『緋の瞳の女神』
ゴーストハンターRPGシナリオ


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
●山狩り
.7. 山狩り
 翌日牧村磐之介は山狩りを始めます。昨夜牧村邸に侵入した女性が家畜を数匹殺害し家のものに危害を加えたというのです。勿論これは嘘です。磐之介は昨夜の人物が宮乃香奈子で自分達に復讐しようとしているのではないかと思い、先に捕らえてしまおうと考えています。また、香奈子がまだ神域に残っている可能性もあり、そこに下男の猪岡と水島を送り確認させようとしています。
 早朝(7:00)磐之介は村の広場に村人達を集め、山狩りを提案します。村の有力者である磐之介の意向に反対するものなど無く、山狩りは了承され村人達は怪人物が逃走したという村の東側の山林を捜索することになります。この時高齢の村人達から不満の声が上がります。老人達はその森が緋目様の神域であり、立ち入ることはできないと主張します。しかし、磐之介にただの迷信と一蹴され、さらに神域とされている周辺には牧村家の手伝いらが向かうことで村人達は承諾します。山狩りの開始は8:00頃となります。

 集団の中には伸彦の姿もあります。昨夜の事件で伸彦と親しくなっている場合、彼はPCの姿を見つけると駆け寄り、自分の思惑通り父が行動に出たと話します。そして自分は猪岡と水島の後を追うつもりだと告げます。PC達が同行するようでしたら伸彦は快く了承します。
 伸彦は山狩りの大方の分担図を見ていますので、猪岡と水島が大川上流の北東の高台に向かっていることを知っています。彼はすぐ後を追跡するのは気付かれる危険性が高く、またその付近は幼い頃に香奈子と二人で歩き回ったことがあり近道を知っているので、村の衆が山狩りを始めた後に出発しようと提案します。

 PC達はこの山狩りに協力を申し出るかもしれません。しかし、磐之介は部外者には関係のないことだからと断ります。PC達が香奈子の協力者ではないかと疑っているからです。ここでPC達が引き下がらないようであれば、伸彦が捜索範囲が広大で村人だけでは手に負えないと口添えし、伸彦の指示に従うという条件で協力することを父親に渋々認めさせます。この場合PC達は神域からは少々離れた森の中を担当としてあてがわれます。

 この場には珠恵の姿はありません。珠恵は山狩りのような重労働を嫌って(そもそも彼女はいっさいの仕事をしていません)家で滝田の帰りを待ち望んでいると村人達から聞くことができるでしょう。
 室田もこの場には姿を現していません。彼は自分の研究所で研究に没頭しています。

 このシーンで伸彦にさらに詳細な情報提供を行うことができます。例えば香奈子が失踪していることを尋ねれば、失踪当日に磐之介が宮乃家に下男の猪岡を使いに出していたことを思い出します。
 また、香奈子失踪日から牧村家でも秘書の滝田・矢島、下男の満沼がいなくなっていることを漏らします。この日磐之介と使用人の高山、そして失踪した3人は夕暮れ頃からどこかに出かけていましたが、夜になって帰宅したのは磐之介と高山だけでした。
 滝田・矢島は綿工場時代の社員で、会社倒産と共に磐之介を頼って朱河村へとやって来ました。飢饉で東北の各地が困窮しているこの時期に、昔から土地の豊かなこの朱河村だけは豊作を享受しています(この時<地質学>ロールに成功すると、この村が土地柄的にとても豊かとは云えない地層であるとに気がつきます)。磐之介等はこれを利用して村の農産物を一手に買い集め、それを周辺農村に高値で売りさばこうと計画しています。

 神域について、伸彦は断片的ながらも祖母のスエに聞いたことがあります。それは大川の上流沿いにヒメ様の社があるというものです。<フィールドワーク>に成功すると、社があるという方角を推測することができます。

.8. 惨劇の予感
 様子を伺ってから出発するにせよ、山狩りの途中から目指すにせよ、伸彦は率先して神域の方へと向かっていきます。北東の高台は鬱蒼と木々が生え繁り、さらに起伏の激しさによって帰り道を確認することも困難です。分かりにくい獣道を、伸彦は慎重な足取りで進んで行きます。同行しているPCたちは<フィールドワーク>を行い、失敗すると方向感覚を完全に失います。この状況では伸彦の案内無しでは村に帰ることも一苦労であると伝えてください。

