ヴァンデルバスター 風雷のガンナ
(『冒険王ビィト』より/当サイトオリジナル)

 このSSは……
1)冒険王ビィト(以下:ビィト)が嫌いな人
2)ビィトは好きだけどその二次創作が嫌いな人
3)ビィトが題材なのに、オリジナルキャラしか出ていないのが嫌な人
4)ビィトの原作以外認めない魂の小さい人
5)このSSの作者である『ほろふる!』が嫌いな人

 ……これらのうち,ひとつでも当てはまる人は読まないで下さい
ませ。これらの条件に一つも当てはまっていなければ是非とも
読んでやってください。

 命の息吹が一片も感じられない砂漠地帯の中、旅人と思しきマント姿の人影が一つ、何かを求めて
歩いている。吹き荒ぶ砂の嵐が、砂塵越しでも容赦なく照りつける燃える太陽が、その者を殺さんと
間断なく責め立てる。だが、その者の歩みは一向に衰えることはなく、足取り強く焼けた砂の大地を歩く。
 それからしばし時が過ぎれば、その者の眼前に、人を思わせる姿の大きな植物が見えた。
砂漠地帯でも生息できる多肉類の植物いわゆる『サボテン』の一種だ。だが、普通サボテンは植物故、
自発的には動けない。最初、一本だけだったサボテンが二本、三本、四本とマント姿の人間を
囲うようにして近づいて来た。……どうやら、サボテン…いやさ只のサボテンではなく砂漠地帯で見られる
サボテンの姿をしたモンスター『歩兵サボテン』のようだ。砂漠地帯で見られる下級のモンスターだが、
旅人にとっては複数で襲い掛かる恐るべき存在である事には変わりない。モンスターに包囲された
旅人は、一切臆することなく、包囲した歩兵サボテン達を、マントのフード越しに睨み付け、片手を
天に伸ばした刹那――砂埃を起こしながら、彼らの頭上を跳んだ!

 包囲したモンスターの一体の視界を旅人のマントが塞ぐ。そのすぐ後に落ちてくる旅人の
蹴りの一撃で、一体が倒される。倒されたお仲間に構わず、残り三体が旅人に向けて殺到する。
それらを難なくかわして彼らの死角に入り、両手に持ったロッド状のものを向けて、何かを仕掛けた。

 ――ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ……!!
 ―― ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ……!!

 重なる轟音とともにロッド状の先端から放たれたのが硝煙と閃光を伴いながら、一かたまりになった
モンスターに向かって勢いよく撃ち込まれた。対モンスター用に作られた特殊な銃弾だ。銃弾による
今吹き荒れている砂嵐のような攻撃によって、歩兵サボテン達が蜂の巣になって物言わぬサボテンに
変わっていった――まぁ、歩兵サボテンは言葉を発するように作られてはいないが、例えと言う事で。

 包囲していたモンスターを倒した旅人の姿が、砂煙と硝煙のヴェールからようやく現れる。
彼らを斃したその旅人は、屈強な戦士でもなければ身長2mほどの大男でもない。華奢な身体つきと
夕日のような赤い髪、そして……少し小さな眼鏡をかけたその顔立ちからは、あどけなさと大人
としての境界がはっきりと分たれていない。そう、言うなれば――ひとりの少女のそれであった。
 その少女の両の手にある銃弾の放てるロッド――とある港町産の特製武器――『ガンロッド』を腰の
ホルスターに納めて、歩兵サボテン達の躯から、さっき投げたマントを取り出そうと近づく。だが、
 動かなくなった筈の歩兵サボテンのそれが、動いているのに気付いた少女は、元の間合いに戻って、
再びホルスターからガンロッドを取り出して構える。構えたのが先か撃ったのが先かと言うタイミングで、
飛び出してきた歩兵サボテンに向けて銃弾を放つ。

 ――カチッ…カチッ……。

 運悪くさっきの攻撃でもって弾切れを訴えたガンロッド。そうしている間にも、歩兵サボテンは
絡みついているマントを引き千切る様に剥ぎ取って、少女に向かって突進してきた。銃弾を装てん
時間も与えられぬまま、突進するモンスターに対して、其の侭大人しく柘榴の実になる気は少女にはない。
ガンロッドを銃撃の状態から本来の姿である打撃武器のそれに構えて、取っ手を中心にして回転できる
ようにする。突進する歩兵サボテンの棘の付いた腕をロッドの回転で巧みにいなして、もう一方の
ロッドを回転させて、モンスターの目に強打を与える。それにひるんだ隙を少女は逃さず、歩兵サボテン
から間合いを離して、ロッド用の銃弾を装てんさせれば、再びモンスターの頭に向けて

 ―― ガ ガ ガ ガ ガ……!!

