
| ●籠城 |
|
.14. 籠城 PC達が牧村家に飛び込むと、村人達は一斉に両開きの頑丈な扉を閉め閂をかけます。直後木製の扉は激しい勢いで何かを叩き付けられる轟音と共に軋み始めます。「女神」が<戒めの蛇縄>で扉をこじ開けようとしているのです。辛うじてその衝撃に扉が耐えきると、暫くして轟音は止み辺りにはようやくの静寂さが戻ります。 牧村家に避難し終わると、庭先の喧噪に苛立ちながら珠恵が表に出てきます。彼女はヒステリックになりながら、何が起きているのかを伸介に問いただします。伸介は気が動転しながら「香奈子さんが尋常ではない姿でみんなを…。どうして…。どうしてこんなことになってしまったんだ。」と答えます。珠恵はそれを聞くと恐怖と混乱の表情で喚き散らした後自室に閉じこもります。 暫くすると幼子が父親らしき男性に向かって泣きじゃくっているのに気がつきます。彼らは下の川戸の親子です。川戸夫人は臨月が近いというので村の下手にある家で休んでいるというのです。下手の集落は村の中心部である広場から離れているので、先ほどの惨劇があったことも伝わってはいないかもしれません。牧村家には他にも室田・磐之介・伸彦の姿がありません。室田の家は下手の方にあります。 子供(太一)は自分が母親を助けに行くとべそをかいて周囲を困らせています。他の村人達も助けに行きたいのはやまやまなのですが、「女神」の恐怖には足がすくんでしまいます。いい加減太一が駄々をこねていると、父親(政吉)が自分が助けに行くと名乗り出ます。彼の顔は真っ青で全身が震えていますが、決死の覚悟を決めたのです。 勿論これらの前ふりはPC達が自発的に救出劇を行うための伏線です。もしもPCたちがこのまま政吉を外に出したら…、間もなく水風船が内部からはじけて、内容物を周囲にまき散らすかのような音が聞こえるでしょう。 PC達が村の下手に向かうようでしたら、伸介と村人達は自動車で村の外に連絡を付けてくれと提案します。朱河村には電話が引いてありませんので、外との連絡を付けるには20kmは離れた隣村に辿り着くしかありません。また、自衛に為に資材置き場に保管されているダイナマイトと熊狩り用の散弾銃が必要ではないかとも云います。資材置き場の鍵は、入り口付近の植木鉢の下に隠してあると伸介が教えてくれます。 PC達が下手の村人達への説得や状況説明の為に誰かの同行を求めるなら、政吉がこれに応じます。この場合ではPC達が護衛する限り彼が安易に死んでしまうことはありません。 .15. 村の下手へ 村の下手への道筋は二つあります。見通しの良い川沿いの道を通るか、雑木林を突っ切るかです。川沿いの道は雑木林を回り込むことで、突っ切るよりも遠回りとなってしまいます。 牧村家の裏戸を出ると、そこには雑木林が広がっています。この雑木林は下手まで繋がっています。<分析力>ロールに成功すると、この雑木林に入り込めば「女神」からの視線をある程度は遮ってくれると思い付くことでしょう。 .15.1. PC達が川沿いの道を選択した場合、広場を通ることになります。昼だというのに畑にも農家の庭先にも全く人間の気配を感じることのできないこの光景は、昨夜の夕暮れの農村とは同じ場所とは思えません。 広場には所々に薄赤い液体が散乱しています。しかし、先ほどとは少しばかり変わっていることに気がつくでしょう。赤い染みが飛び散った場所には雑草が恐ろしい勢いで繁茂しているのです。この光景を見たPC達は<分析力>ロールに成功するかPL自身が思い付けば、この赤い液体が植物の成長を促す豊富な養分を含んでおり、この液体を社のある上流から大川に流すことによってこの地の豊作がもたらされていることに気がつきます。。そして昨日の大川が赤く染まっていたことと、室田に奨められてこの地の野菜を大量に食したことを思いだします。 恐怖判定を行ってください! そのまま川沿いの道を進んでいると、中頃に達した頃で<追跡>ロールを行ってください。成功すると地面に何か引きずった様な足跡を見つけることができます。さらに進む用でしたら<聞き耳>−20%ロールが必要です。これに成功すると前方から「ずり。ずりずり…。」という足音と思しき物音が聞こえてくることに気がつきます。さらに進むようでしたら、PC達はそこで「女神」の姿を見つけてしまいます。「女神」はゆっくりと、しかし着実な足取りで下手の方に向かっています。<洗礼>は視界が通っていれば有効ですので、100m程離れた場所から<緋の瞳の洗礼>がPC達を襲います。見通しの良い場所ですので、道沿いに「女神」を追い越そうとすれば3ラウンド必要となります(追いつくのに2ラウンド。逃走に1ラウンド)。 これらの状況下で、PC達はいつでも雑木林の中に逃げ込むことができます。「女神」は雑木林の中までPC達を追うことは決してありません。 この状況で行けば後15分もしないうちに「女神」は下の村まで到達するでしょう。雑木林の中を突っ切るのであれば<フィールドワーク>に成功することで5分で、失敗しても10分で到達することができます。政吉が同行している場合、彼の<フィールドワーク>成功率は40%です。<フィールドワーク>ロールはパーティの代表一人しか試みることはできません。 .15.2. PC達が雑木林を突っ切ることを選択した場合、伸介や政吉は雑木林の中ほどにある吉川家を目指すことを奨めます。吉川家にも山狩りに参加していない女子供や老人方がいるので、彼らにも避難を呼びかけて欲しいというのです。 雑木林の中は目印となるものが分かりにくい中で方向感覚を保つために<フィールドワーク>ロールに成功しなければなりません。