 PC達が森の中を進んでいると奇妙な音が聞こえてきます。<聞き耳>ロールに成功すればそれが男性の叫び声の様なものであると分かります。声は次第に大きくなり、そのうち何者かが走り寄る気配がします。そして近くの茂みをかき分けて男が飛び出してきます。

『茂みの中から飛び出してきたのは、両手で顔を覆い隠しながら尋常ではない速度で疾走する庭師風の男だった。「ひゅー」だか「ひぃー」だかと息の続く限り奇声を発するこの男は、山道で目を隠して走ることよりも大事なことがあるかのように、しっかりと両手で頭を掴んで離さない。途中何度も横転したのだろうか。身体中が泥と埃にまみれている。いや、それだけではない。頭から左肩にかけて、薄赤い半透明の液体が滴っている。血液ではない。血よりも薄い色をした液体が男の身体にまとわりついていた…。』

 伸介はこの男が牧村家で庭師をしている猪岡であると分かります。<心理学>ロールをすれば、この男が何か魂を揺さぶられる情景に出会い、深い狂気に陥っていることに気がつくでしょう。<心理療法>に成功することで猪岡を一時的に落ち着かせることができます。しかし、そのためには猪岡の疾走を止めなければなりません。彼は自分の行動を抑止しようとするキャラクターには問答無用で攻撃を加えます。

猪岡 庭師 疾走する狂人 モンスターレベル:3
体力度:4 敏捷度:5 分析力:3 知覚力:4 意志力:3 魅力:2 運2
HP:25 MP:0 抵抗力:30% 
攻撃:蹴り(30% 1D6+3)

 猪岡を負傷させずに捕らえるには<気絶攻撃>か<押さえ込み>(ルールブックP45)、又は霊能力を使う必要があります。当然ですが伸彦は猪岡が傷つくことにあまりよい顔はしません。
 猪岡を捕らえるチャンスは3ターンの間だけです。この間に試みが成功しない場合は彼はそのまま走り去ってしまいます。
 猪岡はかなり強引に山道を走り抜けてきたので、彼がどこから来たかを調べるには<追跡>と<フィールドワーク>の両方に成功する必要があります。

 猪岡を捕らえ彼を落ち着かせることができれば、彼は激しく震えながら神域の方向を指さします。猪岡はそれ以上しゃべることも歩くこともできません。胎児のように膝を抱えてうずくまってしまいます。

 猪岡の様子を見て、PC達は危険を感じて伸彦がこの場に残るよう指示するかもしれません。この時事前の<フィールドワーク>判定に失敗し方向感覚を失っていると、この場で伸彦と別れること帰り道を捜すにも困難すると伝えてください。また、伸彦は香奈子の安否を非常に気にしていますので、余程のことがない限りPC達に同行すると主張します。
 ただ、PC達がどうしても同行を拒否したり、納得のいく理由(猪岡を放っておくことはできない等)を示した場合は渋々この場に残ります。

.9. 緋目様の神域
 伸彦の案内、<追跡>ロールなどによりPCは川沿いの社を目指すことでしょう。日の光さえも通さないような深い森を抜けると、川岸のほとりの開けた場所に古い社が現れます。特徴的なのは社から川までには石作りの排水溝のようなものが存在することです。<歴史学>に成功すると、このような建築様式の神社仏閣はこれまでに見たこともないような代物だと分かります。

 香奈子の生死を確認するよう磐之介に命じられた猪岡と水島は、不注意にも封印の岩戸を開いてしまい緋目様を解放してしまいました。水島は瞬時に薄赤い液体へと変換され、その光景と全身に水島であった液体を浴びたことにより、猪岡は狂気に陥り逃走したのです。

 社の入り口には観音像とも思える石像と、石碑が建てられています。観音像は瞳の部分がくり抜かれています。石碑の文字は風化していてほとんど読めませんが、最初の文字は判読できます。それは「緋目様」と記されています。
 社の戸は開きっぱなしとなっています。その奧には石作りの重々しい扉が、こちらも口を空いています。ここには猪岡の身体に付着していたあの半透明な赤い液体が、水たまりを作って残っています。
 石作りの扉の奧は地下へと通じる階段になっています。ここを通過するとき<知覚力>ロールに成功すると、石戸の内側に爪か何かで引っ掻いたような無数の傷跡が残っていることに気付きます。
 石戸の中までは日の光は届きませんので、奧は真っ暗闇です。これ以上進むには何らかの照明が必要となるでしょう。<分析力>ロールに成功したものは、社がわざわざ奧まで光が射し込まないように設計されていることに気がつきます。
 また、近くに開いたままの手帳が落ちています。手帳の開いた面は今は乾いていますが、薄赤い液体で白い紙面が染まっています。そこには恐怖に震えた文字で次のように記されています。