 さっきよりも短い射撃時間で、ようやく目が見えるようになったモンスターを、蜂の巣に
した。……これでひとまず、戦闘は終了した。だが、さっきの銃声で新手がこないとも限らない。
それを危惧しているのか、少女の殺気はいまだ緩まないでいるが、それも長く続かなかった。
 突如、彼女の頭がふらついてきた。長旅によるものなのか緊張の糸が切れたのかは
解らないが、彼女は一言……

「こ、こんな時に…まだ、ねむっちゃぁ……」

 そう言いかけた所で、糸の切れたマリオネットのように崩れ落ちた。


――ep#1 朱(あか)い髪の乙女(バスター)/彼女の名はガンナ――


 砂漠地帯のほぼ中心部、オアシスの水がたたえる町『イーサイス』。
 モンスターや魔人――ヴァンデル――から護るための城壁に囲まれた、暗黒の世紀の中にあってこの
地域では一、二を争うほどの大規模な町である。その大規模な町のとある旅籠――簡単に言えば宿屋
のこと――の一室で、少女は……

「……ヴァンデルかッ!!」

 と、飛び出すかのように、起き上がった。彼女が周りを見れば、さっきまで居た砂漠の
  まん真ん中ではなく、見慣れない天井とはじめて見た調度品、見慣れない壁に囲まれていた。

「よーやく起きたか。二日ほど殆ど死んだみてーに眠ってたんで、医者に診てもらおうかと思ったぞ」

 そんな彼女の元に、聞いた感じで三十路ほどの男の声が、投げかけられた。

「……だれだ? お前は…」

 少女は声の主に顔を合わせるが、どうやら視力が悪いのか、目を寝てたときの状態に近いところまで
細めている。それを見た男は何も言わずに近付いて、彼女に眼鏡を手渡し

「この眼鏡、お前さんのだったか。砂漠のど真ん中で寝ていた時に近くに落ちてたんでナ……」

 一言言いながら、彼女が眼鏡を掛けるのを待った。

「助けてくれたことは感謝している。……それにしても、ここは一体、どこなんだ?
それと…あんたは誰なんだ?」

 少女は男に問いかける。さっきまで砂漠にいたのに、いつの間にやら町と思しき場所にて目覚めた
のだから……。それに対して、男の方は口にしようとした言葉を一度飲み込んで…

「ここか? ここは砂漠の町『イーサイス』。バスターの総本山グランシスタと比べると
田舎っぽいが、それでもこの辺りではでかい方なんだぜ。そして、オレの名前は……て、
人に名前きく時はまずは自分からって言うだろ? 可愛い少女バスターさん」

 と、少女の問いに半分答えて、もう半分を軽く人差し指で小突いて返す男。それから傍らに在った
椅子に腰掛けて、彼女の返事を待つのだった。『可愛い』と言われて、少女は少し顔を赤らめながらも

「可愛いっていうな! …す、すまない……。そういえばそーだったな。あたしの名前は『ガンナ』。
あんたが言ったとおり、職業はヴァンデルバスターだ…これで良いだろ? あんたの名前、
教えてほしいんだが…」

「赤くなって可愛いねぇ。おっと、オレの名前かい? オレは『チェン=グゥ』あんたと同じ、
ヴァンデルバスターだ……ま、『不良』の二文字が前に付くけど、な……」

 ――さて突然だが、この世界について簡単に説明しようか。
 何処とも知れない世界、その世界は魔人(ヴァンデル)と呼ばれる人を凌駕する者達と
彼らが操る魔物(モンスター)による蹂躙により、人々は苦しめられている。彼らが何処から
来たか、何時から居たのかは人の記憶に残ってはいなく、何時の頃からかこの時代を
『暗黒の世紀』と呼ぶようになった。だが、人々は希望を失ってはいなかった。
 魔人たちと戦う為の力を持ち、彼らに刃を向ける者達『ヴァンデルバスター』が現れた。
 絶望的な状況に生まれた一筋の希望の光、それがたとえ蜘蛛の垂らした糸だとしても、
人々は其れに手を伸ばし、あがき続け、戦い続ける…それが、この世界だ。……閑話休題。
 物語の方に、目を向けようか――

 彼女――ガンナ――が町の宿で目覚めてからはや二日。彼女は少し本調子でないのか、時折何処かに
身体の異常を訴えてはいるが、それ以外は日常生活に支障がない程には回復したようだ。
 数日振りにガンロッドの手入れを行ってから、少し遅い朝食にありつこうと、ガンナが着替えている所に…

「おーい、ねぼすけガンナ〜〜…とっとと起きて……」

 と、ガンナの部屋に入ってくるチェン=グゥ。……しばしの沈黙が二人を包み、チェン=グゥは、
ガンナの身体を入ってきた姿勢のままでまじまじと覗き見た。彼女から聞いた年齢――18歳――
にしては、少しばかし肉付きの薄い華奢な身体。ビスチェ状になっているインナーのトップ部分の
上にある胸元のブランディング――バスターの証拠たる古代の数字が刻まれた部分――には、
『レベル31』を示す数字が刻まれてる。そうやってチェン=グゥが覗いた侭までいると……

「この……大莫迦者〜〜ッ!!」

 怒りと抗議の大声と共に、アンダーウェア姿のまま、チェン=グゥを思い切り蹴り飛ばした……。

「……だから御免って。ノックしないオレが悪かったって…」

 宿屋の一階にある食堂。大量の料理が所狭しと並べられた卓を挟んで、鼻に絆創膏を張った
チェン=グゥが力の限り謝っている。それに対してガンナの方は、怒りの矛先を料理にぶつける様に
そこそこ咀嚼して胃の腑に流し込んでいた。ある程度胃の腑に料理を流し込んだ所で、ガンナは
匙とフォークの手を止め……