成功すると5分で、失敗しても10分で吉川家にまで到達することができます。政吉が同行している場合、彼の<フィールドワーク>成功率は40%です。<フィールドワーク>ロールはパーティの代表一人しか試みることはできません。 吉川家に到着すると、農家からは人の気配がしません。庭先には薄赤い液体が散乱し、玄関の戸は何か強力な力でこじ開けられています。ここにも「女神」が到来したのです。赤い染みが飛び散った場所には雑草が恐ろしい勢いで繁茂しています。この光景を見たPC達は<分析力>ロールに成功するかPL自身が思い付けば、この赤い液体が植物の成長を促す豊富な養分を含んでおり、この液体を社のある上流から大川に流すことによってこの地の豊作がもたらされていることに気がつきます。。そして昨日の大川が赤く染まっていたことと、室田に奨められてこの地の野菜を大量に食したことを思いだします。 恐怖判定を行ってください! 吉川家から下手を目指すには再び<フィールドワーク>ロールが必要です。成功すると5分で、失敗しても10分で下手に到達することができます。プレイヤーには伏せておきますが、雑木林を通る場合牧村家出発から30分後に「女神」は下手に到来します。GMは経過した時間をチェックしておいて下さい。 雑木林を抜けようかという頃に<聞き耳>ロールを行ってください。成功すると一瞬「ガサガサ」という物音がしたことに気付きます。PCが物音の方向に向かうのであればそこで<手がかり>ロールを行ってください。これに成功すると上手に向かう足跡を発見します。<手がかり>ロールが大成功であれば、この足跡は裸足であることに気がつきます。 この足跡を<追跡>するのであれば、牧村家まで続いていることが分かります。 これは伸彦の足跡です。彼は「女神」の行いを香奈子の復讐だと勘違いしていて、朱河村を潰滅させんが為に下手である工作してきました。そして復讐を完全なものとするために牧村家へと向かったのです。 .15.3. PC達が到着しても下手は未だ長閑なままです。現在ここには山狩りに参加しなかった10名程の女子供と老人達がいます。彼らに避難を呼びかければ、政吉がいる場合や<交渉>ロールに成功することで5分、失敗しても10分で準備が整います。 避難の準備で周囲が騒がしくなると室田も自宅から出てきます。彼は緊迫した状況にも関わらずのんびりしていますが、PC達に事情を聞くと自宅から心霊機械を持ってきてPC達に協力します。 避難の準備(隣近所に呼び掛け合い等)をしている間PC達は自由に行動することができます。この時資材置き場や駐車場に向かうことができるでしょう。 資材置き場の扉は開いています。植木鉢の下には鍵はなく、扉に刺さったまま見つかります。中には大量の農薬・殺虫剤・除草剤が棚に並べられています。整理された室内で目を引くのが、無造作に箱が床に転がっていることです。箱には「ダイナマイト」と記されており、中身は空です。また、散弾銃のケースと開けられた弾薬の箱が目に付きます。ケースの中も空で、散弾銃の弾薬が二発抜き取られています。資材置き場のどこを捜しても、ダイナマイトや散弾銃を見つけることはできません。 調査が一通り終わったり自動車や何かで村の外に脱出しようとした場合、朱河村で唯一外界へ通じている峡谷の方から物凄い轟音が轟きます。峡谷に向かえば、辺りを満たす火薬の匂いと煙の先で峡谷沿いの道が崩されている光景を目撃します。道は地面が抜け落ちて極端な斜面になっています。当然自動車で通ることは不可能です。<運動>−20%ロールに成功すれば崩れ落ちた先に進むことはできますが、失敗したら崖下の大川に真っ逆様に落ち到底生き延びることはできません。周辺にはロープを結べそうな所もありませんし、もし工夫してロープを結びそれを支えに進んだとしても、<運動>ロールに成功しなければ落下します。身体にロープを結びつけて落下に備えても、大失敗したときは不慮の事故により(押さえていた手が滑った・杭が抜けた・ロープがほどけた)落下していきます。落下した人物を<レビテーション>を救出するには、事前に発動して下で待機していなければ間に合いません。また、落下してくる人物を受け止めるには<体力>ロールが必要です。以上の障害を乗り切りPC達が村の外に脱出したならば、シナリオはそこで終了となります。村人達は落下の危険を恐れ、急斜面を渡ろうとはしません。また、無理に渡ろうとする場合の成功率は15%です。 崩れている周囲を捜索するならば<化学>ロールを行ってください。これに成功するとここを爆破した者は爆発物の知識が乏しく、無計画に大量のダイナマイトを使用したことが分かります。 避難の準備をしていると、川戸夫人が急にその場に倒れ込みます。彼女は大きいお腹を押さえて、額には珠のような大量の汗を滴らせています。<医療手当>ロールに成功すれば、陣痛が始まったことは明白でしょう。政吉がこの場にいるようでしたら、彼は気が動転して慌てふためくばかりです。彼はただ妻の手を握り、泣いているのか笑っているのか分からない表情で励ましの言葉をかけています。 出産を迎えた川戸夫人は走ることもままならないので、避難の際には誰か一人が背負う必要があります。この場にはPC達と室田、そしているようでしたら政吉以外に男手はありません(女子供、老人しか残っていないのです)。室田は自分の心霊機械を持ち運ぶために背負うことは拒否します(緊急時には機械を捨ててでも婦人を助けるでしょうが)。政吉がいるようでしたら、PC達から指示された場合に限り婦人を背負うことに気がつきます。