浴衣とチョコバナナ(『Sette Porte』より)

 このSSは……
1)シスター・プリンセス(以下:シスプリ)が嫌いな人
2)シスプリは好きだけどその二次創作が嫌いな人
3)シスプリで雛子が余り好きでない人
4)原作の設定に則っていないと嫌な人
5)マイシスである雛子が自分の名前でないおにいたまと……なシーンが見たくない方(マテ
6)このSSの作者である『ほろふる!』が嫌いな人

 ……これらのうち,ひとつでも当てはまる人は読まないで下さい
ませ。これらの条件に一つも当てはまっていなければ是非とも
読んでやってください。

――ひゅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 どぉぉ〜〜〜ん…!――

 花火の音が遠くの川の辺りから聞こえる。今日は町の八幡神社で夏祭りが開かれている。

 勿論、祭には欠かせない夜店や祭囃子、本来は暑気払として打ち上げられる花火は冷夏であっても
(半ば意地だといわんばかりに)夏の風物詩として上げられている。

 オレの名は双刃輝晃(ともは てるあき)。六人の妹がいる高校四年生(2年の時にバイトで大怪我こいて
出席日数が足りなくなってダブった)だ。今はそのうちの一人、雛子と祭に参加している。

「おにいたま〜〜〜!! 早くしないとヒナ、おにいたまおいていくよ〜!」

 あっちゃ〜〜、これ以上読者に無駄話していたらヒナが向こう行ってしまう!

 そうなる前にオレはヒナの元に向かった。


  「もぅ……おにいたまったら。『今日はヒナの誕生日だから一日中一緒だよ』て言ったのに…」

 口では怒っている様だけど、顔のほうではそんなに怒っていない。

「ごめんごめん……その代わりと言っちゃあなんだけど何かおごるよ。勿論これも……」

 その続きを……

「『お誕生日プレゼントの中に入ってるよ』……でしょ?」

 ……ヒナにセリフを取られ形だけど、間違ってないし、ま、いっか。こーやってヒナと一緒にほのぼの
まったりと過ごせるのは夏休み中では最後――あさってからは海外でバイト(遺跡調査団の護衛)
三昧――になるし、今はこの時を楽しむとするか。

   ヒナに引っ張られ、オレは射的の所に連れていかれた。

「どーした…ヒナ?」

 『何か有るのか?』と言うよりも、ヒナは出店に指を指して、

「おにいたまー! ヒナ、あそこにある『おっきなピ○ュー』欲しいの」

 射的……そーいやぁオレってばモデルガンであっても銃器苦手なんだよなァ…と、しぶしぶ射的に使う
それを見たら、なんともまぁ珍しいことに、お約束のコルク式の弾丸を放つタイプのエアガンではなく
ボウガンだった。それもクォレル(ボウガン用の矢)の先端部がコルクになっているやつだ。オレは内心…

「(いける! いけるいけるいけるぞぉぉ!!!)」

 …と、無意味に握りこぶしを握り締めてガッツポーズを取っていた。

「おにいたま……どぉしたの?」

 怪訝な顔をしてオレの顔を覗くヒナ。

「ふ……なんでもない…あれをゲットすれば良いんだな」

「うん!!」

「それじゃあ待ってろ。おにいたまが今すぐゲットしてやるからな」

 ……30分後

「おにいたま…すっごかった〜〜! 最初の一発で○チューゲットして、それから立て続けに全部ゲットしたんだもん!!」

「そーだろそーだろぉ!」

 射的でゲットした数々の景品を背中のスポーツバッグ――実はこれも射的でゲットしたやつだ――に入れ、
オレは自慢げに胸を張った。勿論、ヒナが欲しがっていた『おっきなピチ○ー』は最初の一発でゲットして、
今はヒナの腕の中で大人しくしている……。それにしても、これがライフル銃だったら当たらない所の騒ぎじゃないな……
とここでオレは神様に感謝するのだった。

「そーいやぁヒナ……腹、減ってないか?」

 オレの一言に応じるように、ヒナとオレの腹の音が同時に鳴るのが聞こえた。その音でどちらからともなく、

「「くははっ……(くしししし…)」」  ……と、お互いに笑みをこぼすのだった。


   そーやって笑みをこぼしながらも、オレは夜店でやきそばやらたこ焼きやらお好み焼きやら買ってきて、
ヒナと一緒にどこか落ち着いて食べられる場所に移動した。

「ここでなら大丈夫だな…ヒナ、ここに座って」

 オレはベンチにバンダナを敷き、そこをヒナの為の特等席にした。だが……

「……おにいたま、ヒナ…おにいたまのひざの上がいいな…だめ?」

 そう言いながらオレの方に近づく。少し考えた後…

「『何でも言うこと聞く』ていったしな……その代わり、食い物浴衣にこぼすなよ」

「うん!!」


   返事するが早いか、ヒナはオレの膝の上にまたがって抱っこ状態で座った。オレは内心……

 (これを咲耶が見た日には……地獄見るのは火を見るより明らかだな……)

 ……そう思いながら苦笑いしてしまうのだった。そんな事を思っていると膝の上からヒナが……

「おにいたま、はい……あ〜〜ん」

 ……と、バカップルのお約束を殆ど人気のないここでやるのだった。オレは少しばかし躊躇ったが……
ハラを括って目を閉じて口をあけ、ヒナが食い物をオレの口に持ってくるのを待つ。
 …だが、何時までたっても一向にその気配はない……そこで目をあけると…。

