
| ●シナリオの概略 |
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ガーナード=グローバーの一人娘マリアは、生まれついてから心臓に微細な穴があいているという障害を持っていました。妻を早くになくしたガーナードはどうにかして娘の身体を癒そうと医学やオカルトに傾倒し、そのうちに錬金術において如何なる病も癒すという「エリキシル剤」の作成に乗り出します。執念かはたまた才能か、彼の実験は着実に成功を収め、「エリキシル剤」とは行かなくとも心疾患を癒すための霊薬の生成にこぎ着けました。しかし、何度かの動物実験を重ねたとはいえ愛する一人娘に実験段階の霊薬を試すことには躊躇します。それまでの失敗例を幾つも目撃している彼にとっては。そこで彼はホムンクルス作成の応用で、マリアの血液を用いクローンとも言える複製を作成しました。マリアの代わりに試験薬を試すために・・・。ガーナードは完成したホムンクルスをアイラム(「=AIRAM」「MARIA」のスペルを逆に読んだもの)と名付け、研究室の奧の倉庫を開かずの扉としそこにアイラムを住まわせました。 それからも実験は難航したが確実に成果を上げていきます。アイラムは何度かの霊薬投与を受け、元のマリアの身体とは比べものにならないほど頑健になりました。更には、実験の影響か彼女には擬似的とも言える意志が育ちます。彼女の知性は非常に高く、ガーナードはアイラムに錬金術の手伝いをさせるほどでした。ですが、ある日アイラムは知ってしまいます。ホムンクルスの寿命は1年から2年という非常に短い期間であることを・・・。それは人間としてのアイデンティティを構築していたアイラムにとっては絶望そのものでした。そこで彼女はこの来るべき破局を打破するために蓄えた錬金術と黒魔術の知識を用います。それは自身を意識のみを抽出した存在(=アストラル体)に変換し、新しく作成した自我のない自身のコピーホムンクルスに宿すというものでした。人間のように生まれたときから肉体に精神が宿っていれば、その結びつきは非常に強固なものだが、アイラムのような擬似的自我ならば<精神交換>の様な高等魔術ではなくもと<憑依>が可能であると仮説を立てたのです。その日からアイラムは自らのコピーホムンクルス作成へと取りかかります。しかし、できたホムンクルスは全て失敗作でした。ある者は内臓が欠如しており、ある者は四肢が無く、ある者は頭蓋の一部と脳が生成されませんでした。既に遺伝子情報が欠損しているクローンをコピーすることはできない・・・。その事実にアイラムが気付いたときには、彼女の秘密の実験室は失敗作で溢れんばかりでした。ことがガーナードに発覚することを恐れたアイラムは出来損ない達を焼却して破棄します。街中に放り出す結果となったのはアイラムに世間に対しての知識が欠落していたことによります。 街中に頻繁に破棄されたホムンクルスの残骸はその薬品臭と惨状から錬金術殺人と呼ばれるようになりました。そしてアイラムの様子に不信感を抱き始めたガーナードは彼女を問いつめたときに、もののはずみで刺傷してしまいます。また、常に大量の水分を吸収しなければ行動のとれないアイラムは、雨が上がってしまったことで干からびかけ身動きがとれなくなっていました。ですが次のアイラムの行動はオリジナルへの精神転移。つまりマリアの肉体を奪うことです。彼女は度重なる実験の失敗と死への恐れ、そして父として慕ってきたガーナードを刺してしまったことから既に正気を失っています。彼女の願いはガーナードの本当の娘になることなのです! ですが本当の答えは、ガーナードの部屋の戸棚の中にしまってあります。 |
| ●NPC紹介 |
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マリア(MARIA)=グローバー 18歳 錬金術師ガーナードの娘 生まれもって体が弱く、そのため錬金術師は「エリキシル剤」の生成を試みた。ことあるごとにせき込み、父親のガーナードが生成したという白い粉薬を飲む。PCには錬金術師が作成したホムンクルスと錯覚させ、真犯人と思わせる(ミスディレクション)愛想が良く笑顔が可愛い少女。長いブロンドの髪を髪留めでまとめアップにしている。 普段はホワイトチャペル地区内のセントフローラ教会に付属する託児所で身よりのない子供達の世話をする保母さんをしている。 アイラム(AIRAM) ホムンクルス キャストレベル:3 ●能力値 体力:8 敏捷:6 分析:7 知覚:4 意志:8 魅力:7 運:3 攻撃:45%(拳) ダメージ:1D3+3 防御点:なし HP:24 MP:28 抵抗力:55% ●特殊能力:黒魔術3レベル 修得済み呪文 恐怖 腐食 電撃 幽体離脱 製薬(発動率55%) 夜魔 死体使役(発動率45%) 憑依支配(発動率15% 新呪文) ●背景情報 娘と瓜二つの姿を持つホムンクルス。エリキシル剤の投与実験の為に錬金術師が作成した。実験過程で擬似的な意志を持つことになる。寿命は極めて短く、それを克服するために賢者の石作成を望む。ゴーストハンターが屋敷を訪れてからは乞食の格好をして機会を伺っている。真犯人。マリアとは異なり長いブロンドの髪を背中まで自然なまま垂らしている。 新呪文<憑依支配> 7レベル 消費MP:14 距離:接触 効果範囲:1体 持続時間:解除されるまで永久 恐怖判定:なし 効果:<幽体離脱>の様に術者の精神を霊体化させ、対象の肉体に憑依し完全な支配下に置きます。対象の精神は休眠状態になり、術が解除されるまで目覚めることはありません。 この呪文の対象となる人物は術者と非常に近い血縁関係になければなりません。双子やクローンで修正無し、兄弟姉妹や親子で−30%の修正が加わります。 この呪文の詠唱には10分間ほどかかります。 ガーナード=グローバー 男性 46才 錬金術師 ●背景情報 かつてはゴーストハンターとしても活躍していた錬金術師。PCが所属している団体(「白きアヴァロン」か心霊調査機関)にも加わっており、PCとも面識がある。人柄は頑固であるが困ったことには親身になって応援する人物であるとPCらは認識している。 一人娘が生来の心疾患であったため、エリキシル剤を作成して娘を癒そうと考えていた。その過程でホムンクルスのアイラムを製作するが、意志を持ち始めた彼女にこれ以上実験を続けることもできず、新しいホムンクルスの作成を試みようとしていた。 アイラムには親心を抱いており、彼女の二回目の誕生日のためにプレゼントを用意していた。 (ゲーム中は病院のベッドで過ごすためここではデータを掲載しません。) エリック=ゴールドバーグ 男性 27才 殺人課刑事 キャストレベル:1 アーキタイプ:ディテクティブ ●能力値 体力:6 敏捷:5 分析:5 知覚:6 意志:4 魅力:6 運:3 攻撃:35%(拳) ダメージ:1D3+1 30%(38口径大型拳銃) ダメージ:1D10+1 弾数:6 防御点:なし HP:22 MP:19 抵抗力:25% ●技能:大型拳銃 格闘 追跡 手がかり 尋問 警察手続き(特殊) ●背景情報 PC達が警察関係の人脈をとった場合は彼がそのコネとなります。 エリックはスコットランドヤードの殺人課刑事で、この錬金術殺人(正式にはクラウバー墓地死体遺棄及び焼死殺人事件)の担当刑事です。人並みの正義感と決して無能ではない技量の持ち主ですが、押しには弱くPCが頼み込めば捜査情報を教えてくれることでしょう。 ガーナードが刺されたときに、近所の乞食の老婆(実はアイラム)から証言を聞き出したのは彼です。 また、彼は幼いときにガーナードに命を救われた経験があります。ですので今回の捜査方針に懐疑的であり(命の恩人を疑っているのですから!)彼は独自に捜査を進めようとします。 |
| ●事件の経過 |