●ハンドアウト2 滝田の手帳
『あの瞳を覗いてはならない。
赤く輝く瞳に見つめられたものは…、みんな消えていった。』


 この手帳の持ち主は牧村磐之介の秘書滝田のものです。内容のほとんどは事業のことや金策、商談先との連絡などです。2週間前の内容は迷信に惑わされて殺人を犯した磐之介を馬鹿にし、これを脅迫の材料にするなどという旨の内容が記されています。最後から次のものは磐之介の妄想に最後まで付き合ってやり、信用を勝ち取っておくなどと書かれています。

.10. 石室
 石戸の階段を降りきると再び石作りの扉があります。こちらも戸は開いいます。
 石室内に入ろうとしたとき、中から白い影のようなものが飛び出し、PC達の前に現れます。これはここで死亡した満沼の霊です。彼は死後の衝撃で錯乱しており、手近にあるもの全てを攻撃します。

『石室の中をうかがおうと明かりを照らしてみると、そこにうずくまるような男性の姿が浮かび上がった。いや、何かがおかしい。白い影のような男性の姿が透けて見えるのだ。男は君たちに気がつくと突然顔を上げ、その怒りとも恐怖ともとれるような激しい表情で飛びかかってきた!』
恐怖判定を行ってください!

満沼 「緋の瞳の女神」の犠牲者 幽霊 モンスターレベル:3
体力度:5 敏捷度:7 分析力:0 知覚力:5 意志力:5 魅力:− 運:5
HP:− MP:18 抵抗力:40%
攻撃:接触(40% 1D6+3 MPにダメージ)
特殊能力:霊体 太陽の光

 満沼の霊は何を問われても「緋の瞳」としか答えません。
 彼の霊を撃退すると石室の内部を調べることができます。完全に明かりを遮断された室内には十数体のミイラ化した女性の死体があります。死体は古いものでは数百年は経過しているようで、一部は散逸し正確な数を調べることはできません。女性はどれも白い着物に赤い袴という巫女の衣装を身に纏い、またどの死体にも両目がありません。まるで溶け出たかのように空洞となっています。また、死体は全て厚手の布で全身を縛られています。
 石室の四方には排水溝と思われる溝と穴が空いています。<聞き耳>ロールに成功すると微かに川の流れる音が聞こえ、この穴が大川へと通じていることが分かるでしょう。
 <手がかり>ロールに成功すると最近のものと思われる懐中電灯が落ちているのを見つけます。また、この石室の床は中心部から四方に向けて微妙に傾斜していることに気がつきます。<分析力>ロールに成功すると、これは水はけを良くするための工夫だと分かります。
 <霊体感知>や<魔力感知>に成功するとこの部屋に驚異的なまでの存在感の残滓を感じることができます。
 <神秘学>に成功すると満沼の死体がこの部屋にないことに疑問を持ちます。通例幽霊は自分の死亡した場所に束縛されるものです。満沼がこの場で死亡したのならば、なぜ彼の死体はここには無いのでしょうか?

.11. 惨劇の幕開け
 PC達が社を出ようとすると村へと通じる獣道の方から男性の悲鳴が聞こえます。声のする方に近づくと、社の物影から男性が腰を抜かしたまま震えて物影の奧を凝視しています。

『「来るな! 来るなー!」
 全身から絞り出すかのように絶叫を上げた男は、社の向こう側を恐怖と絶望の表情で見つめていた。
「こないでくれ!」
「ばちゅん」
 それは一瞬の出来事であった。男はまるで水風船が内部からはじけて内容物を飛び散らすかのように、破裂音だけを残して消えていった。彼の痕跡を証明するのものは、飛び散った大量の薄赤い液体へと地面を汚した赤い染みだけだった!』
恐怖判定を行ってください!