PC達が政吉を心許ないと感じていれば、PCの誰かが背負うことになりでしょう。 背負うキャラクターは当然攻撃も回避も行うことができません。 いずれにせよ、定められた時間が過ぎると川沿いの道から「女神」が村の下手に到達します。「女神」が到達した時点で避難の準備が終了しているようであれば、被害を出さずに逃げ延びることができます。避難準備が終了していない場合、事前に見張りなどを立てておかなければ真っ先に村人達が犠牲となります。 見張りなどによる事前の警告が無ければ、「女神は」はじめに1D6人の村人達を消滅させます。その後下手の農家一軒一軒に押し入り、室内を捜索し始めます。この際、家々に立て籠もっていた村人達が犠牲になります。 これは香奈子の「両親を捜す」という思いに「女神」が影響された行為です。「女神」はPC等の誘導には決して応じず、明確な目的意識を持って行動しているということを印象づけてください。 「女神」の襲撃に際してPC達がとれる行動については「13 真昼の惨劇」を参考にしてください。身を隠せる場所としては「雑木林(2R)」「民家(1R)」等があります。 PC達が(できれば村人達を連れて)避難しきればこのシーンは終了となります。GMは上記のイベントをテンポよく発生することで、PC達に緊迫感を与えてください。また、シーンを区切るためにここで休憩時間などをとると、より効果的でしょう。 ●GMへ 〜伸彦の行動〜 資材置き場からダイナマイトと散弾銃を盗んだのは伸彦です。彼は目の前で猪岡が消滅したことにより完全に正気を失っています。そして香奈子があのような姿になり、村人達を次々に手にかけているのは父磐之介とこの村への復讐であると考えます。 彼は片方の靴を失ったまま(この辺りに頓着しないのが正気を失っている顕著な兆候です)資材置き場までやって来ました。そして村人達を逃がさぬようダイナマイトを峡谷沿いの道に仕掛けます。そして雑木林を抜けて牧村の屋敷へと返りました。 .16. 牧村家での調査 「女神」の襲撃が一息つけば、PC達は牧村家内で独自の調査を開始することでしょう。牧村家の見取り図をPLに手渡してください。屋敷内は混乱していますので、取り立てて派手なことをしなければ誰も咎めることはありません。伸介に許可を求めるのであれば、彼も狼狽えていますので承諾するでしょう。 |
| ●牧村家見取り図 |
1F
┌□─────┐
│ボイラー室 │
┌──────────┬───┬───┬□────┼──────┤
│ │ 仏間 │ 押入 │ │ │
│ ┌─┬──────┼───┴───┤ 台所 │ 風呂 │
│ │押│ │ │ │ │
│ │ │ 磐之介の │ 居間 │ │ │
│ │入│ 部屋 │ │ └──────┤
│ │ │ │ │ │
│ ├─┼─┼─┼──┼──┼─┼──■ ■ →→(階段)│
便所 │ │押│ │ │ ┌──────┤
┌─┬─┤ │ │ ┼ 客間 │ □ │
│ │ │ │入│ │ │ │ 伸介の │
├□┴□┤ │ │ ┼ │ 土間 │ 部屋 │
│ └─┴─┼─┼──┴──┼─┼──┤ │ │
└───┤ │ │ │
┌───┴□┼─┬──────────────┴─┼─┼─┴──────┘
│ ┼ │└────────────┘
│ │ │ 縁側
│ ┼ │
├┬──┼─┤ │ 井戸○
││ スエの ┼ │
├┤ 部屋 │ │
││ ┼ │
├┴────┘ │
│ │
└───────┘
離れ
2F
┌─┬──────┬───────┬─────┬──────┐
│押│ │ │ ┼ 倉庫 │
│ │ 珠恵の ┼ ┼ ┼ │
│入│ 部屋 │ │ └──────┤
│ │ ┼ ┼ │
├─┼─┼─┼──┼──┼─┼──■ ■ (階段)→↑│
│押│ │ │ ┌──────┤
│ │お手伝いさん┼ 客間 ┼ ┼ 伸彦の │
│入│ の │ │ │ │
│ │ 部屋 ┼ ┼ ┼ 部屋 │
└─┴──────┴───────┴─────┴──────┘
牧村家 全体図
裏戸
┌──□─────────────────────────┐
│ ┌───┐ │
│ ┌─────────□──┘ │ │
│ │ │ ┌──────┤
│ │ │ │ │
│竹 │ 母屋 │ □ 倉B │
│林┌┘ │ │ │
│*│ │ └──────┤
│ └┐ ┌────────□─────┘ ┌──────┤
│ ┌┘ │ 縁側 │ │
│ │ 離 │ 井戸○ □ 倉A │
│ │ れ │ 中庭 │ │
│ └──┘ └──────┤
│ *大木│
│┌──────────┐ ┌─────┬──────┤
││ 使用人部屋 │□□□│ 倉庫 │ 納屋 │
└┴──────────┘ └─────┴──────┘
門 |
|
・磐之介の部屋 八畳ほどの畳の部屋です。書棚には磐之介がかつて経営していた綿工場の帳簿と、色褪せてはいるもののしっかりとした造りの巻物を見つけることができます。これが「朱河村祭事詞」です。巻物の隣には磐之介のメモが残されています。