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1918年 6月20日 マリアの血液を用いてアイラムを創造 鍵を無くしたと云い開かずの間を閉鎖。アイラムをそこに住まわせる 1920年 6月上旬 アイラムを次第にもう一人の我が子のように思い始めたガーナードが、新しい実験用のホムンクルスの作成をアイラムに提案する。既に延命のために自分のホムンクルス製造を開始していたアイラムはこれにより自分の思惑が露見するのではと危機感を募らせる。 1920年 6月12日 雨 アイラム、イーストエンドのクラウバー墓地にホムンクルスの残骸3体を埋めようとする。しかし途中で墓守の巡回に気が付き放置して逃走 1920年 6月16日 雨 アイラム、テムズ川に残骸を捨てようと、クラウバー墓地で盗んだ運搬車にホムンクルスの残骸2体を乗せる。途中マンセールストリートで運搬車から死骸が横転、そのまま逃走。これをPC等が目撃する(夕刻17〜18時) 帰宅の途中アイラムはガーナードに見つかり、問いつめられる。逆上してガーナードに暴行を加えるもこの時雨が上がり湿度が下がっていたため双方負傷してしまう。この事件はグローバー家の直前で発生する。ガーナードは瀕死の重傷を負うも帰宅しマリアにより病院へと運ばれる。既に雨は止んでいたので、アイラムは干からび老婆のような姿になり、近隣の廃屋へとようやく隠れる ガーナード事件の聞き込みに来た刑事(エリック)に老婆(アイラム)は「ガーナードは路地から歩いて、発見場所で倒れ込んだ。」と証言する。この偽証は事件現場が廃屋(アイラムの居場所)から離れた場所で発生したことにしたい心理から来ている。 1920年 6月17日 晴れ ゴシップ紙(誌名未定)に一連の事件が掲載。「錬金術殺人事件」と命名される。 「白きアヴァロン」又は心霊調査機関からマリア=グローバーの依頼 病院にてマリア、ガーナードに会う。 ◎警察関連のコネ(エリック)から老婆(アイラム)からの聞き込み証言を聞く グローバー家での捜索 市街での聞き込み・調査(ガストール貴金属店)など。その間に乞食の老婆(アイラム)との遭遇 |
| ●事件への導入 | ||||
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.0 ゲームを始める前に 今回のシナリオではPC全員がロンドンの心霊サークル「白きアヴァロン」か心霊調査機関に属しているゴーストハンターでなければなりません。また、ゴーストハンター達は互いに交流があり、少なくともホワイトチャペルアートギャラリーに絵画展を見に行くくらい親しい間柄であるとしてください。 .1 6月16日 17:35 ホワイトチャペルロード ゴーストハンター達はホワイトチャペルアートギャラリーで開催されていた友人の絵画展に出席し、今は帰路に就くところです。絵画展の内容はPC達の好みに合わせて下さい。怪奇画やトリックアートから前衛芸術までなんでも構いません。慈善団体が主催している募金活動の一環で、子供達が描いた絵画を展示しているということにしてもいいでしょう。 ここでPLにハンドアウト1を渡して下さい。
このようなこともあったことで、PC達は帰路を共にしています。時間は夕刻の5時半頃。昼頃から雨が降り始め、日暮れ前だというのに辺りは薄暗くなっています。ガスライトの明かりが足下を辛うじて照らしていますが、明かりに慣れた目は闇をより一層際だたせます。降りしきる雨のせいでで通りは人気が疎らです。 ここではPC達にはホワイトチャペル界隈からテムズ川方面へと向かってもらうと、次のイベントが発生する必然性が生まれます。GMはPCにまだ時間があるのだからロンドン塔やタワーブリッジへ観光にでも行かないかと誘って下さい。 PC達がホワイトチャペルロードを歩いているときです。雨の降りしきる中、台車を引いた雨具姿の人影が勢い良く駆けてPC達を追い抜いていきます。雨具の人物は俯きながら人目を憚るように台車を引き、マンセルストリートへと進むようです。台車にはぼろぼろの布きれがかけられていて何を積んでいるかはわかりません。PC達が台車に注目するか<知覚力>ロールに成功すると、その台車のプレートに「クラウバー墓地」と記されていることに気が付きます。PC達が何らかのアクションを起こす前に、次のイベントを発生させて下さい。 「ロンドンのストリートは石畳で舗装されているが、それほど整然としたものではなく所々で凹凸が激しい。そこへ猛然とした勢いで台車を引けば、当然左右に激しく揺れ横転してしまうことだろう。暴れ馬のように跳ね上がった台車から積んであった大きなものがかけ布を引きずって路面へと落ちる。何かが潰れたような音がして布にくるまったそれは君たちの方へと転がってきた。最後の一転がりで布を剥ぎ取られたものは…、全身が炭化した人間の死体であった。」 恐怖判定を行って下さい! 横転した台車にももう一体の焼死体があります。雨具の人影は後ろの光景を確認することもなく雨降るホワイトチャペルに消え去ります。台車が横転したのは10m程離れた場所であり、台車等の障害物もあるので全速力で逃走する人物に追いつくことはできません。恐怖判定に成功したPCがこの人物を追跡すると宣言した場合<追跡>ロールが必要です。この判定に成功すると、人影を見失った場所で下水道のマンホールの蓋がずれていることに気が付きます。PCは下水道の中に入ろうとするかもしれませんが、この雨で増水している下水道内は足跡などの痕跡に乏しく、追跡は不可能だと言ってください。勿論とてつもなく汚いです。 PC達は警察を呼ぶ前に死体を調べようとするかもしれません。PCが気が付かないようならGMからそれとなく奨めて下さい。 まず直ぐに気が付くことはどちらの死体からも発される化学薬品臭です。<科学>又は<薬学>ロールに成功すると、通常科学の実験や研究などで使われる薬品の匂いではないことがわかります。<神秘学>又は<魔術>ロールに成功すると、これは「錬金術」の研究や実験などで使用される薬品ではないかと推測できます。 錬金術とは、全ての物質は本質的には同等のものであり適切な方法を持ってすれば物質変化を行うことができるという物質観です。この物質変化を利用して卑金属を貴金属に変換するために錬金術と呼ばれました。古代や中世に於いて錬金術は医術や科学と同様に扱われ近代科学発達の先駆けとなりました。しかし現代(ゲーム世界)に於いて錬金術はその魔術的性格を高め魔術の一形態として扱われています。 死体を詳しく調べようとするならば次のことが判明します。 <生物学>ロールに成功すれば焼けこげていて詳しくはわかりませんが、二つの死体は非常に似通った体格をしていることがわかります。性別は女性で骨格から年齢はどちらも十代後半から二十代前半であると推察できます。台車から落ちた方の死体は衝撃で頭が潰れていますが、よく観察するとはじめから頭部に損傷があったようで内容物が垣間見えます。 死体を調べているキャラクターは<知覚力>か<手がかり>ロールに成功すると、台車に残っている死体の胸当たりから直径12〜3mm、長さ3cm程の金属製の突起物が生えていることに気が付きます。後の司法解剖でわかりますが、これは研究器材を固定するためのスタンドです。アイラムは非常に散らかっていた研究室でホムンクルスの製作をしていたため、素体に異物が混入しこのように生えたような形になってしまったのです。 この奇妙な状況を見たPC達は<生物学>又は<医療手当>ロールを行う必要があります。成功すると、このような器材を胸に埋め込むために手術をしたような形跡がいっさい無いことに気が付きます。傷一つなく完全に皮膚と金属が癒着しているのです。まるで、生まれた時からこの金属片が生えていたかのようです。常識的な方法ではではこのような芸当は不可能です! この奇妙な事実を知ってしまったPCは恐怖判定(+30%)を行って下さい! 死体を前にしてミスティックのキャラクターは<セアンス>を試みようとするかもしれません。しかし、このような試みは自動的に失敗します。これらのホムンクルスの死体には始から自我(=アストラル体)が存在していなかった為に、霊体として残るものがありません。