| こんにちは。 日本で多くの被害をもたらした台風23号、こちらでもニュースになっていました。これを読んでいただいている皆様にお変わりがないこと、不幸にも犠牲になられた方々のご冥福を祈るばかりです。
10月も既に後半、日に日に、日が短くなっているのを感じるばかりでなく、そのうんと短縮された日照時間でさえ、うっすらと雲がかかり、もう太陽が照りつけることはありません。雨が降ったわけでもないのに、夜になると足元の敷石がしっとりと濡れ、重い湿気を含んだ空気が、体にまとわりつくのを感じます。
わかってはいても、やはり欧州の秋から冬は、重くて暗い。だからこそ、美術展や音楽会などが催されるのでしょうが、そういう、特別の場ではなく、日常のほんのささいなことで、ふっと心が軽くなることもあります。
牛乳屋と卵
ヴェネツィアに住み始めたばかりの頃です。
土曜日の、夜7時過ぎ。友人が来て、確か、その日はてんぷらをしようといって準備を始めたら、衣を作るための卵がない。朝、海老を市場に買いに行って、卵は後でスーパーマーケットに買いに行こうと思って、そのままけろっと忘れていたのでした。徒歩10分以内の、そのスーパーは8時まで開いているけど、この時間に行くと相当混雑しているだろうし、卵だけ買いに行くにはどうも気がすすまない。そうだ!と思い出したのが、近所の小さなlatteria(ラッテリア、牛乳屋)で、名前の通り牛乳と、乳製品が中心だけれども、パスタや袋入りのクロワッサン、缶詰などちょっとした食料品は一通りあるので、確か卵もあったような気がする。
それこそ、サンダル履きでお財布一つ掴んで・・・みたいな格好で駆けつけると、ちょうど7時半になっていて、まさに閉める準備をしているところ。イタリアでは、7時半閉店のお店に、7時過ぎに入ると露骨にイヤな顔をされる、なんてことはしょっちゅうです。7時半閉店、というのは7時半には完全にシャッターを下ろし、彼らが帰る時間だと考えておくほうが無難なのです。
控え目に、「すみません、こんな時間に。卵ありますか?昼間買い忘れちゃって。」と声をかけると、「あるよ、1ダース?半ダース?」「あ、半ダースで十分、ああよかった。」で、支払おうとお財布を見ると、中には、なんと小銭が一切なく、50ユーロ札一枚。50ユーロは、約7000円、1ユーロちょっとの買い物に出すのは、嫌がられることが多いのは当たり前です。しまった、スーパーで崩そうと思っていて、忘れていたのでした。
「すみません!!!これしかなくて・・・」とおそるおそる差し出すと、「あ、困ったな、おつりがないから、いいよ、また今度で。」「え?」「次にその分も払って。」「!!!!!すみません、ありがとうございます。月曜日にちゃんと持ってきます。」「いいよ、いいよ、次の買い物の時で、火曜でも水曜でも、その先でも。」
馴染みのお店なら、もちろんそういうことはごく当たり前にあるかもしれません。でも、その時は実は、引っ越してきてまもなく、そこで買い物をしたことは、実はそれまで1回もなかったのです。たった、100円か200円のこと、それでも、見たこともない外国人で、しかも閉店間際、でもまあ生卵を買うくらいだから観光客でなく近所の住民だろう、と思ったのでしょうか。
ちょうど数年前の今ごろの季節のこと。あのときも、もう7時半には辺りが暗くなっていて、道の敷石と、建物の壁がしっとりと湿気を含んでいたっけ・・・3分ほどとはいえ、お店に向かうまでの言いようもなくどんよりとした寒さと憂鬱、それが、卵をひとパック手にして出てきた時にはぽっと灯がともったような気分になったこと、この時期になると思い出します。
ではまた。
お知らせ;
先週紹介した建築ビエンナーレ、まだ全部見ていないので一部ですが、以下に紹介しました。
./biennale04.htm
数日中に、ターナー展、ティエポロ展もアップする予定です。
Fumie
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