「朱河村祭事詞」は古文体で記されていますので、内容を理解するには2時間ほど読み込んだ後に<歴史学>ロールが必要です。この判定は再び時間をかけることでやり直すことができます。<歴史学>ロールに成功すると次のことが分かります。 ・戦国時代にこの地を悪霊が襲った。悪霊は光を浴びることによって赤い光を放ち、人々を薄赤い液体へと変えていった。悪霊は実体のない存在であり、現在の宮乃家の祖先である巫女がその身に悪霊を宿らせることで神域の社に封印できた。本来は実体を与えることで巫女の身体もろとも悪霊を滅ぼそうとしたのだが、悪霊の残した薄赤い液体が農作物の成長に影響を与えることを知った村人達は悪霊を「緋目様」として祀り敬い、その恩恵を得ようとした。巫女の身体は約50年ほどで朽ち果ててしまうとされ、そのたびに素質(霊能力)を持つ宮乃家の女子が神域の社に送られた。 「緋目様」は巫女の意識に影響を受けるとされていて、巫女が生前強く願っていたことを成し遂げようと行動する。そのために「神域の巫女」となるべき少女は、宮乃家の裏手に掘られた岩座敷にて全ての雑念を捨て去るように育てられる。 ・スエの部屋 離れにある六畳ほどの畳の部屋です。ここにはいつも80歳位の威厳に満ちた老婆がいます。彼女がスエです。スエは脚を悪くしているのでこの部屋からほとんど離れることはありません。彼女は磐之介が行っていることについては何も知りません。脚を悪くしてから世間のことに疎くなっています。 PC達が「緋目様」について訪ねるのであれば、威厳に満ちた雰囲気で次のことを答えます。但しPC達が礼節をわきまえないようでしたら、彼女は何も答えません。 ・緋目様はかつて村に災いをもたらす祟り神であったが、祀り敬うことで村に豊穣をもたらした。 ・巫女は神域に送られることで生き神様として祀られた。次代の巫女になるはずだった香奈子に村人達が余所余所しかったのはギャップに戸惑っていたため。 スエは「女神」が村を襲撃したことを知ると、沈痛な表情で最後にこう付け加えます。 「香奈子はこの村に復讐しようとしているのかもしれぬ。宮乃の家がこの村のために支払ってきた犠牲を考えれば、いつこんな天罰が下ってもおかしくはなかった…。」 ・伸介の部屋 10畳ほどの洋室です。室内は綺麗に整頓されています。ベットの脇には蓄音機が置かれ、書棚には農学の本やクラシックのレコードが目立ちます。 ・伸彦の部屋 質素で飾り気のない洋室です。ここには特に目立つものはありません。 ・珠恵の部屋 8畳ほどの和室です。派手に飾り付けられていて贅沢な装飾品が目立ちます。ここにはいつも珠恵がいます。珠恵はPC達にヒステリックに対応します。彼女は自分の理解できない現象に対して、現実との拒絶でしか自我の安定を保つことができないのです。 立て籠もってから暫くすると、喉の渇いた彼女は台所に水を飲みにいく際に伸彦が父親の湯飲みに青酸カリを混入しているところを目撃します。自室に戻った珠恵を伸彦は殺害し、珠恵の部屋の押入に隠した後に彼女と入れ替わります。 ・ボイラー室 軽油や薪で風呂を焚くことのできるボイラーがあります。ここの軽油を用いて火炎瓶を製作することができます。瓶は1D6個ありそれぞれ<化学>ロールに成功することで製作できます。 第二の殺人が終了した後、ここで珠恵に化けた伸彦は軽油をまいて火をかけます。 ・竹林* ここには竹林が生えていて視界を制限してます。この近くの板垣は簡単に板を外すことができて気付かれずに屋敷の出入りができます。「6.白い影」では伸彦はここから出入りしていました。そして高山殺害時にもこの抜け穴を使います。 ここを調べる場合<手がかり>ロールに成功すると抜け穴を見つけることができます。 ●GMへ 〜伸彦の行動〜 PC達が村の下手へ向かっているか屋敷内を調査しているときに、伸彦は抜け穴を使って屋敷へと侵入します。散弾銃を竹林に隠して、資材置き場で入手した青酸カリを持ち伸彦は台所に向かいます。人気が無くなったのを確認して台所に入った伸彦はここで父磐之介の湯飲みに青酸カリを仕込みます。しかし、ここで双子の姉の珠恵に見つかってしまいます。伸彦が死んだことになっているのはPC以外知りませんので、この時珠恵は伸彦の行動を気にも止めませんでしたが、伸彦にとっては知られてはいけないことです。自室に帰った珠恵を伸彦は薪割用の鉈で殺害し、珠恵に成り代わります。 .17. 第一の殺人 調査が一段落し陽が傾きかけた四時頃、にわかに表門の辺りが騒がしくなります。磐之介がようやく帰宅したのです。磐之介は屋敷内に入ると、縁側に腰を下ろしお手伝いのハナにお茶を持ってくるようにと命じます。彼は長い間山の中を走り続けていたようで、喉がカラカラで話すこともままなりません。PC達が詰め寄ったとしても、暫くは息を整えるのに精一杯でしょう。そうこうする間にハナが湯飲みにお茶を入れて持ってきます。磐之介はそれを強引に受け取ると一気に飲み干します。次の瞬間、磐之介は喉元を押さえながら急に苦しみだし、大量に吐血して倒れ込みます。磐之介に駆け寄ると、絶命していることに気がつきます。また、口元から微かにアーモンドの香りがします。<薬学>ロールに成功すれば、青酸化合物であると分かります。 ◆ 青酸カリ ◆ シアン化カリウムの別称。猛毒がある白色の結晶。金属精錬やメッキ、殺虫剤などに使われる。毒劇物取締法の毒物に指定されており、成人の体内に入った場合の致死量は約0・15〜0・2グラムとされる。 アーモンド臭は湯飲みからもします。ハナはその場に卒倒し、この光景を目の当たりにした手伝いの高山は「香奈子さんの復讐だ!」と絶叫し、倉Aに閉じこもります。 PC達がハナを事情聴取すれば、彼女は磐之介愛用の湯飲みをいつもの通り使用したと云います。磐之介の湯飲みは、家族や使用人であれば誰でも知っています。そして、この日の台所には喉を渇かせた村人達が何人も行き来していました。誰がどの時間にいたかということを確認するのは不可能に近いです。 倉Aに閉じこもった高山は家具や荷物箱で扉を封鎖します。納屋にある斧か何かで強引に打ち破ろうとしない限り侵入するのは困難でしょう。 