「貴方ねぇ……乙女の柔肌を…そんな謝罪の言葉だけで済むとでも思っているの?」

 動物が威嚇するような目付きでチェン=グゥを睨む。それに対して、そんなガンナの態度に
『可愛い』不謹慎に思いつつ、男は少し考えて……

「確かに、言葉だけじゃあ誠意が感じられないって言いたいんだろ? ……わかったよ。今回の件は、飯と
宿代はオレ持ちって事で赦して貰えないか? 今のオレには、それが精一杯だし……」

 会って幾日しか経っていない付き合いの浅い同業者に対して、チェン=グゥは今出来うる最大の代償を
支払おうとする。これで許して貰えればどうにかなるが、それが無理だったときには『これから』受けようと
するお仕事に支障を来たす。それだけは何としても避けたい。そのための決断。……さっきとは違う、
少し重い沈黙の後…ガンナは匙とナイフを止めて……

「……まぁ、食事代だけで良いよ。宿代まで出して貰うと、こっちとしても何だか貴方に対してバツが悪い というか…。でも、食事代の方は覚悟してよ……。こう見えても、かなりの大食いだから」

 『ニヤァ…』と、少し悪い笑みを浮かべながら、ガンナはチェン=グゥを許した。許されたチェン=グゥ
のほうは、彼女の笑みに少しばかし怯みながらも、内心では、胸を撫で下ろした。それから暫く経って、
食事も殆ど終わりに近づいた辺りで、漸くチェン=グゥは食事に動かしていたその口を止めて、彼女に

「そーいやぁガンナ、お前さんさぁ……もうそろそろお仕事しないと路銀尽きるんじゃないかい?」

 男は質問交じりでお節介な少し勿体ぶった言い回しで、ガンナに興を引かせる。それに関して、
彼女のほうは口の中にある最後のウチワサボテンのステーキを胃の腑に納めてから……

「う〜〜ん、路銀の心配だったら少なくても食事代はあなた持ちで。宿代はまぁ…ってそれってさ、
あたしに何か仕事を手伝って欲しいってこと……?」

 そういった後、匙もフォークも口も動きを止めて、ガンナは考え込んだ。同業者から突然の仕事の
勧誘、大抵は裏がある事この上無い。かと言って、それで……一先ずは、何の仕事なのかを…

「何らかの仕事を協力して欲しいって事なの? 内容によっては、断るかも知れないけど……」

「まぁ、バスターが他のバスターに何か手伝って欲しいって頼むのは…十中八九魔人(ヴァンデル)
が絡むってのが相場だろ? それ以外で同業者には頼みやしないって。それと、この依頼を断っても、
それで飯代の件は別だから安心しろよ。って、普通は戦士団契約しているバスター同士で受けるん
だけども……ちょ〜〜っと、この町にいるバスターだと荷が勝ちすぎるからねぇ…」

 そういった後で、食後のバター入りコーヒーを飲み干して、チェン=グゥは言葉を切った。

 ――またも話の腰を折るような感じではあるが、バスターの仕事に関して補足しておきたい。
 バスターは基本的に、複数のバスターとともにパーティを組んでモンスターや魔人と戦う。
 いくら魔人と戦う力を持っていたとしても、――程度の差はあるがモンスターの駆除ならまだしも――
たった一人では最低クラスである一ツ星の魔人と戦うにしても、余りに身体能力的に差がある。
 それゆえに、何人かのバスターと徒党を組んで、彼らに挑むのである。まぁ、ある程度のレベル以上に
達したバスターであらば、単独行動でもってモンスターや魔人と戦うという者もいるが、それに関して
は例外というところか。閑話休題、ガンナ達のほうに目を向けようか――。

 チェン=グゥが頼み込むその話に、ガンナはふと、嫌な感じを覚えて……

「他のバスター達が荷が勝ちすぎる魔人って、アンタ……もしかして五ツ星以上のと戦うっていうの?
知り合ってからそんなに日も経っていないのに、何であたしのような流れ者と一緒に……」

 そう言ったガンナは、テーブルから身を乗り出して、チェン=グゥに問いただす。この地方では余りに
実績も土地勘も無い、そして歯牙ない自分に対して何を根拠にそこまで買っているのかを。

 彼女の問いに対し、チェン=グゥはゆっくりと口を開いて

「お前さんが行き倒れる前の戦闘での、天撃の使い方と身のこなし。それと銃撃の腕……、そして
戦闘後の残心(事を終えた後も心身ともに油断をしないこと)がちゃんとなっていたところかな? 後は…
まぁそーだねぇ、お前さんが気に入った。てぇのは無しか?」

 チェン=グゥの最後に放ったその一言に顔を赤らめながら、ガンナの拳は震えていた……そして

「ば…莫迦……あたしをそうやってからかうな!!」

 ガンナの叫びによって、ほかの客やら宿屋の主人やらの白い目が、二人の卓に降り注いだ……。
 余りにも痛いほどの無数の視線に耐えかねて、チェン=グゥは…

「ガ…、ガンナさん。大声で馬鹿莫迦言わないで欲しいんですけど。カップルの痴話喧嘩臭くなるって
言うかさぁ…周りの客の視線、気にならないか?」

 言いながら男は、ガンナに周囲の目を気にするよう促す。さっきまで頭に血が上っていたガンナの
表情も、少しさめて来ているように見えてきた。

「ご、ごめん……少しばっかり気が立ってた」

 乗り上げていたその身を席に戻したガンナは、チェン=グゥからの仕事の依頼をどうしようか考える。
 受けるべきか断るべきか……、今の状態で依頼を受けても足手まといになる可能性はある。だが、
彼女も物見遊山でこの砂漠地帯に来たわけではないってことはわかっている。一先ずガンナは、
チェン=グゥが狙っているであろう魔人の名を聞こうと口を開く。