しかしそのことを悟られないためにも、殺害現場が特定できないことや(霊は息絶えた地に束縛されるものです)身元が判明しないことを建前の理由にあげてください。 また、話題となっている事件ですのでジャーナリストPCは死体を写真に収めようとするかもしれません。この試みは自動的に成功します。こうして撮した写真を新聞社などに持ち込めば全部含めて200$ほどで購入することでしょう。 PC達の調査があらかた終了した時点で、PC又は他の通行人が呼んだ警察官が駆け付けてきます。気が付くと雨は上がり、どんよりとした雨雲の代わりに夜の闇が訪れようとしています。PC達の中に警察官に人脈があれば、エリック=ゴールドバーグがここに現れると良いでしょう。事件の第一発見者であるPC達は事情聴取のため、今回の事件の捜査本部が設置されているホワイトチャペルロード警察署へと連れて行かれることになります。 .2 ホワイトチャペルロード警察署 PC達は事情聴取の対象となりますが、他にもいた通行人の証言により直ぐに容疑者から外されます。犯人の姿を見たほとんど唯一の目撃者であるPC達から何とか証言を得ようと警察は根気よく聞き込みますが、ほとんど無駄でしょう。PC達は早々に解放されることになります。 ここでPC達は事件の調査状況をエリックに訪ねるかもしれません。エリックは一応警察官ですのでそれ相応のロールプレイをすれば質問に答えてくれるでしょう。 エリックが知っている情報は次の通りです。 エリックの捜査報告 ・死体は全員女性で、身長体重共に似通っている。 ・死体は驚くべきことに手術跡や何ら傷も残っていないのに心臓が摘出されていて、さらに驚くべきことにそのうち一体からは心臓の代わりに少量の金が発見された。 ・死体は全て死亡した後に火を放たれている。 ・証言によると死体が埋められたと思われるのは12日の深夜である。 ・クラウバー墓地からは台車が一台紛失している。 ・三体の死体の状況 1体目:頭蓋部に破損あり。心臓無し。右腕と右脚が欠落。 2体目:心臓無し、代わりに少量の金を発見。両脚が欠損。 3体目:心臓、内臓の一部がなし(当然手術痕も見あたらず)比較的火傷の被害は少ない。 ・死亡時期は損傷が激しく特定できないが、最長で半年、最短でここ一週間と推察。各々の死亡時期は一ヶ月単位で異なると思われる。 さらにPCが死体を検分したいと申し出れば、「見ない方がいいぞ。」と釘を指しながらエリックは死体安置室へ案内します。 死体安置室では他の死体に混じって、解剖台の上に乗せられた三体の焼死体があります。PC達が死体を調べるのであれば<手がかり>ロールを行って下さい。これに成功すると三番目の損傷の少ない死体の首の左の付け根当たりに黒子のようなものがあるのに気が付きます。その他には調査報告以上のことは判明しません。 PC達がひとしきり警察署での聞き込み等を終えると、エリックの元に同僚の刑事が駆け寄ります。彼はエリックに向かって「例の錬金術師が刺されたぞ!」と叫びます。これにエリックは驚愕の表情を浮かべ「事件が起こったので行かなければならない。」とPCに告げて同僚のもとへ去っていきます。これにPC達が同行しようとするかもしれませんが、他の警察官の手前エリックはそれを拒み、「後で詳しい話をするから。」と約束して去っていきます。人脈のエリックがいなければ、PC達はこの場で調査を続けることは難しいでしょう。自宅に帰ることを奨めて下さい。 .3 独自調査 この後PC達は独自に調査を行うかもしれません。しかしこの時点では新たな新展開は起きず、無為に時間を費やすことになります。ですので、ここではPC達が警察署で聞き逃した手がかりを補完するような情報を提供すると有効に時間を使えるかもしれません。 具体的な情報提供の場としては新聞社やクラウバー墓地の墓守、そして図書館などでしょうか。最も与えにくいのが黒子の手がかり(PC達は死体をじかに見ようとはしないかもしれません)ですので新聞記者や墓守が偶然この手がかりを知っていたことにして(身元割り出しの重要な証拠になるとして)、PCに伝えるのは有効でしょう。 このようにPC達が自主的に行動する時間はシナリオ中には必要なものです。このような時間でPL達は事件の真相について様々な想像を巡らして、自身のテンションを高めていくものです。 .4 17日早朝 白きアヴァロン 又は心霊調査機関 翌日PCたちは「白きアヴァロン」又は心霊調査機関の代表をしているフレスター子爵に「頼み事がある」と呼ばれます。場所は団体の所有している建物がいいでしょう。「白きアヴァロン」ならばロンドン大学近隣の建物です。 PC達が到着するとフレスター子爵は美しいブロンドの髪を上品な髪留めで留めた令嬢を伴っています。少女の表情はどことなく呆然としていて憔悴しているようです。子爵は沈痛そうな面もちでこの新聞を読んだか? と尋ねてきます。
PC達がこの記事を読み終えた後で、子爵は重々しく口を開きます。 「そこに書かれている錬金術師とはガーナード=グローバー。こちらのマリアさんのお父上だ。」 ガーナード=グローバーという名前にPC達は憶えがあります。ガーナードは以前ゴーストハンターとして活躍していたディレッタントであり、引退した現在でもゴーストハンター達の良い相談役として親身にしてくれた人物です。また、子爵の親友でもあります。 子爵に促されたマリアはすがりつくようにPC達を見つめ「父の汚名を晴らして下さい。」と懇願します。そして直ぐにコンコンと咳をつまらせせき込み、慌てた様子で錠剤を何粒か飲み干します。 (実のところこのイベントはマリアに疑いの目を向けさせるためのミスディレクションです。「怪しげな薬を飲んでいる。」という情報は今後のホムンクルス関連の情報を容易に結びつき、彼女に疑念の目を向かわせるでしょう。) マリアの容態を見かねた子爵はPCたちに状況を説明します。 昨日(16日)の18時頃、マリアが仕事場の託児所からの帰宅中、自宅の玄関先で何か物音がするのに気が付き、急ぎ駆け寄ってみると父親のグローバーが玄関先で腹部から血を流して倒れていたというのです(この時雨が降っていたかは聞かれない限り答えません。雨は止んでいました)。直ぐに人を呼んで病院に運び、一命だけは取り留めたのですが未だに危篤状態で意識は戻っていません。その直後に警察が訪ねてきて、ガーナードに容疑がかかっているという話を知らされたのです。 ここで子爵はこの警察からの容疑を偏見と先入観から来る不当な差別であると決めつけ「こんなものは心霊現象に理解のないものの捏造にすぎん! これでは魔女狩りと同じではないか。」と憤りを露わにします。そしてPCたちに事件の真相を突き止め、ガーナードの無実を明らかにして欲しいと頼みます。 現金なPCはここで報酬を要求するかもしれません。ゴーストハンター世界は決してお金や物のために幽霊退治をするわけではありません(ルールブック153ページより)。しかし、キャラクター作成時に所持金を使い果たしているPCもいるでしょうから、子爵は必要経費として200$を(パーティー全員分として)気前よく手渡します。 それでも尚報酬を求めるPCがいた場合、マリアは自分の髪留めに手を伸ばして「これは早くに亡くなった母の形見の髪留めですが、それなりに高価な物と聞いております。これを売って皆様のお礼と致します。」と束ねていた長い髪をサラサラとなびかせながら髪留めをPC達の方へと差し出します。髪留めはそれなりに高価な物に見えますが、20$を越えることはないでしょう。少女の思い出の品を奪ってまではした金を得ようとするPCはそれほどいないでしょうから、報酬の件はこれで収まらせて下さい。 また、上記のイベントはマリアの髪留めを印象づける良い機会となります。今後の伏線として思いあまったマリアがPCたちが何も言う前に口走ってしまう、というのでも良いでしょう。 PC達が真相究明を受け合うならば、マリアは目に涙を溜め感謝の言葉を述べます。彼女は昨日の事件が起こってから病院に通い詰めだったので、一度自宅へ戻り衣類など必要品をもって看病に行くつもりです。そこで子爵はPC達に「マリアさんを送っていくついでに、事件現場を見てはどうかね。」とマリアと共にグローバー家を訪れることを提案します。 以上で本シナリオの導入パートは終了しました。これ以降は展開次第では即座に結末へと移行することさえも考えられます。また、PC達はより予想もつかないような行動に出るかもしれません。例えば前日の約束を果たすためエリックの元を訪れると宣言するかもしれません。そういった場合はGMは今後のシナリオの大まかな流れを参考に臨機応変に対応して下さい。 コンベンションなどではこの時点で休憩を入れることを提案します。ここまで矢継ぎ早にイベントが発生していますので、PL達の頭をリフレッシュする意味合いとこれから始まる本編(本格的調査)への心構えを持っていただくためです。 |