高山は倉の中で「次に殺されるのは俺だ…。」と呟き続けています。恐慌状態にある高山をなだめるには、攻撃的な台詞や扉を開かせようと云う説得は効果がありません。彼の不安を引き出すような交渉や扉越しの<心理療法>等が行われれば、扉を開けることはしませんが事件の真相について次のようなことをぽつりぽつりと話し始めます。 ・二週間前に磐之介は「緋目様」の祭祀を復活することを宮乃厳男に求めた。しかし厳男はこれを拒絶したため、磐之介は逆上し宮乃夫婦を殺害する。磐之介は「朱河村祭事詞」を調べて岩座敷のことを知り、証拠隠滅のためそこに二人の死体を隠した。そして緋目様の代替わりを行うには香奈子が必要と知り、東京から彼女を呼び寄せる。 ・先日、香奈子に両親に会わせる代わりに巫女になることを強要し、神域の社にて巫女の代替わりを果たした。しかし、石室内に明かりを持ち込んだ滝田によって緋目様が動き始め、磐之介と高山は滝田等三人を石室に閉じこめたまま逃げ帰った。 事件の真相を吐露した高山は憑き物が落ちたかのように力無く項垂れます。それでも彼は倉の外へは出ようとしません。 .18. 第二の殺人 30分から1時間ほど経過して日が暮れ辺りが薄暗くなると、避難してきた村人達は磐之介殺害の動揺がようやく収まりつつあります。そんな中、屋敷中に突如クラシック曲が流れ始めます。ドボルザーク作交響曲第九番ホ短調「新世界より」です。<聞き耳>ロールに成功すると、曲が屋敷の裏戸の方から流れていることに気がつきます。失敗した場合どこから流れているのか分かりません。PC達が裏戸の方へと駆け付けると、裏戸のバリケードが撤去されていて扉が大きく開け放たれています。そして門の内側に蓄音機が置かれていて、そこから「新世界より」が流れています。 PC達が真っ先にここに到達したのであれば、もう一度<聞き耳>ロールが必要です。これに成功すると「ずり。ずりずり…。」という何か引きずるような足音と思しく物音が聞こえてきます。それも裏戸のすぐ近くで! 「女神」は今まさに裏戸から侵入しようとしています。戸を閉めようとする者は当然<緋の瞳の洗礼>を受けなければなりません。戸を閉める行為そのものは1ラウンドで完了しますが、「女神」は<戒めの蛇縄>で戸をこじ開けようとするでしょう。「女神」の行動順になったら<体力>−50%ロールに成功して戸を押さえつけなければ、次のラウンドには「女神」は侵入を試みます。この<体力>ロールには3人まで参加することができます。この時の判定は【押さえつけに参加しているキャラクターの体力合計+参加キャラクター中の最低経験レベル】×5%に競争ロール難易度による修正(「女神」は成功率100%なので−50%)を加えた数値です。押さえつける行為に集中しているキャラクターはそのラウンドの自分の行動順に何もすることはできません。 PC達は戸を押さえつけるためにバリケードを運ぶかもしれません。戸が閉められている状態で周囲に散乱している椅子や机を運べば、一つにつき戸を押さえつける行為に+30%の修正が加わります。この効果は累積します。合計5つのバリケードを運べば(修正+150)「女神」は戸を開く行為に自動的に失敗します。 戸をこじ開けて「女神」が侵入してきた場合、体当たりなどで「女神」のバランスを崩して、後退させることができます。体当たりには<格闘>スキルか<敏捷力>ロールが必要です。これに成功すると「女神」はバランスを大きく崩し、戸の外に押し出されます。大成功を治めれば後退した後転倒して、1ラウンドかけて起きあがったから次のラウンドに行動することになるでしょう。しかし、当然のことながら体当たりを行ったキャラクターは<緋の瞳の洗礼>を受けることになるでしょう。 <聞き耳>ロールに失敗するなどして裏戸への到着が遅れた場合、裏戸の方から村人の悲鳴と共に例の破裂音が響きます。この場合「女神」は既に裏戸から侵入を果たしています。体当たりで後退させなければ牧村家は潰滅するでしょう。 裏戸のささやかな(しかし命を懸けた重要な)攻防が終了した後、倉Aの前にいるPCは倉の中から聞こえてくる話し声に気付きます。<聞き耳>ロールに成功すると高山の声で「誰だ? 誰か外にいるのか? 窓?」と聞こえます。その直後銃声が二発轟きます。<ライフル>スキルを持っている者には、それが散弾銃の発射音だと分かります。そして高山のくぐもった呻き声と何かが倒れる音が聞こえます。 納屋の斧か何かで倉Aの扉を打ち倒して中に入ると、頭の爆ぜた高山の死体が明かり取りの窓付近に転がっています。窓の外には12ゲージの散弾銃が落ちています。窓から顔を出した高山を外から散弾銃で狙撃したようです。 ●GMへ 〜伸彦の行動〜 高山が騒ぎ出したことにより次のターゲットを見つけた伸彦は、兄伸介の部屋から蓄音機と「新世界より」のレコードを持ち出し、バリケードを外した裏戸にセットします。そして竹林から持ち出した散弾銃を手にし、雑木林を通って倉Aの明かり取りの窓前までやって来ます。屋敷が「女神」の侵入で騒ぎ始めたら、彼はそこから倉の中の高山を呼び寄せ、顔を出した高山を射殺しました。その後散弾銃を捨て、彼は大急ぎで抜け穴まで戻ります。屋敷へ戻った彼は着物を羽織り珠恵の格好をして、ボイラー室へと向かいそこに火をつけます。 .19. 追求 この時点で伸彦が犯人であると推理するPCもいることでしょう。第二の殺人に於いて「新世界より」の曲が使われたということは、香奈子と親しかった伸彦が犯人であることを指し示しています。ここでPC達に事件を推理する時間を与えてください。