「受ける受けないにしても、あなたが狙っている魔人って、誰なの? まさか…不動巨人……」

 ふと、ガンナはこの地域を拠点にしているという噂の七ツ星の魔人の名を口にするが……、
チェン=グゥが狙うのは、それとは違う魔人の名であった。

「『不動巨人 ガロニュート』じゃねぇよ。オレが狙っているのは、今は『墓守の王』の二つ名
を持つ五ツ星魔人だ。名前は確か……何だったっけなぁ〜」

「『ネ・フレン・カー』……あたしが狙ってる魔人じゃない?」

「ほぉ…これまたおんなじ目的でここに来たってことか。それだったらオレと組んでアイツを倒さないか?
レベル30以上で才牙持っていそうな感じがするんで、お前さんとだったらいけるだろ?」

 卓の上にあった食事は全て片付けられて、ガンナの返事を待つかのように、チェン=グゥは
煙草を取り出して紫煙をくゆらせ始める。少ししてから……

「まぁ、一人で戦うには余りにも荷が勝ちすぎるし……路銀諸々よりも、あの魔人には用があるしね。
オーケイ、そういう事だったら、今回は組んであげるわ」

 ガンナの口から、チェン=グゥに色よい返事が返ってきた。それから直ぐに……

「でも、あたしと組むからには…煙草はあたしが居ない所で吸ってよね。煙草の煙…苦手だから。
…それと、今、あたしたちのいる席は禁煙指定されているから、吸いたいときは向こうで」

 顔をしかめて紫煙に咳き込みながら、ガンナはそう二言付け足した。それを聞いて苦笑しながら、
チェン=グゥは火の点いているタバコを持って、ゆっくりと喫煙できる場所に向かうのだった。

 ガンナとチェン=グゥが仮の戦士団契約を交わしてから二日、彼らは探している五ツ星魔人が根城に
している砂漠地帯の中心にある大きな墓所。『ホルスのピラミッド』に向かっていた。暗黒の世紀が
始まる前から作られたとも云うべきかつての名君の墓所に、件の魔人が己が根城として君臨している
とのことで、再び砂漠の中へと歩を進めるのであった……。

 「チェン=グゥ、……この方角であっているの?」

 砂漠での行軍用に完全装備になったガンナが、先行する男に問う。男の方は、口を開かずただ頷くのみ。
 目印は夜の星しかない砂漠地帯では、昼になると方位磁石が頼り……なのだが

「悪い……どうやら、方位磁石のやつが、狂ったようにぐるぐる回ってきやがった」

 振り返りもせず、チェン=グゥは方位磁石を持っていない手を上げてジェスチャーする。それを聞いて

「ちょ……一寸! こんな所で方位磁石が使え物にならなくなったの? どうやって『ホルスのピラミッド』
に行けって云うのよ!!」

 頼みの綱となる方位磁石が使い物にならなければ、砂漠の中で人はどう足掻いても昼間の熱と夜の
乾いた寒さで死んでいくのみ。だが、ガンナの非難も何のその、チェン=グゥは目の前を見据えながら

「そういきり立つなよ。『ホルスのピラミッド』は、盗掘者対策に磁場の乱れた所と砂嵐の中にあるって
歴史書かなんかに書いてあったろ? つまりは……近づいたって事に成るだろうよ。それに…前を見なよ」

 チェン=グゥに促されて、ガンナは眼前にイーサイスの町一つは入るほどの大きな砂嵐が見えた。

「でも……そうやってあの砂嵐の中に入るって云うのよ! あのクラスだったら『天撃の気流』で一部
中和させて中に入るなんて……まさか、抜け穴とかそういうのでピラミッドに向かうってこと?」

 轟々と唸る様な砂嵐に負けないよう、ガンナは大声でチェン=グゥに問いただす。それを大声で

「ご名答。そうでなきゃあ昔の王族もモンスターも魔人も、ここを利用しないって。まぁ、その抜け穴が
何処にあるかってのが…問題なんだけどね」

 同じようにチェン=グゥも大声で返答する。目の前に目的の魔人が居るだろう根城の周りを注意深く、
そこに至る為の抜け穴がないかを探す。だが、目に入るのは砂地と隙間の無さそうな岩と砂嵐、それと
数本ほどあるサボテンが見えるばかり。どこにも抜け穴が在りそうな様子は無い……。
 少なくても、チェン=グゥの目から見れば。それとは打って変わって、いつの間にかチェン=グゥの
前に来たガンナは、何やらこの風景に違和感を感じ取っていたようで……。