| ●本編 | ||||
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.5 ホワイトチャペル地域 グローバー家周辺 ハンバニーストリート路上 PC達がグローバー家までやってくると、ストリートに面した廃屋と思しき建物の前でエリック=ゴールドバーグが手帳にメモしている光景に出くわします。彼はPCたちに気が付くと、ガーナード事件の聞き込みをしている最中であることを話します。恐らくPC達はエリックの掴んでいる情報を聞き出そうとするでしょう。マリアは事件の関係者ですので、彼女がいる前では捜査状況を話すことはできませんが、別の場所でしたら次のことを教えてくれます。これらの情報はPCからの質問の答えとして与えて下さい。 「さっきの廃屋にいたおばあちゃんの話によると、あの日の夕刻頃よたよたとした足取りの男がグローバー家の方へと歩いていったらしいんだ。16日は雨が降っていたから人通りが少ないし、その後騒がしくなったと言うから間違いない。」 「これは推測だけど、ガーナードはハンバニーストリートに入った時点では負傷していたのだろうね。何者かに刺されたか、自分で刺したかはわからないけど。」 「ガーナードを刺した刃物はまだ見つかってない。刃渡り15cm程のナイフだという話だよ。」 「さっきのしわくちゃの婆さん? きっとホームレスだろう。足が悪いとかで出歩くのがおっくうだそうだ。名前は確か・・・、アイラ。だったけな?」 「上層部はガーナードを疑っているんだ。勿論証拠なんてないよ。マスコミが今回の事件をあんな風に名付けて、彼が自称錬金術師だったからだろう。それに市民が踊らされて、おかしな密告電話があったんだよ。」 「捜査は行き詰まっていて、本部はグローバーさん以外に容疑者と思わしき人物を特定できていないんだ。勿論彼にだって明確な根拠があって容疑をかけているわけじゃない。マスコミの安直なネーミングに引っかけているだけさ。」 .6 廃屋の老婆 PC達は廃屋に興味を持つかもしれません。廃屋を覗くと窓ガラスの割れた室内にソファーの上に横たわる老婆の姿を確認することができます。老婆は眠っているのか、毛布代わりの肩掛けにくるまっています。 PC達にはまだわからないことですが彼女がアイラムです。彼女はテムズ川に死体を放棄しようと運んでいる途中台車をひっくり返してしまい、それをPC達に目撃されました。その後下水道をつたってこの廃屋まで逃れました。本来ならば下水道から直接グローバー家の「開かずの間」まで繋がっていますが、雨で増水した下水道は危険であったため、死体の借り置き場としていたこの廃屋から出て、路地からグローバー家に戻ったのです。しかし、「開かずの間」にいないことを確認しアイラムを捜していたガーナードに家の前で見つかってしまいます。ガーナードに問いつめられたアイラムはもののはずみで護身用に所持していたナイフでガーナードを刺してしまいます。恐慌状態に陥り運悪く雨が止んだ為に湿度が下がり行動ができなくなったのが重なり、アイラムはどうにかこの廃屋に辿り着くことしかできませんでした。 現在の彼女は身体がからからに乾燥して、肉体的行動を行うことが困難です。一見するとそのしわしわの肌は老化によるものに思えますが、実際は複製した肉体がちょっとした乾燥にも耐えられず皺を作っているのです(老化で皮膚に皺ができるのは、肌が水分を保持できないからだとされています。アイラムが老婆のように見えるのはこのためです)。彼女は肩掛けの下にずぶ濡れの衣服を着て、水分を得ていますので辛うじて生存できています。 現時点でのアイラムはガーナードを刺してしまったことへの悔恨と、そしてある種狂気的な願望が入り交じっています。それはガーナードの本当の娘となること、つまりマリアと入れ替わることです。ガーナードを刺した罪は決して許されることは無いと考え、その罪を帳消しにする方法としてマリアの肉体を簡易版の<精神交換>とでも言うべき呪文で奪い、ガーナードの本当の娘になると計画しています。これは父親的存在への憧れと、アイラムの生に対する執着心から生み出された熱病のような狂気です。この狂気の出発点は家族という概念を二年の短い間でしか感じることのできなかった、アイラムの誤解によるところが大きいです。彼女は父親という存在を得るために狂気に陥りましたが、それは既に彼女に与えられていたのです。ガーナードの部屋の棚の奧に・・・。 アイラムは肉体は自由に活動を行うことはできませんが、<幽体離脱>の呪文により精神を自由に飛翔させることができます。アイラムはこれにより自分の周囲で起きていることを自在に知覚することができます。これはもっぱら警察の情報収集が何処まで進んでいるかや、グローバー家での出来事(特にPC達の行動)に使われます。 屋敷を捜索中にPCの誰かは<霊体感知>や<魔力感知>を行うかもしれません。その場合幽体化しているアイラムを感知してしまうことでしょう。アイラムはその場合いったんPCの前から離れ、再び機会を見つけ近寄ってきます。 次に雨が降った時、自由を得たアイラムは下水道から研究室へ戻り、そこで最後のホムンクルスの末路を見て完全に発狂します。その後アイラムは病院へと向かいマリアと<精神交換>を行うつもりです。 .7 ホワイトチャペル地域 グローバー家 グローバー家にはマリアと共にしか入ることはできません(当然です)。玄関の直前、路地に面したところには未だガーナードのものと思しき血痕が残っています。マリアはそれを見ると瞳に涙を溜め「ここもお掃除しなくちゃね。」と涙声で言います。 この場面に於いて玄関先の血痕周辺を調べると宣言したPCは<手がかり>ロールを行って下さい。成功すると血痕が集中しているのは玄関先周辺だけであり、他の場所にはいっさい血の跡が残っていないことがわかります。ガーナードが負傷して歩いてきたのならばこれは不自然なことです。それよりもこの場所で刺傷されたと考える方が理にかなっているといえるでしょう。 しかしこの情報を提示するといきなり結末に到達します。そこで少々ずるいやり方ですが、プレイヤーにグローバー家のマップを渡しましょう。これでプレイヤーの意識は屋敷内に向くはずです。 家の中にはいるとマリアはガーナードの生活用品や必需品を揃えるため「ガーナードの部屋」に入ります。ここでPC達に「グローバー家の見取り図」を渡して下さい。きっとPC達は屋敷内の捜査の許可をマリアに求めるでしょう(プレイヤーというものはマップを提示されると調査ポイントであると認識するものです)。彼女は「事件の解決のためでしたら」と快く応じます。 PC達は特に「研究室」・「開かずの間」についてマリアに質問するかもしれません。これに対してマリアは「研究室は危険なものがあるから、私の出入りは堅く禁じられています。」と、「開かずの間」については「ちょうど二年前くらいから、父が鍵を無くしてしまって入ることはできません。それ以前は倉庫として使っていました。」と答えます。 PC達が一階の調査を始めた後、マリアは二階に上がって「グローバーの書斎」で支度の途中に崩れるように寝込んでしまいます。これは徹夜の看護の疲れが緊張の途切れた今となって出たものですが、PCの猜疑心を刺激するものとしては最適でしょう。 PCが彼女を起こすか、又はベッドまで運ぼうとすると、マリアの首の左の付け根に黒子があるのを見つけます。焼死体のものと同じ場所ですが、PCから聞かれない限り教える必要はありません。 グローバー家の屋敷見取り図 一階 ┌□─────┬───────────┬─────┐