PC達が推理に行き詰まり、更なる情報が必要でしたら、これ以降のイベントを発生させてPC達に推理を促してください。PC達が自発的に調査を進めるのであれば、これらのイベントを削っても構いません。 .19.1. PC達が倉Aで高山の死体を発見すると、中庭で村人の一部がPC等を疫病神と罵ります。彼らの忍耐は既に限界を超えていて、不満の種がいつ爆発するか分からないような状況なのです。彼らはPC達がこの村に来たためにこのような事件が起こったと根拠もなく断定的に決めつけます。そして、PC達が香奈子と協力してこの村を滅ぼそうとしているのではないかと疑念の声を投げかけ、PC等を屋敷から追い出せと声を上げます。 もしPC達が「13 真昼の惨劇」や「15 村の下手」で村人達の救出に力を尽くしていれば、助けられた村人達がPCの援護をします。PC達が村を滅ぼそうとしているのなら私達を助けるわけがないと、正論を述べます。 これらの騒ぎは次第に大きくなり、ついには避難している村人達のほとんどが中庭へと集まってきます。室田・伸介の姿もありますが珠恵の姿はありません。この時珠恵の姿を借りている伸彦は屋敷を大回りして抜け穴へと向かっているのです。屋敷にいる者ならば誰でも知っていることを、この時外にいる者だけは知り得ないのです。 珠絵姿の伸彦は騒ぎが収まってから現れます。彼はその時までにボイラー室に火を放っています。 川戸夫婦が生き残っている場合、この騒ぎは突然離れから上がった赤子の泣き声により静まります。離れから顔を出した川戸政吉は大声で「子供だ! 子供が産まれたぞ!」と絶叫します。周りの人たちはこのような状況でありながら精一杯の讃辞を政吉に投げかけ、刺々しかった村人達が落ち着きます。政吉は皆の言葉に涙ぐみます。 それ以外の場合は伸介が一応村人達を宥めます。しかし、村人達の間には不満がくすぶることでしょう。 政吉が死亡している場合、婦人はショックでお産に臨めず母子共に死んでしまいます。 太一は両親のどちらかが死んでいても「仕返ししてやる。あいつに仕返ししてやる!」と泣きじゃくります。 .19.2. このイベントは川戸夫妻が生き残っている場合発生します。 川戸夫妻の息子太一が何かに怯えるように政吉にしがみついてきます。太一は「便所に入っていたらお化けの音が聞こえた〜。」と政吉に泣きつきますが、「お前はお兄ちゃんになるんだぞ。そんな弱虫でどうする。」と優しく宥められます。それを聞くと太一は強がって「う、うん。強くなるよ。お化けなんて恐くない。」震えながら答えます。 太一が聞いたお化けの物音とは、伸彦が抜け穴を通ったときの音です。PC達が事情を聞けば、太一は便所脇の竹林から衣擦れの物音が聞こえたと答えます。 竹林を調べるのならば<手がかり>ロールが必要です。ロールに成功すると板垣の板の一部が外せるようになっていて、ここから出入りができることが分かります。 .19.3. この時点でPCの誰かが便所に向かうようでしたら、「19.2」で太一と同じ物音を聞き取ることができます。さらに<聞き耳>ロールに成功すると、板垣を叩いたような音が聞こえます。因みに便所の小窓から覗ける範囲には誰も見えません。 伸彦は抜け穴から入った後ボイラー室へと直行します。便所のPCが大急ぎで勝手口から竹林に回ってとしても、鉢合わせになることはありません。 .19.4. この時点に於いて珠恵の部屋には誰もいません。PC達が珠恵の部屋を調べたら、押入から白い着物の裾がはみ出ています。押入を開けると、鉈が頭に刺さったままの珠恵の死体が転がり落ちてきます。 .19.5. PC達が屋敷内の村人達に聞き込みする場合、誰か一人代表として<運>ロールを行わせてください。成功すると村人の一人が伸彦の姿を見かけないことを心配しています。彼は昼頃(避難した後)台所で伸彦の姿を見かけています。 この場面で珠恵に化けた伸彦は中庭をふらふらとしています。PC達が珠恵に話しかけたならば、非常に落ち着いた様子であることを印象づけてください。以前のヒステリックさはどこにも感じられません。既に狂気に陥っている伸彦にはそこまで演技することなど思い付きません。また、「19.1.」の騒ぎの件を持ち出しても当然彼女(?)は知りません。取り繕うことなく、「そんなこともありましたの。」と関心無く答えます。 |
| ●緋の瞳の女神 |
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.20. 緋の瞳の女神 遅かれ早かれ、PC達が珠恵の姿をした伸彦が犯人であると突き止めることでしょう。 日が沈み夜の帳が降りる頃、伸彦はボイラー室から意識を遠ざける為に表門の近くに立ち、村人達の様子を眺めています。PC達が追求すれば、彼はあっさり犯行を認めます。伸彦はまず羽織っていた珠恵の着物を脱ぎ捨てます。そして狂人特有の熱っぽい眼差しで中空を見つめ、滔々と語りだします。 「…これは、これは復讐なんだよ。この村に対する香奈子の復讐なのさ!」 「宮乃家の裏手にある岩座敷の中の惨状を見れば、香奈子の憎しみの断片くらいは分かるはずだ。あんなに親しかった両親を殺され、村のために人身御供にされた彼女の気持ちが!」 「誰にも…。誰にも僕と香奈子の邪魔なんかさせない。」 ここで伸彦は言葉を止め、屋敷の方に視線を向けます。 「夜になったら香奈子を倒せるとでも思ったかい? 甘いんだよ! 見ろ!」 そういって指さした先にはボイラー室があります。彼の言葉と時同じくしてボイラー室から火の手が回ります。炎は灯油でもまかれていたのでしょうか、瞬時に周辺に燃え移り辺りは猛火に包まれます。 