こんにちは。前回のメイルに、いろいろと励ましやあたたかいお返事をいただきまして、ありがとうございました。おかげさまで元気にやっております。
さて、今年は、私がひそかに予測した通り、どうやらアックア・アルタ(冠水)の当たり年のようです。なにしろ、潮位の高い時に目指したように大雨が降るのです。予想が当たったと喜んでいられる事態ではありません。ただ、普通の洪水と違うのは、ある程度予測できるので、対策が立てられることです。アックア・アルタ、今、むかし
以前、電車でどこかからの帰り、生粋のヴェネツィア人と隣り合わせたことがありました。途中、アックア・アルタの話が出たのは、ちょうど寒さが厳しくなってきた、確か今ごろのことで、私の頭の中に水のことがあったのでしょう。
「いやー、ほんと大変だよ」、そんな反応が返ってくるかと信じきっていたのですが、ところがどっこい「何言ってんだ、アックア・アルタは、俺なんかが小さい頃は、むしろ楽しみだったんだよ」。「え?」「今はさあ、みんなゴム長だろ、つまんないよ。昔はそんなものなかったから、アックア・アルタになると、子どもはみんな裸足だよ。」「ふむふむ。」「でさあ、外に出ると、あちこちの家のおばさんに、窓から『ちょっとちょっと、あんた』って買い物頼まれてさ、だっておばさん達は外に出られないだろ?」「ええ・・・」「それでちょっとずつお駄賃もらって、いやあ、いい小遣い稼ぎだったんだよ」。
なるほど、ヴェネツィアのアックア・アルタというのは、雪国で雪が降って、それでもそこに生活がある、それと同じことなのかもしれません。車のない不便さ、古くて狭い家、そして1年中観光客に占拠されるストレスに加えこの事情、ヴェネツィアから出ていく人もたくさんいます。それでも、住んでいる人もいるのです。そして、住むからには、この水とうまくつきあっていかなくては。もちろん今は、衛生上からも、安全上からも、裸足は論外です。たまに観光客の方が、裸足になっているのを見かけますが、絶対におやめください。
アックア・アルタの要因となるのは、まず潮の満ち引き、特に、大潮の頃が問題となります。大潮は、月の満ち欠けと関係があるのだそうで、満月を見ると、あ、そういえば水が高いな、とか、逆に最近水が高いな、と思うと満月に近かったりするわけです。
そして、その前後の雨量。ヴェネツィアはもちろん、上流に当たる地域での雷、集中豪雨などのニュースを聞くと要注意です。
ばかにならないのが、シロッコ。このアフリカからの南風は低気圧の原因となって雨を降らせるばかりでなく、地中海に突き出たイタリア半島の、むかって右脇というのでしょうか、アドリア海側の袋小路にあるのがヴェネツィアで、この風は、なんとここへ海水を押し上げるのだそうです。
ニュースの写真や映像で見せるのはいつも、聖マルコ広場。それはヴェネツィアの中で観光の中心地であるばかりか、最も低いところなので、一種の指標にあたるためです。かつ、観光客が物珍しげに「すのこ」の上を渡ったり、水の中に足を突っ込んでみたりしていて「絵になる」から。でも実際には、ヴェネツィア中が水に沈んでいるわけではありません。島の中でも、微妙に高低があるため、ほんとうに他人事のように、きれいさっぱり乾いているところもあれば、私の家の前のように、深さは聖マルコ広場ほどでなくとも、大きな運河に面しているため、ざざざーーーっと波打っていたりするところもあるです。そして、「すのこ」も、したがって、ヴェネツィア中に敷かれるのではなく、あくまでもより水のつきやすいところ、かつ、人通りの多いところ、に限定されています。
では、どうするのか。その時はあきらめてむやみに動き回らないようにすること、どうしても外出するときは長靴にすること、くらいです。なにしろ、数時間も待てば嘘のように引いていくのです。ヴェネツィア人は、皆、お魚屋さんばりの、足の付け根までの長靴を持っているかというと、そんなこともありません。ここでの生活に長靴は必需ですが、たいていはせいぜいが膝下。雨が降っていたり、まさに冠水している瞬間以外は、案外それも履いていません。
もちろん、1階に住宅があったり、お店、レストランなどを経営していたりすると、それはもう戦々恐々、予測の数字にも敏感になります。ある程度水のつきやすいところは、ドアの枠に、やはり膝下くらいの高さのレールがあって、ほんとうに冠水しそうなときには、そこにステンレスの板をはめます。単純なことなのですが、それでずいぶん防げるようです。それが無いと、どんなに建て付けがよくても、ドアを開けると水が直接入ってきてしまうわけですから。もちろん、これもつけっぱなしというわけではなく、いよいよと言う時にはめ込み、水が引けばまた取り外します。
では、どうやって予測するのか。主な水上バス乗り場などに次の満潮は何時何分、何cmと電光掲示板がある他、電話サービス、今はもちろんインターネットで確認できます。イタリア語ですが、ご興味のある方はどうぞ。
http://www.comune.venezia.it/maree/previsione.asp
では、また。
Fumie
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