「チェン=グゥ、そういえば、町に居たときに鑑定小屋(ハウス)のおじいさんから聞いたんだけど……」

 ふと、ガンナが感じた違和感の正体を、チェン=グゥに問う。

「いきなりどうした! 抜け穴がみっかったのか?」

「抜け穴ってのじゃあないけど、どうも可笑しいと思わない? ここまでの道のりにサボテンが一本も
見当たらなかったのに、いきなりその群生地に入るなんて」

 そう言いながら、ガンナはサボテンが生えている場所へと歩を進めた。それにつられて、
チェン=グゥもサボテンに近づく。ガンナの質問に対して、少し考えながら、チェン=グゥは

「……確かに変だな。ピラミッドに至る道には、雨が降らないって鑑定小屋のじーさんが言ってたな。
それなのになんでいきなり、サボテンの群生地に出くわすかだ……」

 そうこうしている内に、二人が棘だらけの多肉質の植物に後何歩かで触れる辺りに近づいた。
 すぐ側までくれば、砂嵐の向こう越しに薄っすらとであるが、目的地のピラミッドが見える。
 そこに生えているサボテン達を注意深く見れば、数日前にガンナが倒した魔物にそっくりな姿の
それや、別の種と思しきサボテンの姿が見られた。ガンナとチェン=グゥは、互いの顔を合わせ、
かたやホルスターから一対のガンロッドを、こなた右腰に佩いている刀の鯉口を切って、先制
攻撃を仕掛ける。

 二人のバスターが放つ殺気に気づいたサボテンの姿をした魔物達は擬態をやめて、襲い来る
者たちを迎え撃つ。ガンナの思ったとおり、サボテン達はピラミッド周辺を守っている『歩兵
サボテン』と、それとは別種の髑髏の様な頭を二つ持つ魔物『さまようガイコツ』の一群れだった。

 ――ガ ガ ガ ガ……!!

 立ち上がった歩兵サボテンの一体にガンナの銃弾が数発、吸い込まれるかのように命中した。
 頭に当たる部分に穴を空けられ、大の字に倒れた歩兵サボテンを踏み砕く勢いで、ほかの魔物達が
ガンナに殺到する。それを邪魔するかのようにガンナの前にやってきたチェン=グゥが…

「おっと! 歌姫さんに手を出さないでよぉ……」

 と、冗談交じりに言いながら…

 ――ザ斬……!!

 剣閃を煌かせながら刀を躍らせて、一番前にいる歩兵サボテンとさまようガイコツを二体同時に、
やや右下がり気味の横一文字に真っ二つにしていった。そのすぐ横にすぐ後ろに、チェン=グゥを
始末しようと魔物数体が取り囲んで、手にしている自分達の同族の様な狼牙棒やらメイスを、スキ
だらけの男の頭に思い切り叩きつけようとする。相手が自分をザクロにしようとするのに感づいた
男は、咄嗟に魔物達の包囲網の隙間からコート型のバスターズ・ジャケットが破けるのも厭わずに
飛び込んで、行きがけの駄賃とばかりに近くにいたさまようガイコツのものと思しき脚に一太刀
入れた。チェン=グゥが魔物の包囲網より抜け出てから瞬き一つしない内に……

 ――ガ ガ ガ ガ ガ ガ……!!
 ―― ガ ガ ガ ガ ガ ガ……!!

「はいはい、うちの看板漫才師に手ェ出しちゃ駄目よ!」

 と、さっきのチェン=グゥのお株を奪うかのように、ガンナが相方を取り囲んでいた魔物を
次々と蜂の巣にしていった。体勢を立て直しながら、チェン=グゥがガンナに

「ちょっと待て待てェ〜い! だぁれが漫才師だ!? 誰がぁ!!」

 と、抗議しながらも、後ろから襲い掛かるさまようガイコツの攻撃を難なくかわして、お返しと
ばかりに抜刀していない方の刀を逆手で抜いて、魔物の持っているメイスごとその身体を二つに
切り分けた……。ガンナが銃弾で魔物を蜂の巣にすればチェン=グゥが近付けさせように陽動し、
チェン=グゥが二刀を振るわせればガンナが魔物たちの死角から銃弾を叩き込んで目標を散らす。

 数の上では二対十数体と言うのと、仮初めの戦士団で組んで初めての実戦と下馬評では
バスター側不利と思えたが、蓋を開けてみれば昔から組んでいたと思えるほどに二人の息
はぴったりと合っていて、ガンナの銃弾が、チェン=グゥの刀による斬戟が、魔物達を
次々と撃ち倒し斬り倒して、物言わぬサボテンの残骸に変えていった。

「それにしても、囲まれた際のの銃撃は…オレに対して恨み籠もって無かったか?」

「何をおっしゃいますやら! ジャケットの防御力やすばしっこさを考えて、あのタイミングが最適と
思ったまでのことよ。それをいうんだったら、最後のあたりで刀振る速度落ちたんじゃなくて?」

 無事に戦闘が終わってしまえば、ガンナとチェン=グゥは痴話喧嘩のように、お互いの戦い方に
対する駄目出し交じりの突っ込みのそれに入った。それでも、二人は増援が来る可能性を考えて、
背中合わせの状態になり、次に備えるのであった。

「どうにか片付いたけど、これじゃあどこに抜け穴あるかわからなくなっちゃった……か」

 歩兵サボテンとさまようガイコツの残骸の中心で、苦笑交じりにガンナはつぶやく。空になった
弾倉を排出して、念の為にと排出したのよりも長くなっている新たな弾倉を装てんしているガンナに、
チェン=グゥが近づき……