│ 勝手口 │食堂 ○ ○ │バス │
├┐ 台所 │ ┌─────┐ │トイレ │
││ □ └─────┘ │ │
├┘ │ ○ ○ │ │
├─────□┴────□──────┴───□─┤
│↓←←階段 │
│→→→二階へ │
├────□┐ ┌──□───────┬──□──┤
│ │ │ │ 開かずの │
│ 応接間 │ │ 研究室 │ 間 │
│ │ │ │ │
│ │ │ │ │
└─────┴□┴──────────┴─────┘
研究室・開かずの間 拡大図
┌───□────────────┬───□───┐
├┐絵 ┌┤▲ ┌─┐│
├┘画 研究テーブル 器││* │ ││
│ ┌─────┐ 具││ │ ││
│ │ ○┳△■ │ 棚││ └─┘│
│ └─────┘ └┤┌─┐┌──┐│
└────────────────┴┴─┴┴──┴┘
・絵画この場所を対象として捜索すると宣言するか、<手がかり>又は<知覚>ロールに成功すると、絵画を頻繁に動かした形跡があることに気が付く。絵画は取り外し可能で、裏には錬金術の研究のために使用する少量の金塊が保管されている金庫がある。しかし、この場所はガーナードが作成した「人工精霊」によって守られていて、「イライザ」(ガーナードの亡妻の名前)と唱えながら絵画を外さないと壁の隙間から人工精霊が白い泥水のように溢れ出し、手近なものを攻撃する。当然ながら恐怖判定を行うこと。人工精霊の正体に気が付くには<神秘学>か<魔術>スキルに成功する必要がある。 この人工精霊を止めるには「イライザ」と唱えるか、この部屋から立ち去るしかない。<分析力>か<運>ロールに成功すると、人工精霊が金庫の周囲から離れようとしないことに気が付く。 金庫を開くには<鍵開け>スキルに成功する必要があり、中にはそれなりの価値の金塊と貴重な薬品の類などを発見できる。また、<回復>と<魔力付与>の魔導書を見つけることができます。 『突然、堅牢に組まれた石壁の間から染み出すように乳白色の液体が溢れ出した。重力に従い床へと垂れるはずのその物体はそれに反して水たまりのように壁を覆い隠すと、信じられないことに意志あるが如く形を取り始めた。何らかの見えない手によって白い粘土が形作られていく様は、悪意ある神が人の愚かさを嘲笑しているかのようだ。その歪な物体はまさしく人間の姿をしていた!』 人工精霊 モンスターレベル:5 能力値 体力:12 敏捷:2 分析:1 知覚:4 意志:3 魅力:− 運:5 攻撃:85%(触手) ダメージ:1D10+7 防御点:なし HP:61 MP:24 抵抗力:40% 特殊能力:なし ・研究テーブル 木製のしっかりとしたテーブルの上には三角フラスコや蒸留器、試験管などが散乱している。ものが溢れかえっているテーブルの上を捜索する場合は<運動>+30%か<敏捷力>ロールに成功する必要がある。この判定に失敗するとフラスコの中身をひっくり返してしまい(フラスコには「混ぜるな危険!」と書かれている)テーブルの上に垂れていた別の溶液に混入してしまう! 液体は泡を立てながら異臭を発し、このガスを吸ったものは1D10点のダメージを受ける。<体力>ロールに成功すれば息を止めて部屋から脱出することができる。このガスは5分間程度部屋に籠もり、その後拡散する。 <鑑定>・<魔術>スキルに成功すれば、一般的な錬金術の装置であり、治療や体力増強を目的とした研究を行っていたと推察できる。また、テーブルを捜索すると宣言すれば次のような紙切れを発見することができる。
・器具棚 様々な薬品や実験器具などが置かれている棚です。<鑑定>又は<魔術>スキルに成功するとHP回復薬(1D6+5)とMP回復薬(1D6+5)を二本ずつ発見できます。 この棚を対象とした捜索を行うと宣言した場合、<手がかり>ロールに成功することで巧妙に隠された隣の「開かずの間」へと通じる穴を発見できます。 開かずの間(アイラムの部屋) じめじめとした湿気の多い殺風景な部屋です。この湿気は簡単な加湿器によって生み出され、念入りに密封されたこの部屋に漂っています。寝台一つがポツンとあります。 また、寝台側の壁にはカレンダーが貼ってあります。カレンダーは今日の日付に赤で丸が着けられています。 ・加湿器 ストーブの上に金属製のタンクが載せてある程度のものです。<手がかり>ロールに成功すると頻繁に使用していたことがわかるでしょう。 ・棚 実験器具やビーカーなどの備品がしまってあります。よく整理されており埃の積もっているところからさほど必要のないものをしまってあるようです。 小さい方の棚を動かすと地下下水道へと続く階段を見つけることができます。これには棚を対象とした捜索宣言に加え<手がかり>ロールに成功する必要があります。 二階 ┌───────┬────────┬───────┐
│ 客間 │ ガーナードの ├┐ ┌──┐ ┌┤
│ │ 部屋 ││ └──┘ ││
│ │ ││ ││
│ │ ││ ┌──┐ ││
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│→→→一階へ │ │
│↑←←階段 □ 書庫 │
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│ 物置 │ マリアの ││ └──┘ ││
│ │ 部屋 ││ ││
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│ │ ├┘ └──┘ └┤
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書庫錬金術関連・魔術関連の厖大な蔵書です。ただ漠然と<資料検索>を試みるならば、2時間ほどかけてからスキル判定に成功する必要があります。ホムンクルスについて調べるのならば検索時間は30分間で済み<資料検索>+30%ロールとなります。スキル判定に失敗しても、更に同じだけ検索時間をかければ再び<資料検索>ロールを行うことができます。 判定に成功すれば、ホムンクルス関連の書物が数冊抜けている(全五巻中三巻と四巻がないなど)ことに気が付きます。ここでホムンクルス制作に関する詳細な文書を入手することができます。
この書物を読んだPCは<分析力>ロールを行って下さい。成功すると事件があった日にはちょうど雨が降っていることに気が付きます。 また、書棚には<火炎>の魔導書があります。<資料検索>ロールに成功すれば見つけることができます。 ガーナードの部屋 良く整理された室内で、書斎と寝室を兼ねています。デスクの上には錬金術関連の書物に混じって若かりしガーナードとマリアと思しき幼い少女、そしてグローバー婦人と思わしき女性を写した幸せそうな写真が立ててあります。写真立てから外して裏を見ると「イライザ、マリアと共に」と記されてあります。 デスクを捜索すると宣言した場合<手がかり>ロールを行って下さい。成功すると一番上の引き出しに様々な文具などに埋もれている古い鍵を見つけることができます。これは「開かずの間」の鍵です。 しっかりとした造りの棚には引き戸が付いてあり、その中にはプレゼント用の包装紙に包まれた髪飾りが箱に入っています。PLに「マリアに合いそうですか?」と尋ねられたら、非常によく似合うと答えて下さい。 実はこの髪飾りはアイラムの誕生日祝いのプレゼントです。マリアは同様のものを所持しており、それを参考にガーナードが選んだのです。