 消滅した男は猪岡の悲鳴を聞いて様子を見に来た村人です。
 このシーンで硬直状態へと陥ったキャラクターの脳裏には、昨日の夕べに聞いたシャボン玉の歌が、終わり無く流れることでしょう。
 この場に伸彦が同行している場合、この光景を目の当たりにした彼は声にならない悲鳴を上げて手近な森の中(獣道とは別方向)へと奔走します。

『「ずり。ずりずり…。」
 社の向こう側から何か引きずるような、それでもしっかりとした足取りと思しき物音が聞こえてきた。一歩一歩近づくその足音は遂に社の影から姿を現した。それは宮乃香奈子だ。だが、どうだろう。白い着物に赤い袴という巫女装束で、厚手の布を全身にまかれ身体を拘束されている彼女は、間違いなく宮乃香奈子だ。しかし、その瞳。うっすらと開いた彼女の瞳からは妖しい赤い光が放たれていた!』

『緋の瞳の女神』第一形態 モンスターレベル:10
体力:15 敏捷:10 分析:2 知覚:10 意志:10 魅力:− 運:10
攻撃:100%(緋の瞳の洗礼)1D3+10(1D3体 MPダメージ 恐怖判定)
防御点:5(肉体的損傷が関係ないから)
HP:100 MP:100 抵抗力:100%
特殊能力:暗闇
 <緋の瞳の洗礼>はたいまつや懐中電灯程度の明かりが無ければ使用することができません。これは太陽神としての「女神」の弱点です。
 <緋の瞳の洗礼>を受けたキャラクターははじめに抵抗力ロールを行います。これに失敗すると引きつけられるかのように「女神」の赤い瞳をまじまじと見つめてしまいます。さらに抵抗力ロールを行い、これに成功すれば経験レベル分MPダメージを減少できます。
 「女神」からMPにダメージを受けたキャラクターは、魂が吸い取られるような感覚に陥ります。これがはじめてのダメージならば恐怖判定が必要です。
 <緋の瞳の洗礼>によりMPが0以下となった犠牲者は、精神力を全て吸い取られ肉体は薄赤い生命の原形質へと変換されてしまいます。この状態になった犠牲者を救う手段はありません。

 <神秘学>ロールに成功すれば、香奈子に取り付いているものが<イモータル>、即ち<神>と呼ばれる存在ではないか推測できます。

 緋の瞳の女神と化した香奈子は躊躇いもなくPC達を攻撃します。まずはじめに「緋の瞳の洗礼」がPC達に降りかかります。しかし、ここで本格的な戦闘を行うと、PC達は全滅することでしょう。GMは香奈子が全身を拘束されていてその移動速度が低いことを強調してPC達を逃走させてください。伸彦のように手近な森へと逃走するのなら、すぐに女神の視線から逃れることができます。村へと通じる獣道へと向かうため、女神の傍らを通り過ぎようと云うのであれば視線による攻撃(緋の瞳の洗礼)を3回受けなければならないとPCに通告してください。

 PC達がどちらへ逃走しようと、森の中に逃げ込んでしまえば「女神」は追撃しません。
 村へ通じる獣道へと進み、『神域の森』へ入る際の<フィールドワーク>ロールに成功していれば、獣道の途中で猪岡を発見した後「シーン13」へと進んでください。
 手近な森の中へ逃げ込んだり、<フィールドワーク>に失敗していればPC達は神域の森で道に迷ってしまいます。この時は「シーン12」のイベントに立ち会います。

.12. 木霊する悲鳴
 PC達が「女神」から逃れた後に神域の森で道に迷っていると、伸彦と思える悲鳴が周囲に響きます。悲鳴のした方へと駆け付けると、そこには伸彦が穿いていた革靴が片方と地面を濡らす薄赤い液体を見つけることができます。<フィールドワーク>ロールに成功すれば、ここが社に向かうとき通った獣道であることに気がつきます。
 PC達がこの場で時間をかけるようでしたら、<聞き耳>ロールをさせてください。成功すると「ずり。ずりずり…。」という何か引きずるような物音が聞こえます。当然これは緋目様の足音です。

 実はこの場で消滅したのは猪岡です。緋目様が村を目指す過程で、うずくまっていた猪岡と遭遇してしまったのです。そしてもう一人、この光景を偶然(PC達が猪岡の元においてきたのなら必然的に)目撃した人物がいます。それが悲鳴の主伸彦です。彼は緋目様=香奈子の行為を目の当たりにして、精神を大きく揺さぶられ(MPが0に落ち狂気に陥り)ある種の狂人的な確信をします。香奈子が彼女をこんな目に遭わせた父磐之介達と村の民全員に復讐しようとしている、と。これは体が弱いことから村から冷遇されていた伸彦自身の生い立ちと安易に接合し、彼自身の復讐劇に結びつくのです。
 伸彦はこの後復讐者として行動を開始します。