「そう悲観しなくてもいいぜ。どーやら、案内してくれそうな奴が来るみたいだ」

 男が彼の視点で3時の方向に指差せば、さっきまで戦っていたサボテンの魔物達を思わせる、
身長2メートル以上はあろう大型のモンスター……いやさ、魔人(ヴァンデル)がこっちにゆっくりと
向かってきている。魔人のほかには誰も連れてはいないのが数少ない救いだが、さっきまでの魔物
に比べれば…その考えも……ぶっ飛ぶであろうか。

「ほっほぅ…オレ様の縄張りに勝手に入って、ここまでボロボロにしやがって! だが、ここからは
このオレ様
『砂塵の狂戦士 カクタクス』が、貴様等を逃さず余さず容赦なく、この砂漠の
ど真ん中でボロ雑巾の…真っ赤な水溜りにする番だぁぁあ!!」

 魔人・カクタクスは三ツ星の埋め込まれた左腕をガンナたちに見せ付けるように構え、二人との
間合いを一気に詰めようと勢いよく跳躍した。

「ボロボロに……なってぶっ潰れろやぁぁぁぁああああッ!!」

 砂嵐に負けないほどの轟音と怒号を上げながら、カクタクスは二人を地面に串刺しにしようと、
上空から棘と鋭い鉤爪に覆われた腕をたたきつける。砂煙に負けないほどの砂柱を立てたが、

「のわぁっと!」「きゃッ!!」

 すんでのところで二人は魔人の攻撃をかわして、秒殺されるのをどうにか免れた。

「おいおい、いきなりこっちの問いかけもなしで攻撃かい? こっちは砂嵐の抜け方を聞きてぇんだけど?」

 風下の方に避けたチェン=グゥは、砂嵐吹き荒れる中煙草に火を点ける。

「固羅! こういう場面で何タバコ吸っているのよ! 少しは不謹慎じゃない?」

「わりぃな、風下だからそっちに煙こねぇだろ? それに…こいつとやり合うには、普通の武器じゃあ無理
っぽいからな。その為の仕込みなんだわ……我慢してくれよ?」

 タバコに火が点いた状態で、チェン=グゥは大小二振りの刀を鯉口を切って、二振りの刃に火をともした。
 すると、タバコの火がそれぞれの刃に燃え移るように鋼の刃が真っ赤な天力の炎に包まれた。

「何ごちゃごちゃやってやがるかぁあッ! まずは貴様がボロボロになれぇッ!!」

 カクタクスが怒り狂うかのように狼牙棒を思わせる右腕をぶん回して、男を潰さんと上から思いっきり
叩きつける。岩をも砕かんばかりの勢いをもって振り下ろされた魔人の攻撃を、大小二振りの炎を纏った
刃で受け止めるチェン=グゥ。魔人の右腕が刀のぶつかった所から、刃を覆う炎が右前腕に燃え移った。

「…な、なんじゃあ〜〜〜〜〜!!」

 これ以上燃やされてはかなわないと、カクタクスはチェン=グゥから離れて、燃えている右腕を
消火しようと砂地に転がり回った。

「悪いがお前さんクラスの魔人に、オレの才牙は勿体ないからな。これで勘弁しろや」

 殆どフィルターだけになったタバコの吸殻を吐き捨てて、小刀で燃やしたチェン=グゥ。いまだに
ごろごろと転がっているカクタクスに対して、その体勢を立て直させんとガンナがガンロッドから銃弾を
大量に撃ち込んで行く。

 ――ガ ガガ ガ ガガガ ガガガ ガガ ガ……!!
 ―― ガ ガガ ガガ ガガ ガガガ ガ……!!

「ば! あばばばばばば……馬鹿に…するぅ…なぁ〜〜〜!!」

 苦情と怒号と突っ込み交じりに叫びながら、魔人は転がったままで鉛玉の雨あられをどうにかかわす。
 ガンナの銃から銃声がやみ、その機を逃さず転がった勢いで体勢を立て直せば

「チィッ! ちょこまかと……やってんじゃねぇぇぇえええッ!!」

 腕を大きく広げて、砂塵が入るのも構わず大きく息を吸い込み、両腕を前に突き出せば、今度はお返しだと
ばかりに、腕にある棘という棘を立たせてガンナが撃った銃弾以上の質と量のそれらを二人にめがけて、
怒りを込めるかの如く思いっ切りぶっ放した!

――ヅドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド……!!
 ――ヅドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド……!!

 放たれた無数にして隙もない棘による弾幕に対し、ガンナとチェン=グゥはお互いの武器で以って、
棘が急所の集中する正中線に入らない様に身を固めるのに精一杯になった。

「ち〜〜〜っとばっかし、甘く見てたなぁ……」

「『ち〜〜〜っと』ってレヴェルじゃないでしょ!? リロードする暇もないじゃないの!」

 そう言いながらも、二人のマントはもう既にボロボロになって、あらゆる攻撃から身を守るように
作られたバスターズジャケットも、幾筋かの鉤裂きやら切り傷やらが生じている。それでも二人は、
魔人の棘による弾幕――魔奥義・ニードルストーム――が止むのを待つ。