「この業火か香奈子の目印となるんだ。この村の最期の灯火さ!」 「あーははははは。みんな。みんな、みんな死んじゃえばいいんだ!」 言うが早いか彼はダイナマイトを取り出し、それに火をつけて投げます。目標は表門です。一瞬のタイムラグと共に轟音が轟き、周囲に煙が立ちこめます。そこへあの音が聞こえてきます。「ずり。ずりずり…。」と。 「ほら、聞こえるだろ? 香奈子だ! 香奈子が僕を迎えに来たんだ! かなこー。」 もうもうと立ちこめる煙の中、伸彦の声だけが虚しく響きわたります。 「香奈子。やったよ。僕は君の手伝いがしたかったんだ。君の復讐の手伝いを…。僕と香奈子を虐げたこの村に復讐するんだ。香奈子? かな…。」 その瞬間、まるで水風船がはぜて内容物を周囲にまき散らすかの音が響きます。 『緋の瞳の女神』 最終形態 モンスターレベル:10 『「ずり。ずりずり…。」 漆黒の闇から何か引きずるような、それでもしっかりとした足取りと思しき物音が聞こえてきた。猛火によって照らされた庭先に、物音の正体は遂にその姿を現す。巫女装束の上に布をまかれ束縛された少女は、既にその面影さえも残ってはいない。二の腕に、布の裂かれた背中に、両脚に、そして素肌の露出する全ての場所には妖しく光る緋の瞳が開いている。その圧倒的なまでの存在感は、これまでの姿とは段違いなほど。そう、今まさにこの場に姿を現したものは、緋の瞳の女神です!』 恐怖判定を行ってください! 『緋の瞳の女神』はイモータルですので、恐怖判定に失敗した場合は余分にもう一枚カードを引かなければなりません。 能力値 体力:15 敏捷:10 分析:2 知覚:10 意志:10 魅力:− 運:10 攻撃:100%(緋の瞳の洗礼)1D3+10(半径10m内 MPダメージ 恐怖判定) 60%(死者の怨嗟)周囲10m 1D6+6(恐怖判定) 70%(戒めの縄蛇)2回攻撃 1D10+10(恐怖判定) 防御点:5(肉体的損傷が関係ないから) HP:100 MP:100 抵抗力:100% 特殊能力:暗闇 <緋の瞳の洗礼>はたいまつや懐中電灯程度の明かりが無ければ使用することができません。これは太陽神としての「女神」の弱点です。 第二形態の<緋の瞳の洗礼>を受けたキャラクターは視線を逸らすための抵抗力ロールを行うことすらできません! その強力な魔力に抵抗することすらできないのです。ダメージ減少の抵抗力ロールは通常通り行うことができます。 「女神」からMPにダメージを受けたキャラクターは、魂が吸い取られるような感覚に陥ります。これがはじめてのダメージならば恐怖判定が必要です。 <緋の瞳の洗礼>によりMPが0以下となった犠牲者は、精神力を全て吸い取られ肉体は薄赤い生命の原形質へと変換されてしまいます。この状態になった犠牲者を救う手段はありません。 <戒めの蛇縄>は香奈子の身体を束縛する白布が突如、鎌をもたげた蛇のように「噛みついて」きます。この蛇縄は信じられないような怪力(体力15)です。これを目撃した者は恐怖判定を行ってください! <戒めの蛇縄>は<緋の瞳の洗礼>を行ったラウンドでも使用することができます。 <死者の怨嗟>が発動すると、「女神」の身体中の瞳から人の顔をした赤い光が無数に飛び出し、効果範囲内の目標全てに食らいつきます。これを目撃した者は恐怖判定を行ってください! <死者の怨嗟>>は<緋の瞳の洗礼>を行ったラウンドでも使用することができます。<戒めの蛇縄>とは同じラウンドに使用することはできません。 既に遮るものが無い状況で、「女神」は悠然と屋敷内に侵入します。ボイラー室からから出火した火は母屋も取り込み裏戸に向かうことは困難です。特に出産直後の川戸夫人は動き回ることは困難でしょう。PC達が抜け穴に気付いていれば、村人達をそこから逃すことは可能ですが、一人ずつしか出られないので時間がかかります。「女神」はもう目前まで迫っているのです。 .20.1. 川戸夫妻が生存している場合は、この場面で太一が「女神」の前に飛び出します。そして小さい体を奮わせながらあらん限りの声でこう叫びます。 「父ちゃんと、母ちゃんをいじめないで!」 その声を聞くと「女神」の歩みがぴたりと止まり、香奈子の口から言葉が紡がれます。 「とう…さん。かあ…さん。どこ、どこにいるの?」 PC達が、香奈子が両親を捜していることに気がついたのであれば、「女神」の中に香奈子の心がまだ生きているという事実に救いを感じ、PCが望めば恐怖判定で受けた数字札をランダムで一枚捨て去ることができます。 「女神」は暫くの間その場で呆然と立ちつくしています。この隙に村人達は逃げ延びることができます。 .20.2. 川戸夫妻のどちらか一方でも死亡している場合、この場面で太一は作業用の鎌を片手に「女神」へと飛びかかります。 「お前が。お前が父ちゃんと母ちゃんを!」 しかし、少年の憎悪も怪しく輝く緋の瞳の前には無力でした。破裂音と共に少年の姿は消え去り、周囲に薄赤い液体が四散します。 川戸夫妻を救出していないペナルティは非常に大きいものです。この場合PC達が「女神」の襲撃から村人達を守ることは困難でしょう。「新世界より」の曲に引き寄せられることが分かっているのなら、<アポート>か何かで呼び寄せたヴァイオリンによる演奏で、誘導することも考えられます。蓄音機は火災に巻き込まれていなければ、これを使うことも可能でしょう。 .21. 磐座敷 岩座敷は宮乃家の裏手の崖下に、隠れるようにぽっかり口を開いています。「朱河村祭事詞」を読んだのであれば、迷わずここに辿り着くことができます。高山や伸彦の台詞を元に捜索するのであれば<フィールドワーク>に成功する必要があります。失敗すると1時間無為に時を過ごします。再度の捜索は可能です。 入り口である洞窟を少し進むと、十畳ほどの畳の部屋にで出ます。ここが「神域の巫女」を育てた岩座敷です。PC達が訪れたときには中は相当荒れ果てていて、非道い腐臭が蔓延しています。それもそのはず、座敷には中年の男女と思われる腐乱死体が放置されています。<医療手当>ロールに成功すると、死後2週間ほど経過していることが分かるでしょう。死因は鎌の様な鋭利な刃物で喉元を切り裂かれたことによる失血死です。 この遺体は香奈子の両親である宮乃夫妻です。彼らは牧村磐之介等に殺害された後ここに放置されました。 |