.13. 真昼の惨劇
 神域の森から村の広場へ辿り着くと、そこには長閑な雰囲気の村人達が昼食の炊き出しをしています。PC達が道に迷わずたどり着けたのならば時間は11:00頃、道に迷っていたのであれば12:00頃となります。
 山狩りは昼頃になり一時休憩となっています。村の広場には山狩りに参加していた村民達がお茶やおにぎりを食べながら和気藹々と談笑しています。PC達が先ほど遭遇した惨劇がまるで嘘のような長閑さです。村人達は山狩りに参加したPC達にもお茶やおにぎりをご馳走します。
 PC達が道に迷わずたどり着けたようでしたら、GMはここで時間を費やすように仕向けてください。PC達は磐之介を捜すでしょうか? 彼はまだ山狩りから帰っていません。村人達の口から磐之介を待つならここにいれば真っ先に会えると言わせてください。
 PC達は牧村家に向かうでしょうか? 伸彦のいない状況で牧村家に入り込むことは困難です。留守を任されている使用人の高山はPC達を取り次ごうとはしません。

 この機会に村人達から情報収集を試みることは有効です。質問した後<交渉>ロール(容貌修正は有効。信用による修正は無効)に成功することで、次のうちから一つの情報を聞くことができます。
・かつて「ヒメ様」という神さまを祀っていたこと。「ヒメ様」に関しては村でも高齢の者しか詳しくは知らない。一番詳しいのは村で最高齢である牧村家のスエ大婆様だ。
・宮乃家は昔ヒメ様の宮司をしていた家系。今の厳男の代に入ってから廃社した。宮乃家に生まれた娘は神域に赴く大事な役目があるとされ、昔はたいそう敬われたらしい。今の香奈子さんが幼いときも、その時の慣習が抜けきらず余所余所しく振る舞ってしまった。
・厳男夫婦の姿が見えなくなったのは2週間前。夫婦で畑を耕していたのだが、その日以来ぷっつりと見えなくなってしまった。

 PC達が緋目様の危険性を示唆しても誰も相手にはしないでしょう。せかすようなら(そして充分にPC達をじらしたならば)村人達はようやく真剣に話を聞こうとします。しかしその時、村人の一人が雑木林の方を驚愕の表情で指さします。茂みをかき分ける音と何か引きずるような足音がPCの耳にも届きます。次の瞬間、指さしていた村人は破裂音と共に消滅し、村は大パニックになります。

『「ずり。ずりずり…。」
 森の中から何か引きずるような、それでもしっかりとした足取りと思しき物音が聞こえてきた。茂みをかき分けて現れたものは、巫女装束の宮乃香奈子…。強引に森の中を抜けてきたのだろうか。衣服は所々が裂け、彼女の白い肌を露出している。だが、そこに驚くべきものが垣間見えていた。瞼…、だろうか。身体の至る所に瞼が生え始めたのだ。そしてその幾つかは瞳を開き、あの赤い光を発していた!』
恐怖判定を行ってください!

『緋の瞳の女神』第二形態 モンスターレベル:10
体力:15 敏捷:10 分析:2 知覚:10 意志:10 魅力:− 運:10
攻撃:100%(緋の瞳の洗礼)1D3+10(1D6体 MPダメージ 恐怖判定)
   70%(戒めの縄蛇)2回攻撃 1D10+10(恐怖判定)
防御点:5(肉体的損傷が関係ないから)
HP:100 MP:100 抵抗力:100%
特殊能力:暗闇
 <緋の瞳の洗礼>はたいまつや懐中電灯程度の明かりが無ければ使用することができません。これは太陽神としての「女神」の弱点です。
 第二形態の<緋の瞳の洗礼>を受けたキャラクターは視線を逸らすための抵抗力ロールを行うことすらできません! その強力な魔力に抵抗することすらできないのです。ダメージ減少の抵抗力ロールは通常通り行うことができます。
 「女神」からMPにダメージを受けたキャラクターは、魂が吸い取られるような感覚に陥ります。これがはじめてのダメージならば恐怖判定が必要です。
 <緋の瞳の洗礼>によりMPが0以下となった犠牲者は、精神力を全て吸い取られ肉体は薄赤い生命の原形質へと変換されてしまいます。この状態になった犠牲者を救う手段はありません。
 <戒めの蛇縄>は香奈子の身体を束縛する白布が突如、鎌をもたげた蛇のように「噛みついて」きます。この蛇縄は信じられないような怪力(体力15)です。これを目撃した者は恐怖判定を行ってください!