「おらおらおらおらぁッ!! とっとと蜂の巣のボロボロになって、這いつくばれぇぇぇぇええッ!!」

 魔人・カクタクスの叫びとともに激しくなった『ニードルストーム』の弾幕。その大質量による重圧に
よって、二人が少しずつ後ろに後ろにと後ずさってきた。そして弾幕による重圧は、ガンナたち二人の
体力も必死のガードも削り取り……

「「ぐぁああ〜〜〜ッ!!」」

 二人を自分と同じような姿に代えながら、後方5メートルほど吹き飛ばした。

 砂地に倒れこんだまま、ガンナとチェン=グゥが動かなくなったのを確認したカクタクスは、息も
絶え絶えになりながらも……

「はぁ…はぁ……ようやくボロボロになったか。死んでて聞こえないだろうが、冥土の土産に教えてやる。
この砂嵐はなぁ……赤く輝く満月の夜、月が人間どもの墓場の真上に来た数時間に収まるんだ。
その時にピアラミッドに入るための入り口が砂漠の中から出てくるんで、そいつに入ればいいんだとよ。
まぁ、貴様らは残らずボロボロになってしまっているから、もはや何の意味なんざもたねぇが、なぁ……」

 息を整えて、また腕を大きく広げてタルの様な胸板を鳴らした後、倒れた人間二人に止めを刺そうと
魔人・カクタクスはゆっくり棘に覆われた腕を上げて、ガンナ目がけて渾身の一撃を思い切り振るった。
 砂柱を上げて叩き込まれたその腕には、何度も経験したであろう感触の替わりに、別の意味で何時も
足で感じている、砂の感触以外に何もなかった……。どうやら相手は死んだ振りをしていたようで、
魔人から見て九時と三時の方向に、動かない筈の人間――バスター達が咄嗟に避けていたのだった。

「ほぉう。そいつはいい事を聞いた……一応礼だけは、言っておこう…か」

 満身創痍のガンナが、傷だらけになったガンロッドを杖代わりにして、ゆっくりと立ち上がった。
 それから少し遅れて、チェン=グゥも

「お前さんよぉ、命(タマ)の取り合いってのは…止めを刺すまで気ぃ抜かないもんだぜ? こいつは
オレ達からの、冥土の土産みたいな忠告だが…な」

 刃を覆っていた天力の炎は既に消えてしまったが、それでも傷一つない太刀を杖代わりにして、
軽口叩きながら立ち上がった。

「この死にぞこないどもがッ! 今度こそ、ボロボロの蜂の巣に変えてやらぁぁぁあッ!!」

 再びカクタクスが大きく息を吸い込む。チェン=グゥはその隙を逃さず、ジャケットの袖に隠していた
投擲用のナイフを二・三取り出して、魔人の喉めがけて砂嵐と風の天力の助力を得て、投げつけた。

「でぇやッ!」

「くおおおおぉぉ……んぐぅ!?」

 音も立てず狙い違えず、カクタクスの喉にナイフが突き刺さった。喉に刺さったナイフを引き抜こうと、
悪戦苦闘しだしたカクタクスを見やりながら

「わりぃがガンナ、お前さんに美味しい所をくれてやるよ! 但し、ちゃあんとご馳走さましなよ」

「言われなくても! あんたの分は残さないからね!!」

「おーけー! 個人的にはサボテンよりも、肉や米の方が好きなんでねぇ」

 チェン=グゥの意図を汲んだガンナは、ガンロッドをホルスターに収めて、両手を胸の前にかざした。
 心を静め、魂に呼びかけて、ガンナは……己と『半身』が魂の結晶を呼び覚ます。

「わが魂とわが兄、トールの気高き魂よ…二つにして一つ、一つにして二つの風雷の牙よ……」

 ガンナの呼びかけに応じ、彼女の胸元がエメラルドと琥珀の輝きを生み出し……そして

「出でよ! 我が才牙『トルナード・ファング』『メガボルト・ファング』!!」

 ガンナの左手に白い虎の意匠が施された六連バレル(銃身)のガンロッドが、そして右手には
翼持つ青い龍の意匠に、左のそれよりも長めのバレルを持つガンロッドがそれぞれ収まった。

 ガンナが二つの才牙を生成させたのとカクタクスが投げナイフを抜き終えたのはほぼ同時。だが、
次の行動に移ったのはガンナの方が早かった。さっきまで使っていたガンロッドよりも大きな一対の
才牙を難なく振り回して、魔人に銃口を向ければ

「おっそいんだ…ってぇの!!」

 間髪も入れずに風と雷の天力の銃弾が、カクタクスを射抜かんと殺到する。それに対して最初の数十発
を食らいつつも、魔人は横に移動して射線を遮る様にチェン=グゥを盾にするよう位置どった。

「ぎゃははははっはー! これで労せず同士討ちだ〜〜〜!」

 射線を仲間によってふさがれてしまっても、ガンナは一向に構わず……

「悪い、チェン=グゥ。そこから動かないでよ!?」

「……て! オレはオレを巻き込む気かぁ? おぅわッ……!?」

 才牙を持つ両腕を交差させて、チェン=グゥ越しに風雷の銃弾を撃ち続けた。動くなと言われた
男であったが、動こうにも立っているのがやっと、倒れこまないようにするのが精一杯の状態だ。
 そんなチェン=グゥの脇をかすめるように、風と雷の弾がその後ろにいるサボテンの魔人に牙を
剥いて爪を立てて、獲物のお望みどおりボロボロにせんと次々と殺到していった。

 ――ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダッ!!
 ――ババババババババババババババババババババババババッ!!