| ●結末 |
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.22. 結末 .22.1. 「女神」が香奈子の「両親に会いたい」という目的で行動していることを知ったPC達は、きっと両親の死体のある岩座敷(又は死体を運搬した場所)まで「女神」を誘導することでしょう。ヴァイオリンで「新世界より」を演奏すれば、「女神」はその場に姿を現します。「女神」=香奈子は両親の遺体を目撃すると、その両目から涙を零します。香奈子の思いが遂げられたことで、一時的に香奈子の意識が戻ったのです。震え泣く香奈子はPC1に向かって声をかけます。 「先輩。先輩の音色が聞こえてきて…。」 「私、ずうっと捜していたのです。ずうっと会いたかった…。お父さん、お母さん…。」 ひとしきり涙を流した香奈子は、両目を堅く結んだまま言葉を続けます。 「自分が自分で無くなっていくのが分かります。お願です。私を、私を解放してください。私が私でいられるうちに…。私が『女神』を抑えている内に、早く!」 「ああ…。もう、意識が…。遠のいていきます…。」 第一戦闘ラウンド、「女神」は香奈子の意志力(抵抗力)に縛られ、100%の確率で行動することができません。香奈子の抵抗力は毎ラウンドごとに−30%されてゆき、抵抗率40%(香奈子の基本抵抗力)まで下がります。香奈子が抵抗に成功しているラウンドでは、「女神」は<緋の瞳の洗礼>も含めてあらゆる行動をとることができません。この効果はこの戦闘の間だけ持続します。 「緋の瞳の女神」のHPかMPが0以下に落ちると、<イモータル>は自分の世界へと帰還します。そして魂の解放が起こります。 『渾身の一撃が「女神」の身体を打つと、一度激しく脈動した後に彼女はその場に力無く崩れ落ちます。直後、彼女の身体からおびただしいほどの輝きが飛んでいきます。それはあの妖しい赤い光ではなく、生命の色とも思える暖かい光です。ふと、この光は今まで吸い込んできた魂の輝きではないかと、その光景を眺めながらぼんやりと思います。魂の解放の光景と…。光が次々に天へと召していく中で、一つの輝きがあなた達の周りを何かの意図があるかのように巡ります。輝きは一通り巡ると、中で待っていたかのような二つの輝きと合流し、他の光と同じように天へと昇っていきました。』 .22.2. 香奈子の目的に気がつかない場合、PC達が「女神」を撃退するのは困難でしょう。しかし、方法が無いわけではありません。一つは神域の社に「女神」を誘導し、再び封印してしまうことです。これには問題があって、まずはじめに「女神」は自発的に社に戻ろうとはしません(そこに両親がいないことは明白です)。また、「新世界より」の曲を用いて誘導するにしても、蓄音機を回収していなければ演奏者が石室に入らなければならないでしょう。<映像記録>の心霊機械も有効かもしれません。 二つ目は光源の無い場所で「女神」と戦うことです。毎ラウンドMPに10点近いダメージを与える<緋の瞳の洗礼>さえ防げれば、PC達にも勝機はあることでしょう。但し、暗闇での戦闘ではPCた達は−50%の修正を受け、目標が認識できないと霊能力・心霊機械・魔術のほとんどは使用できません。「女神」は視力に頼って行動しているわけではないので(超常的な知覚器官を働かせている)これらの修正は被りません。<赤外線視覚>の様な心霊機械が重要となるでしょう。 エピローグ 「緋の瞳の女神」を封印、或いは撃退することができればシナリオはこれで終了となります。 朱河村は伸介を中心に復興していくことになります。後日、伸介からPC1の元に手紙が来ます。そこには今回の悲劇を風化させないためにも、社の巫女達の遺体と共に宮乃一家を岩座敷の場所に埋葬した旨が記されています。そして、岩座敷の前に社にあった女神像を運び、供養の碑としたとあります。 手紙には白黒の写真が一枚同封されていて、そこには伸介と村人達、そして女神像が写っています。女神像には村人達の手によって瞳が入れられているようで、始めてみたときと全く印象が異なります。PC1はその時、一瞬だけその女神像に香奈子の顔が重なります。それは勘違いなのでしょうが、写真の中の香奈子は幸せそうな笑顔を浮かべているのでした。 経験点 香奈子を「緋の瞳の女神」の呪縛から解き放つことができればシナリオクリアーです。ルールに従って経験点を与えてください。「女神」を撃退することができずに村から逃げ出してしまった場合は、与えられる経験点は半減します。 また、ボーナスとして参加PC全員に「13.真昼の惨劇」と「15.村の下手」で助け出すことができた村人一人につき50点の経験点が追加されます。さらに巫女姿の人物が伸彦であると推理したPCには100点、磐之介・高山殺害の犯人が伸彦で珠恵と入れ替わっていると推理したPCには200点の経験点が追加されます。 |