 「緋の瞳の女神」の襲撃により村は阿鼻叫喚の地獄絵図となります。この場で冷静に対応できるのはPC達しかあり得ません! 「女神」は優先的に村人達を攻撃します。父を、母を、兄弟を、姉妹を、息子を、娘を失った村人達は染みと化した液体の前で力無く膝をつきます。ある者は猪岡がそうであったように両目を塞いで逃走します。ある者は絶叫しながら「女神」へと突進します。PC達が何もしなければこの人達は皆消滅します。

 ここにいる村人30人中、恐怖判定に成功した者(そして精神へのダメージが低く、硬直判定から回復できた者)は10人です。この中には伸彦の兄、伸介も入っています。伸介は比較的冷静にも、正気を保っている村人達へ牧村の屋敷に避難するよう誘導します。PC達が「女神」の気を逸らすようなことをしなければ、残り20人の村人達が全員避難するまで10ラウンドかかります。「女神」は各戦闘ラウンドの頭に<緋の瞳の洗礼>により1D6人の村人達を消滅させます(村人達の平均MPは7点です。最低11点のダメージを受ける<洗礼>により一撃で消滅します)。

 村人達の救出する方法は2通りあります。一つは力ずくで引っ張って行く方法です。一人を引っ張るのであれば<体力>+30%ロール、二人を引っ張るのであれば<体力>ロールに成功することで目的の場所まで連れて行くことができます。身を隠せそうなところは広場に面した農家(往復で2R)か牧村家の屋敷(往復4R)があります。この方法を選択するなら次の戦闘ラウンドから救出した村人と共に戦線を離脱できます(これ以後<洗礼>を受けません)が、指定されたラウンドが経過するまで戻ってくることはできません。
 もう一つの方法は、恐怖により自分を失っている村人達を叱咤激励(又は優しく言いくるめたり)して逃走を促すことです。<魅力>又は<交渉>ロール(容貌修正有効)に成功することで、手近にいる村人1D3人を目的の場所まで逃すことができます。この方法を選択するなら次の戦闘ラウンドから救出した村人は戦線を離脱することができます。この方法ならばPCはその場に残ることができますし、勿論そのまま逃走することもできます。

 また、PC達が盾となり被害を減らすこともできます。女神の前に立ちはだかり、村人への視線を遮ることで<1D6−(盾となったPC数)>人に被害を抑えることができます。しかしこの方法をとれば当然PC達は<緋の瞳の洗礼>を受けなければなりません。

 「女神」は徐々に村の中央に移動し、3ラウンドが経過した後に広場に面する農家への侵入を試みます。<戒めの蛇縄>で戸をこじ開け、4ラウンド目には農家へと入ります。この農家に非難している村人達がいるようでしたら、彼らは<緋の瞳の洗礼>の餌食となります(広場に残っている村人達へは、このラウンド被害はありません)。「女神」は2ラウンドの間農家の中を捜索し(その間中農家に非難していた村人達は<洗礼>を受け続ける)次のラウンド(第7ラウンド)に広場へと戻ります。
 これは香奈子の「両親を捜す」という思いに「女神」が影響された行為です。「女神」はPC等の誘導には決して応じず、明確な目的意識を持って行動しているということを印象づけてください。

 「女神」との戦闘でPCらがエースのカードを出し、事態の好転を望むのであれば皆既月食が発生します。見る間に闇に包まれる中で、「女神」の赤い瞳も輝きを失ってしまいます。<分析力>ロールに成功すれば、「女神」の緋の瞳の力が、光源により左右されるものだと分かります。皆既月食は3ラウンドほどで終了してしまいますが、その間避難に徹すれば生き残った村人達を救うことができるでしょう。

 村人の救出・消滅により広場に<緋の瞳の洗礼>の目標がいなくなりましたら、次の目標はPC達となります。また、ここで「女神」と本格的な戦闘を望むのであればその場合も優先的にPCを目標とします(「女神」は手近な目標を狙っているだけです。戦闘となれば最も手近な目標はPC達でしょう)。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
Back   Home