ヴェネツィアの11月

歩道、増岸現場、海が一体化

こんにちは。大変ごぶさたしておりますが、いかがお過ごしでしょうか。

イタリアでは,シロッコというアフリカからの南風が吹き、全国で気温が大幅に上昇。そして各地で暴風雨が吹き荒れました。エトナ山の噴火、南部での地震に続き、今回は北部から中部で山崩れや、街路樹が倒れるなどの被害が続出。
ヴェネツィアはといえば、大雨が降ったわけではないのですが、とうとう、本格的にこの季節がやってきました。

これぞ、ヴェネツィア

土曜日の朝。早めに起きて出かけるつもりで、7時にかけた目覚ましの前に、ウ〜ッというサイレンのような音を聞いたような気がしました。目覚ましが鳴っても、簡単には置きあがれず、ベッドの中でうだうだしながら、何かが、いつもと違う・・・ような。いつもより、静かなような・・・ああ、ここのとこ、目の前でやっている増岸工事、たいてい7時には作業が始まって機械の音が聞こえるのに、今日はやらないのかも・・・あ、ということは雨?・・・いや、違う・・・もっと違う水の音・・・波の音がずいぶんはっきり聞こえるのに加え、ちゃぷ、ちゃぷ・・・って・・・もしかして、水の中を歩いている音!?!?!?
飛び起きて、窓の外の、よろい戸を開けて見ると、確かにいつもよりずっとずっと、水位が高い。そして、ふっと下を見ると・・・ああ!!!聞こえていたのは、ほんとに長靴で水の中を歩いている音で、見るとくるぶし上くらいまではすっかり水に沈んでいる!!!
建物ごと、いや、通りごと、完全に水に浸かっていたのでした。・・・なるほど。これが、アックア・アルタ(高潮)というものか・・・とりあえず、土曜日で授業などがなくてよかった、と思いつつ、でも、確か昨日、満潮は9時ごろと言っていたのに、ということは、まだまだこれから2時間近く増水し続けるということ???
アックア・アルタというのは、もちろん潮の満ち引きによるので、ある程度事前に予想できます。というよりもむしろ、ふつうの天気予報、晴れるとか雨がふる、とかよりもずっとずっと確実に当たるというか。前日の朝も、場所によっては若干水がついていたし、天気予報で「明日もヴェネツィアではアックア・アルタになるでしょう」と聞いて、まあ、前日みたいなものかな、と甘くみていたら、どうやら今日は大潮だったのかも・・・。
どこまでどうなのか見極めるまでは、むやみに出かけるわけにいかず、時折窓の下を通る人を観察。最初は「くるぶし上」レベルだったのが、確かにだんだん上がっていって、気がつくとほとんど膝のあたりまで来ている・・・昨日は長靴で出かけていた隣の住民が、「高すぎて、長靴ではだめだよ」とか言いつつ、なんと短パンにぞうり、という格好で出かけていく・・・。
1階の部屋を借りなくてほんとうによかった、と思いつつも、家で観察している分には、水に浸かっている間、単純に、人通りも船の交通も少ないということもありますが、何か不思議な静寂に包まれていて、ああ、ヴェネツィアって、つまりこの状況に慣れているわけだし、意外と冷静なのかも、などと勘違いしそうな感じですらありました。
10時半頃になってようやく、どうやらピークは過ぎたかも、とほっとしていたら、大家さんから電話。彼らは、私の住む建物の隣に一軒家があるのですが、ふだんはここに住んでいません。私の部屋の窓から、彼らのお庭と玄関を見下ろす格好になっているので、様子を確認したかったのでしょう。
「どうかな?家の庭にも水がついているかどうか、見える?」「いえ、あの、完全にプールになってますが。」「ああ・・・。玄関はどうかな?石段の上まで届いてる?」「今は下がりつつありますが、さっきまで完全にドアのところまで水が届いていました。」「ああ・・・。いや、これはね、一年で最もひどいうちの1回なんだよ。11月はね、こうなんだ。」冷静を装っているようでしたが、あまり冷静ではいられないでしょう。なぜなら、よく見ると、彼らは「水止めの板」をはめ忘れて行ったのです。水害が、決してめずらしくないヴェネツィアではよく、家にせよ、お店にせよ、建物のドアの枠のところ、下から40-50cmの高さのレールのようなものがついています。アックア・アルタの予報があったり、大雨が降ったりすると、ここに金属製の板をはめ、浸水を防ぐのです。ツクリから言って、完全に防げるものとは思えませんが、それでも、それなりに有効でしょう。加えて、ドアの内側には、下に筒型の細長いクッションみたいなものをとりつけ、下の隙間からしみ込む水を防ぎます。彼らは10日ほど前に来たとき、油断したのか、出る前にその板をはめていくのを忘れたのでしょう。何でもないときにこの板がはまっていると、長期留守というのが一目瞭然ということもあるのかもしれません。

プールと化したお庭

ついでに、「だいじょうぶ?とりあえず今日食べるものは家にある?」と聞かれ、「ああ、それは全然問題ありません、ご心配なく」と答えつつ、ひょっとしてまる一日以上水の上で孤立してしまうこともあるの?なんて不安になりました。
結局、午後2時くらいには、窓の下の道は普通の靴の人が通るようになったので、外に出て見ましたが、お店、バール、レストラン・・・と軒並み、中から水をかきだしたり、水に浸かった商品を仕分けていたり・・・。一斉に働いているのを見て、私が引っ越してきたときに、大家さんの奥さんが「ヴェネツィアに住むのって、ほんとうに大変なのよ」と言ったことをふっと思い出しました。
あとから見たニュースによると、この日は水位が150cm近く上昇、記録的なアックア・アルタになったのだそうです。宿命とはいえ、これ以上このレベルのアックア・アルタが続かないことを祈ります。

すみません、大変長くなってしまいました。
それではまた。