因みにマリアの誕生日は4月12日でこの時ガーナードは上品な肩掛けをプレゼントしました。 PC達が屋敷を一通り調べ終わると、マリアは支度を終えます。彼女はPC達に真相の究明を託し教会でシスターに事情を説明した後に病院へと向かいます。 .8 路上にて PC達がガーナード家を後にすると、酔った男に絡まれているエリックを見かけます。 エリックと男の会話は次の通りです。 「エリックよー。どうしてあの胡散臭い錬金術師をとっとと捕まえないんだー。あんな薄気味悪いやつが近くに住んでると思うだけで、こちとらまっぴらだ!」 「バンブラさん、警察はそんないい加減なことじゃ動きませんよ。」 「何言ってんだ! お前、親の敵をとりたくないのか? あの時の火事だってあいつの仕業に決まってら!」 ここでエリックは表情を変えバンブラを睨み付けます(親の死に様についてとやかく言われたら誰だってそうなるでしょう)。そして物静かな様子を豹変させて、一転挑みかかるように態度に出ます。 「ともかく! そんな憶測だけの話には付き合っていられません。これで失礼しますよ。」 そのままエリックはその場を離れます。 PC達は酔っ払いの男(バンブラ)に接触するかもしれません。彼とPCは初対面ですので、どの様な印象を持つかどうかは<魅力>ロールにかかっています。その際<外見>や<信用>の有無を考慮に入れて下さい。彼はそれほど重要なNPCではありませんでの(また、PCとの関係も特にはありません)、通常の会話(ロールプレイ)と行為判定を併用した交渉をする必要があります。但し、バンブラは酒を飲んで気が大きくなっていますので、彼から情報を聞き出すのはそれほど困難ではないでしょう。 バンブラは15年前にこの界隈で起こった大火事について、多少の偏見を交えて語ります。その火事は数軒の民家を全焼させ、その中にはエリックの家族も入っていました。バンブラは個人的な妬みと先入観から、当時錬金術の研究を始めていたガーナードの実験の失敗で火事になったと吹聴してます。ところがこれと矛盾することに当時ガーナードの屋敷は被害にあっていません。実際はただの火の不始末で、炎に包まれた屋内に取り残されたエリックを救ったのは、ゴーストハンターとして活躍中だったガーナードなのです。しかし当然、バンブラはこのことについて言及しません。 見ての通り、これは大規模なミスディレクションです。しかし、当時の火事を調べること(図書館などで)によりエリックが真剣に今回の事件解決に邁進している理由が判明するでしょう。 .9 ガストール貴金属店 ガストール貴金属店はシティのニューブリッジストリートにある店です。アクセサリーのリペアなども行っていて、金の売り買いもしています。マリアはこの店のことは知りません。近所でアイラムが買い物をすればマリアとの違いに気付かれてしまうと考えたガーナードが、敢えて遠くの店を選んだのです(こちらの店の方が安く調達できるというメリットもあります)。ガストール貴金属店のことは新聞社などで調べれば直ぐにわかります。 PC達が訪れて、ガーナードの名前を出せば直ぐに話は通じます。彼はここで研究用の金を購入していました(他より質は落ちますが多少安く買えるので)。研究の手伝いをしていたアイラムも使いとしてここに来ていました。店主のサンダーズは「ブロンドの美しい髪を腰まで垂らした娘さんだろ。いつも贔屓にしてもらっているよ。」と話します。ここで長い髪を垂らしていたことを強調して下さい。マリアは髪の毛をまとめて後ろでアップにしています。PCが指摘すれば、いつも雨の降る日に限って訪れていることを思い出します。 また、サンダースは16日の17時半頃にガーナードが店を訪れたことを思い出します。ガーナードはひどく慌てていて、「娘は今日ここに来たか?」などを尋ねました。店主が「来ていない。」と答えるとガーナードは思い詰めたような顔で店を後にしました。 この時ガーナードはアイラムを捜していました。ここ最近の彼女の様子を不審に思っていたのです。微かな希望を胸にこの店を訪れ、疑惑を確信に代えました。 PCが店を出る前にサンダースは次の言葉で問題提起します。 「グローバーさんが刺された話は聞いているよ。考えるにここを出た直後じゃないかと思うんだよ。全くひどい目にあったもんだよな。どこいって誰に刺されたんだろね。」 これはガーナードが刺された現場を注目させるポイントになります。PCたちはこれでも気が付かないかもしれませんが、その場合はシナリオの進展とも考えてこの場で休憩を入れてみるのもいいでしょう。PL同士が話し合うばを設けても構いません。 .10 ロンドン病院 グローバー家から徒歩数分の所にロンドン病院はあります。ロンドン病院は診療棟・研究棟・入院患者棟の三つの建物からなる近代的総合病院です。入院患者棟は中でも最も高い七階建てで、ガーナードの病室は5階の集中治療室です。病室の前には警官が立ち警護をしています。 病室ではマリアが看護しています。担当医にガーナードの様子を聞くと、腹部への刺し傷は内臓にまで達しており失血が激しく重体であると説明します。また、今日明日が峠だろうとも話します。 PC達はここでガーナードの傷の具合について調べようとするかもしれません。その場合方法は二つあります。まず一つは実際にガーナードの傷を診察してみることです。絶対安静状態のガーナードを詳しく調べることはできませんので、様々な角度から見た後に<医療手当>ロールをする必要があります。ガーナードの両腕には防御創という争ったときにできる傷が数カ所見受けられます。また、腹部の傷は内臓器官にまで達するものと考えられ、この傷で平然と行動を行うことは困難であると推測できます。 ガーナードの状況を知るためのもう一つの方法は、担当医に直接聞き出すことです。しかし、これは刑事事件のため容易にそれを行うことはできません。人脈に医師がいる場合はそのコネをつたって聞き出すか、その人脈がこの病院に勤めていることにするのもいいでしょう。 NPCとの交渉には外見・社会的信用・そして危険度が関係します(ルールブック87ページ)。この状況では医師は守秘義務があります。しかし、医学的意見を聞くためになどと言い逃れはいくらでも思い付くでしょう(PCは建前上事件の関係者ではありませんので、このような言い訳が通じるのです)。危険度による修正はありません。また人脈キャラクターならば+30%修正も忘れないで下さい。 この<交渉>ロールに成功すれば、<医療手当>に成功したときと同様の情報が得られます。 PC達が聞き込みなどを終え病室に戻ってくると、そこにはフレスター子爵が訪れています。子爵はマリアに次のような話をしています。 「・・・そうだマリア。お父さんの研究室を私に見せてもらえないだろうか。以前にガーナードから負傷に良く効く薬が完成した聞いてね。私もガーナードと一緒に錬金術の研究をしていたこともあるから、彼を癒すことのできる薬を作り出せるかもしれない。どうだろうか。研究室を見せてくれないかね。」 「構いませんけど、研究室には危険なものもあると父から聞いております。大丈夫でしょうか?」 「なになに、私なら大丈夫だよ。それより今はお父さんの心配をしてあげなさい。」 以上全ての行動は子爵の善意から発せられたものですが、今のPC達には誰しもが怪しく見えるはずです。子爵はマリアから(又は所持しているPCなどから)屋敷の鍵を受け取ると病院を立ち去ります。これにPCが同行すると提案すれば、子爵は捜査を優先しなさいと断ります。しかし、適当な理由を付けるならば快諾するでしょう。 子爵はPC達が研究室で「ハンドアウト 3」を見つけていない場合、それを発見しPC達に知らせるでしょう。プレイ時間が切迫しているようでしたら、子爵はガストール貴金属店の場所を知っていることにしても構いません。 ■シナリオが停滞したときのために 推理もののシナリオの常として、このシナリオも情報収集・提供の拙さやPL間の伝達不足によりセッションが停滞する可能性があります。PLが行き詰まりを感じているようでしたら、次のようなイベントを起こしてヒントを与えて下さい。 1)PCがグローバー家にいるようでしたらマリアに玄関前の血溜まりを掃除してくれと頼まれます。 2)グローバー家周辺で聞き込みをしているエリックが不思議そうにしています。彼はガーナードが刺された現場を捜しています。老婆の証言を元にすると人通りの少なくないハンバニーストリート周辺で刺されたことになるのですが、その割に他の目撃者を捜すことができないので困っています。 |
