増田洋美 Play the glass

ヴェネツィア、スコレッタ・ディ・サン・ジョヴァンニ・バッティスタ

Scoletta di San Giovanni Battista, Venezia

2005年11月6日まで

スコレッタ。「小さなスクオラ(組合)」の名の通り、小さな小さな、3階建ての建物。サンマルコ広場の喧騒と、ビエンナーレ・アルセナーレ会場のちょうど間くらい、そのどちらの気配もあまり感じさせない、ヴェネツィアの普段着のような広場にひっそりと面したこの建物が、会場。

小さな入り口を入って、狭い階段を上がる。ヴェネツィアの建物らしく中は木造で、階段がぎしぎし音を立てる。中階では、子供たちの前でガラスを取り扱っている作家の映像が流れている。暗い途中階を抜けて、最上階まで上がると、目の前に開いた2つの窓からの光で、急に視界が明るい。見ると、天井からぶら下がる巨大な昆布の塊に向かって立ち上る、水銀の泡、泡、泡・・・。実際はガラスでできたそれは、延びたり縮んだり、一瞬の泡の動きを永遠に閉じ込めたかのように、ぽってりと丸い。水銀色が窓からの光をまばゆく反射する。
下の階にあった、黒ゴム色の泡も、実はガラスの作品であった。
例えばそれは、海の断面図を見るよう。光の届かない、暗い海の底の黒い泡。海面近く立ち上って、光を浴びて虹色に耀く泡。
会場である古い建物の特徴を最大限生かし、作品と融合・一体化させた、見事な展覧会だと思う。

2年前に、やはりこの時期に開かれた展覧会は、元・修道院の中庭。柱廊に囲まれた正方形の敷地に、色とりどりの泡を散らせたそれは、言ってみれば四角く区切られた、平面のオープン・スペースを利用したものだった。地面に、井戸の上に、柱の下に、くしゃくしゃと消えてなくなりそうな泡が、いかにも薄くはかなげな泡が、ばらばらに、心細げにたたずんでいた。それに比べ、今回の泡は、またなんと力強いことか。


Play the glass-ガラスを遊ぼう、というのが個展の一貫したタイトルらしい。ヴェネツィアの、この2回の展覧会を通して、確かにガラスという素材の面白さ、魅力が伝わってくる。

この作家は、作品に合わせて会場を選んでいるのだろうか。それとも、会場からインスピレーションを得て、作品が生まれるのだろうか。ぜひとも聞いてみたいところだ。

Fumie

16 agosto 2005