「が! ぐがががが…あっぐわぁあ……何で、才牙の銃弾…が、曲折……すぅ……?」

 風と雷の銃弾が魔人の身体を次々と切り刻み貫通し衝撃を与えて『破壊』する。それでもこの三ツ星
の魔人は、すぐ前にいる動けなくなっている男に止めを刺そうと、溜め込んでいた空気を星の付いている
左腕に力を込め、もう一つの魔奥義『ブレイドハンマー』を仕掛けようと棘と鉤爪を伸ばしていく。

(こうなれば、星がバラされてもかまやしねぇ…この案山子なっている野郎諸共、串刺しだぁ!!)

 風雷の間断ない攻撃に耐えながら、魔人二人を刺すには十分な長さになった左腕の棘と鉤爪を、
ゆっくりと…弓を引くかのように後ろに引き絞って力を溜めていく。だが、ギリギリまで引き絞
られた魔人の腕が、その力を解き放つその一瞬……

 ――ザシュッ!!

「んぐッ! ……があああああぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜!!」

 カクタクスの左肩口にチェン=グゥの刀が刃の半分以上埋もれるほどに突き刺さり、未だ食らい
続けている風雷の銃弾によるダメージのそれと合わさって、腕が半ば千切れていったのだった。

「悪足掻きするのは悪くねぇけど……もう、この辺で潮時じゃねぇのか?」

 後ろを振り向かずに直立不動のままのチェン=グゥが、投擲ナイフの時と同じ要領で刀を
投げつけていたのだ。一度ならずに二度までも同じようなやり方で動きを止められた
カクタクス。それでも構わずにその左腕を振り上げて文字通り『叩き斬ろう』とするが……

「これで、終わりだ〜〜〜〜〜〜ッ!!」

 才牙によるの風雷の銃弾を止めたガンナがチェン=グゥの肩を踏み台にして、上空から
カクタクス目がけ、才牙による打撃でもってとどめの一撃を打ち込んだ!!

 白虎のロッドと蒼龍のロッドが、魔人・カクタクスの身体にバツの字を刻むようにして叩きつけ
られる。それにより千切れかかった左腕もその衝撃によって本体との永遠の別れとなって。朱い髪の
女と多肉類の植物を模した魔人が動かなくなり、そして……

「くっ……オレ様は…もっともっと…色々なものを……ボロ…ボロに……」

 その言葉を遺して、ゆっくりと…そして糸の切れた操り人形のように、三ツ星魔人・カクタクスが大の字
になって、砂嵐吹き荒れる砂漠の大地にその身を埋めた。肩口ごと離れ離れなった左腕の星が割れ、
斃された魔人の身体から冥力の炎を上げて、その身をその存在を隠滅させるかのように燃やし尽くし
ていく。こうなってしまえば、どう足掻いても生き返る魔人はどこにもいない……簡単に言えば

「オレ達の…」
「あたし等の……勝利ってことね」

 チェン=グゥが、そしてガンナがそうお互いに言えば緊張の糸が切れてしまったか、そのまま砂塵吹き
荒れるその大地の上に、大の字になって倒れこんだ。更なる増援や他の魔物が来ようとも、今の状態では
満足に戦えやしないだろう。その位、二人の体力は底尽きかけているのだった……。

「……それにしても、あんたが勿体ぶって才牙出さなかったから、こんなに苦戦したじゃない! あとで
町に戻ったら、ジェラード一バレル(=2リットル位?)分おごりだからね!!」

「はいはい…その件に関しては、ちゃんと覚えておきますゆえ、お手柔らかに。…っと、お前がそういう
事言うんだったら、いきなり『動くな』といって才牙で発砲したり、サボテン野郎に止め刺す時に人の肩
踏み台にしやがって……こーなったら、今度お前とやるときには、オレ主体でやるかんな! …いいな?」

 そうやって再び始まる痴話げんか交じりのガンナとチェン=グゥの夫婦漫才……もとい、駄目だし漫才。
 だが、彼らは本来為すべき仕事を終わらせてはいない。だが、今の状態では其の侭続投と言う訳にも行く
まい。果たして、一時間ほどのこの夫婦漫才のあと、二人は一先ずイーサイスの町に戻った。

 様々な補給と、カクタクスが遺した『赤い満月の夜』を待つために……。

 ガンナ達が町に戻るのとすれ違いに、全身を包帯で包み、上質な出来の外套をまとった一人の
魔人がカクタクスの死した場所に現れた。

「……我が番犬が倒されたか。まぁ、それでも其処までであろうな」

 魔人はつぶやくように独語した後、何事もなく砂嵐の中に入っていった。

〜To be NEXT EPISODE〜

  〜次回予告〜

 魔人ネ・フレン・カーを倒そうとホルスのピラミッドに突入したガンナと
チェン=グゥ。だが、其処には彼の罠が、ピラミッドの仕掛けが二人に
襲い掛かる!
 そのとき、ガンナの才牙が、真の姿へと『合身』する!!

 次回 風雷のガンナ『朱(あか)い髪の乙女(ガンナ)/風と雷一つとなりて

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