります。アックア・アルタは、大雨の時はもちろんですが、その後、翌朝からっと晴れても、上流からの水が一気に流れてきて起こることがあるため、せっかくのお天気でも、洗濯できないこともあるのです。

そこへ最近、新たな問題が発生しました。その源は、フェリックス。ドイツ人で、この3月にヴェネツィア大学、東洋言語学科を卒業した、元・学生です。彼は、ほぼ週に2回洗濯する私よりもさらに洗濯好き、週に3-4回は洗濯機を回しています。それは、いいのですが、問題はそれを干す時。この長屋では、外に干せないので、折りたたみ式の物干し台を使って室内に干します。
最初、私が洗濯したいときに、何度か、私物であるこの物干し台が占領されていることがありました。名前が書いてあるわけでもないし、踊り場、公共のスペースにおいておいたわけだし、と、はじめの頃はそれが解放されるまで何日か待っていたのです。それがあまりにも頻繁で、使いたい時にほとんど使えなくなってきたので、自衛策として、なるべく解放しないよう、つまり、常にちょっとした自分のものを干したりしていました。
そうすると、次に困ったのはイタリア人学生のモニカ。彼女は、月に1回くらいしか洗濯しないものの、やはり私物である物干し台が、使いたいときにふさがっている、という同じ事態に直面したのです。二つあった物干し台のうち、フェリックスが、常に彼女の方を占領するようになったからです。そこで彼女は、自分が洗濯をする何日も前から、物干し台が空いた隙に、自分のアパート内に取りこむ、という手段に出ました。こんなときイタリア人は、はっきり物を言うかというと、言いにくいことは案外言わないのです。
すると、フェリックスは今度は私に、洗濯物を、もう少し詰めて干してくれないか、と言いにきました。物干し台を公共の場所においているので、邪魔にならないようにおいてくれ、というのならわかります。が、広げて干してあるタオルなどを、たたんで、つめて干せ、というのです。前の住民が置いていったのか、一つだけ、誰のでもない小さい物干し台があって、それを使えば、と言うと、それは「好きじゃない」。ちょっと待って、この前私には、そっちに干せとか言ったじゃない?
その時はさすがに頭にきて、物干し台が私物であることをはっきりと告げ、でも、もう洗濯してしまったのなら仕方がないから、ハンガーなどを使ってなんとかしようか、と言ってよくよく聞いてみると、自分は洗濯は明日する、と。なんだ、それなら明日までにたいていは乾くし、そうしたらすぐ片付けるから、その後はお好きにどうぞ、とこちらが百歩譲っておさまったはずでした。
ところが今度は、こともあろうに、同じことを大家さんに訴えに言ったのです。さすがに、大家さんも勝手な言い分に困ったようですが・・・。

ああ、そろそろ、心身ともにすっきりと衣替えをしたいところです。
では、また。
Fumie