| ●結末 | ||||
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.11 雨が降る 事件を捜査する中でPC達は遅かれ早かれ廃屋の老婆が虚偽の証言をしていることに気が付くでしょう。勘のいいプレイヤーならば既にマリアの複製として創造されたホムンクルス“アイラム”であることにも気が付いているかもしれません。PCがこの事実に辿り着いたのならば遂にクライマックスとなります。 まず、PC達が廃屋に向かおうとするとロンドン特有の通り雨が降り始めます。これによりアイラムの行動を制限していたものは無くなりました。彼女は増水する前に地下下水道へと入り、秘密の研究室へと急ぎます。この事件が起こる前に作成していたホムンクルスの様子を見に行ったのです。しかしこのホムンクルスも失敗作でした。失意の彼女は完全に発狂し、最後の計画をやり遂げようとします。それはマリアの肉体を簡易版の<精神交換>の呪文で奪ってしまおうという試みです。PC達が追跡している場合、彼女はホムンクルスの死骸に<死体使役>の呪文をかけて、追っ手の足止めに利用します。その後彼女は下水道を通りグローバー家の「開かずの間」へ赴き、支度をした後病院に向かいます(<幽体離脱>により事前に彼女はマリアが何処に行ったかを知っています)。 PCが辿り着いた頃には廃屋には誰もいません。廃屋内を調べれば中庭に下水道へと続くマンホールがあり、蓋が半開きになっています。状況が切迫している場合は、アイラムが下水道へと向かう物音を聞き取ることができるかもしれません。<聞き耳>ロールに成功すれば、マンホールを動かす音や下水道の水の流れる音を聞き取ることができるでしょう。 地下室・地下下水道概念図 グローバー家へ
│上│
│へ│
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└─────┘ ┌───┐└─────┘ 下水の流れ
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アイラムの│ ● ● ● □ │ 廃屋の地下室へ
秘密研究室│ ■■■├─┤ │上│
│ ● ● ● □*│ │へ│
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└─┘┌───┐ └─────┘下水の流れ
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アイラムの秘密研究室「開かずの間」から地下下水道を通って秘密研究室へと向かうのは困難です。連日の雨で痕跡は全て流されてしまい、この状況で後を辿るには<追跡>−50%ロールに成功しなければなりません。下水道にはネズミやらゴキブリやらが這いずり回っておりますので、無目的に行動するには向いておりません。 しかし、アイラムが行動を開始した場合、近隣の廃屋から下水道を辿った痕跡を調べることはさほど難しいことではないでしょう。この場合は<追跡>+50%か<知覚力>ロールに成功することで研究室までたどり着けることができます。判定に失敗した場合でも時間がかかるだけで足跡を辿ることができます。 * 死体を燃やした跡 アイラムのものと思われる足跡は一段高い場所にある支管へと続いています。ここは他の場所と比べても古い作りをしており、水が流れている様子はありません。恐らくは下水道の改築で使用されなくなった古い支管なのでしょう。 この支管を少し進むと、何やら肉を焼いたような匂いがします。ここはアイラムが失敗作のホムンクルスを燃やした跡で、肉の焼けこげた匂いが今でも残っています。<手がかり>スキルに成功すると四肢の一部や焼け残りの肉片を発見することができます。干からびた手首の先でも発見できるでしょう。この肉片等は<異界化>の影響で低位の霊体が憑依しています。PC達が近づくといきなり指が壊れた玩具のように蠢き始めます。 『「カサカサカサカサ…。」 暗闇の中、下水や雨水が流れるのとは別の微かな物音が耳に入る。それはちょうど、この惨状と化した燃えかすの辺りからだ。肉を焼いた異臭の立ちこめる中、確かに何かが蠢いていた。ネズミかゴキブリだろうか。いや、それらであればどれほど良かったことであろう。姿を見せた、その地を這う黒い物体は一見すれば大型の蜘蛛の様にも見えた。しかし、あまりにも良く目にするその形を見間違えることなどできようか。その黒く炭化した人間の手首は、まるで狂人のそれのように指だけを勢いよく動かしながら這いずり回っていた!』 恐怖判定を行って下さい。 この手首は動き回るだけで何の害もありません。PC等が攻撃すると判定の必要なく破壊されます。 焼け跡の近くの壁に鉄製の扉があります。これは下水道工事中に資材置き場に使われていた場所です。アイラムが行った数々の魔術実験の結果、この周辺は空間が歪み<異界化>しています。<霊体感知>等を行えばこの事実に気が付きます。 研究所内 研究室の中は非常に散らかっていて、器材や薬品などが散乱しています。まず始めに目に付くものは棚にある錬金術書と壁沿いに整列する3つ培養槽でしょう。 錬金術書 これは書庫で欠けていたホムンクルス製造に関する書物です。 内容を調べるとホムンクルスの製造の所に上のメモが挟まっています。そのページには次の文章が赤で線が引かれています。 「ホムンクルスは寿命が短く、通常1年から2年でその生涯を閉じることになる・・・。」
壁沿いに列んだ人間大のガラス製水槽にも散乱は広がっています。<魔術>ロールに成功すると、これらの水槽がホムンクルス製造のための培養槽であるとわかります。錬金術書を読んでもこれに関する記述があります。器材の一部は培養槽内にも混ざっているほどです。手前二つの水槽にはゴミのようなものしかありませんが、奧の一つにはオレンジ色の液体が一部残っています。この液体はホムンクルスを製造するために用いる培養液で、高濃度のアミノ酸やタンパク質が主成分です。数日放置されていましたので(更にはこの場の衛生状態の悪さから)液体は腐敗しておりさらに悪いことに低級の霊が憑依しています。PCがこの培養槽に近づくと、液体は急に波立ち水面から無数の手が伸びてきます。 恐怖判定を行って下さい! 低級霊の宿った培養液 モンスターレベル:3 能力値 体力:8 敏捷:3 分析:− 知覚:3 意志:4 魅力:− 運:5 攻撃:55%(触手)×2 ダメージ:1D6+3(MP) 防御点:3(痛みを感じないため) HP:15 MP:11 抵抗力:35% 特殊能力:MPダメージ 二回攻撃 戸棚の反対側には同じように壁沿いに3つの培養槽があります。ですが一番奥の水槽には未だ液体に満たされておりホムンクルスらしき姿があります。そして、その手前には魔導書らしき書物が置いてあります。これが六体目のホムンクルスです。アイラムが最後の望みをかけた最新ホムンクルスは水死体のように全身が膨張し、胸部は破裂しています。 「液体に満たされた人間大のガラス槽を覗き込みと、中の人影の正体が判明した。美しいブロンドの髪を優雅に漂わせ、一糸纏わぬ姿でいる女性はマリア───恐らく彼女のホムンクルスだ。痛々しいことにその胸は内部から破裂したかのように醜く裂け、中の空洞は皮肉にも失敗作であることを誇示していた。だが、視線の先が向かうのは、マリアの美しい顔立ち…。途中ガラス槽の蓋が割れたのだろう。半分になったガラス製の蓋は右後頭部から左目の前まで突き刺さるように癒着し、脳の内容物を垣間見せていた!」 恐怖判定を行って下さい。 更にPC達がアイラムを追跡していることが判明している場合、彼女はこの失敗作に<死体使役>の呪文をかけゾンビにしています。この部屋を捜索しだしたPCに向け、ゾンビは不意打ちをかけます。 恐怖判定を行って下さい。 ホムンクルスのゾンビ モンスターレベル:1 能力値 体力:7 敏捷:3 分析:− 知覚:3 意志:4 魅力:− 運:5 攻撃:40%(拳) ダメージ:1D3+1 防御点:1(肉体的損傷が関係ないため) HP:10 MP:なし 抵抗力:25% 特殊能力:なし この戦闘に勝利することで、ようやく室内を調べることができます。この部屋の中には大量の研究機器と錬金術書・魔導書、そしてアイラムが残したメモがあります。 魔導書 <幽体離脱>の呪文が学べる魔導書。所々にアイラムの走り書きが残されている。
この魔導書を読んだ後に<魔術>ロールに成功すると、アイラムが簡易版の<精神交換>とも云える<憑依支配>の呪文を研究していたことに気が付きます。 グロ−バー家に戻ると玄関が開け放たれています。この時誰かが屋敷に残っていれば、マリア(=アイラム)が玄関から慌てた様子で飛び出していくのを目撃するでしょう。 .11 ホワイトチャペル地域 The Royal London Hosp(ロンドン病院) 雨に降りしきる中辿り着いたロンドン病院は、いつもと変わらぬ落ち着いた雰囲気を保ています。しかしその中でガーナードの病室の前に立つ警官(エリックであってもいいでしょう)だけは腑に落ちない様子です。彼は看護をしていたマリアが病室を離れて給湯室に向かったはずなのに、全く逆の方向からもう一人のマリアが現れたことに困惑しています。 PC達が病室に到着した頃にはマリア、アイラムのどちらの姿もありません。マリアが向かったという給湯室の付近には開け放たれた非常扉から雨が降り込んでいます。アイラムは非常階段からマリアを抱きかかえ屋上へと向かいました。ロンドン病院周辺の通りは人通りが少なくないので、マリアを抱えて歩くアイラムの姿は目立ってしまいます。その点屋上ならば雨の降っている中わざわざ訪れるものもいないでしょう。 PC達が急いで病院に駆け付け非常階段に着くと、階段を屋上へと向かう足音を聞き取ることができます。PC達が遅れた場合は<ダウジング>などの能力を使わない限りマリアの居場所を見つけることはできません。少しの時間差であるならば<追跡>ロールを許可しても構わないでしょう。 この状況でPC達が(ゲーム時間で)10分以上手間取ることがあったら、GMは<憑依支配>の判定ロールを宣言して、オープンダイスで振って下さい。成功率は公表する必要はありません。 .12 ロンドン病院 屋上 PC達が屋上へ辿り着けば、気を失っているマリアの傍らで彼女に手を差し伸べながら複雑な呪文の詠唱をしているアイラム(マリアそっくりの女性)の姿を見つけることができます。雨は延々と降り止むことを知らず、屋上から望むロンドンの光景はまるでモノトーンの世界です。その精彩を欠いた光景を演じる二人の女性。その姿は瓜二つですが、雰囲気は全く正反対なものに感じられます。アイラムはPC達の存在を察知すると、ゆっくりとまるで人形の動作のように首を動かし睨み付けます。その瞳に正常な感情を受け取ることはできません。それは何処か心が壊れた光を宿しています。そしてその顔は、半分はマリアの整った顔立ちのままですが、もう片方はひどく歪み深い皺が刻まれた老婆のものです。その醜い反面は瞳が膿んで黄色い涙を零し、頬は朽ち果て蛆がヒクヒクと蠢いているのが見えます。これは彼女の身体が既に限界に達していることを示しています。この常軌を絶する光景を見たPCは恐怖判定を行って下さい! アイラムは自分の行動を妨害するものに容赦はしません。彼女は抑揚のない口調で「私の邪魔は誰にもさせない。私は人間になるの。私はマリアになるの。」と何度も繰り返しながらPC達を攻撃します。彼女はまず<恐怖>の呪文でPC達の行動を制限します(恐怖判定です!)。行動可能なPCがいたらそのキャラクターに<腐食>を唱えます。PC達が硬直から回復していたり、複数のキャラクターが行動できるようでしたら<電撃>の呪文で再び行動を制限します。MPが尽きそうになったらミスティックやサイエンティストといったMPを消費するPC以外へ<夜魔>の呪文をかけ、MPを回復させましょう。尤も発狂しかけているキャラクターへの精神攻撃は手控えましょう。 アイラムが倒された場合、彼女は死の間際に「お父さん、私を愛して・・・。」と呟き絶命します。 非常に勘のいいPCはアイラムへガーナードが用意した髪飾りを渡そうとするかもしれません。その際にこの髪飾りはガーナードがアイラムにプレゼントしたものであると告げることで、彼女の心に正気が戻ります。そして髪飾りを胸に抱きしめ、大粒の涙を流します。その刹那、アイラムの皮膚は急激に水分を失い身体は干からび始めます。彼女のホムンクルスとしての寿命が途切れようとしているのです。しかし、死を目前としてもアイラムは狼狽えることはありません。生命の炎が失われて行く中で、彼女は振り絞るように言葉を紡ぎます。「お父さん、ごめんなさい。信じることができなくて。そして・・・。」そこでアイラムは息を引き取ります。その身体はまるで老婆が干からびたような無惨な姿ですが、その表情だけは安らかで何処か微笑んでいるようにも見えます。 どちらのシーンでもアイラムの死の後、雨は止みはじめ厚い雲の隙間から陽光が差し込むことでしょう。 こんな事態は全くもって避けたいものですが、PC達は致命的なミスを犯し病院への到着が大きく遅れるかもしれません。その場合病院ではちょっとした騒ぎとなっています。屋上で老婆のミイラ化した遺体が発見されたのです。第一発見者はマリアです。このマリアはアイラムの精神を宿したものか、それともアイラムの魔術は失敗したのか。それは神のみぞ知り得ます。 |
| ●エピローグ |
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アイラムの<精神交換>を阻止しようがしまいが、これで事件は幕を引きます。ガーナードはフレスター子爵が完成させた治療薬により一命を取り留めます。意識を取り戻した彼に真相を尋ねれば、彼は重い口を開き「シナリオの概略」にあるようなことを答えます。そして最後に「私はアイラムのことを本当の娘とさえ思っていたが、あの娘にはそれが伝わっていなかったのだろうな。もっと話をするべきだった。もっと想いを伝えるべきだった。」と涙を零します。 マリアはどうなったでしょう? 彼女は術が成功していようが失敗していようが(失敗していたら勿論)何も変わりないように思えます。アイラムの望みはガーナードの娘そのものになることだったのですから当然でしょう。 錬金術殺人の真相はPCの手に委ねられます。尤も警察やマスコミに発表しても決して信じられる内容ではありません。恐らくは迷宮入りとなってしまうでしょう。明確な証拠が無い限り(それどころか完全なアリバイのある)ガーナードへの容疑は外れさます。 これでシナリオは終了です。できればGMは、PC達が余程激しいミスを犯さない限りハッピーエンドへと導いて下さい。ゲームは参加者全員が楽しめることがベストです。充分な警告無しに悲惨な目に遭うことはPLの達成感を台無しにしてしまいます。但し、甘やかし過ぎは行けません。公平さと厳しさを兼ね揃えて下さい。 経験点 錬金術殺人の真相に辿り着き、マリアを救うことができたらシナリオクリアーです。ルールに従って経験点を与えて下さい。それ以外の場合、真相にたどり着けなかったりマリアを救うことができなかった場合には与えられる経験点は半減します。 また、ボーナスとしてハンドアウト3のAIRAMがマリアの綴りを逆さにしたものと気がついたPCに100点、ガーナードを刺傷したのが廃屋の老婆であると推理したPCに100点、アイラムを説得し戦闘を避けることができた場合は各PCに200点の追加経験点が加わります。 |