「まぐまぐ…もぐもぐ……」

 見事にフェイントを突かれたよーだ(しくしくしく……)。

 そこで今度はオレが、口の中の物を飲み込んだヒナに……

「ヒナ…今度はそっちの番だぞ。お口あけて…」

 そう言ってヒナにお好み焼きの一片を口に持っていこうと思わせて……やろうとしたら……

 ――まぐん!――

 ……お好み焼きを食い付かれた……。食い付いたものが口の中にあるにも関わらず、ヒナは…

「おにいたま……まだまだダネ…くしししし……」

 …どっかで聞いたようなセリフを口を手で押さえながら言うのだった。


   買ってきたものを全て胃に収めてすっかり夜も更け……そろそろ家に帰る時間になろうとしているとき、ヒナが、

「おにいたま…最後に『チョコバナナ』食べたいの…」  オレは腕時計を見て、まだ夜店がしまる時間でない事を確認すると、二人でチョコバナナを売っている夜店に行った。

「毎度ぉ〜」

 夜店のおばちゃんからオレの金と引き換えに、ヒナの手に手渡されたピンクのチョコレートでコーティング
された黄色い南国の果物は、彼女と共に跳ねまわっている。

「そんなに跳ねるなよ……チョコバナナ落としてもオレは知らないぞ…」

 背中には射的の景品たちを収めたスポーツバッグ、右手には『おっきな○チュー』左手にはチョコバナナという
まさに完全武装(何の?)でオレはヒナに注意を促す。だが、その注意も無駄になってしまった。

「おにいたまぁ……きゃ!」

 跳ね上がって着地する時に石を踏んで……

 ――どてん!!

 ヒナは前のめりになって派手に転んだ。
 ……勿論、チョコバナナは地面に落ちて昆虫以外には食べられるものではなくなってしまっている。

「……ふぐっ…うっ…」

「大丈夫か?…よっこらせ…と」

 オレはうつ伏せになったヒナに近寄って、彼女の両脇を掴む。そして、ヒナを立たせた。右腕を塞いでいた
荷物(ぬいぐるみ)はオレの傍らに置いている。

 浴衣についた土埃を払い、改めてヒナの姿を見ると、膝には血が滲み、真新しい浴衣を赤く染め、ヒナの目には涙が浮かんでいた。

「(従姉妹の花穂ちゃんじゃないんだから…)ほら、ヒナ……そのままにしていると傷が化膿するぞ」

 オレは…心の中で突っ込み入れつつも涙を拭いてヒナを抱きかかえ、荷物を手にとって近くの公園に向かった。ヒナの怪我を消毒する為に。

「傷にしみるけど…我慢しろよ?」

 近くの公園でヒナをベンチに座らせて、傷口を水に浸したバンダナで拭く。バンダナの冷たさが傷口に染みるのか、時折…

「いつうっ…!」

 …と目に涙を溜め込みながら声を上げる。オレは痛みに耐えるヒナの顔を見て、

「もし痛かったら堪えてないで『痛い』って言ってくれな?…少しは優しくするから」

「うん……」

 そう言って再び傷口を拭く。勿論さっきよりも優しくいたわる様にして。

「これであらかた傷の方は拭き終えた…と。後は浴衣のほうのしみ抜きだ」

 傷の手当てで一寸ばかし頑固になっている浴衣の染みを取ろうとしたとき、ヒナが…

「あのね、おにいたま……」

「どーしたんだ?」

「実はヒナね……『くまちゃん』よりも『おっきなピ○ュー』よりもね…もっともっとほしいものがあるんだ……」

 唐突に切り出したヒナの一言、何時も無邪気で親鳥についていくカルガモの雛のようなヒナの…何時もとは
違う真っ直ぐで真剣な眼差し。それに中断されてしまった浴衣の染み取り。

「その『欲しいもの』ってなんだい…?」

「あのね……おにいたま、…もっと、ヒナの近くに顔を寄せてくれないかな?」

 顔を少し赤らめつつ、ヒナはオレに『お願い事』を言う。

「あとね、…目をつぶってほしいの……」

 なんか変だな……そんなことを思いながらオレはヒナの言うことに従った……そして…。

 ――KISS!!――

 はじめはヒナがいたずらで『おっきな○チュー』に口付けさせたと思ったが、唇に触れた温もりとチョコの匂いから、
ぬいぐるみではなく多分、ヒナのだとわかった。ヒナが唇を離して…

「お……おにいたま、め…目をあけて……いいよ?」

 ……と、いわれて目を開けると、そこには、さっきまで大胆にキスをしてしまったのを自分でもびっくりしていた
オレの――血の繋がらない――可愛い妹が、顔を真っ赤に染めていた。

「ひ……ヒナ、なんで……?」

「はぁ…はぁ…くるしかったぁ……」

 ――がくぅ!

 ……どーやら、顔が真っ赤っかだったのはキスしたときに殆ど息を止めていたようだ。

「…くしししし……」

「どーしたんだよ、ヒナ」

「あのね…おねえたまが言ってたんだ『キスの味はレモンの味がするのよ』って。でも、おにいたまと
キスしたらね……チョコバナナの味だったんだもの」

 …え゛?……咲耶(ヒナ曰く『おねえたま』)が『キスの味はレモンの味がするのよ』って言ったって?
……それに、チョコバナナ…って…確かにチョコバナナはさっき食ってたけど……。

 オレの頭の中は酷く混乱し、何が何だかさっぱりわからない。

「わざわざそんな事のためにオレにキスをしたのか?」

 こんがらがってショート寸前なオレは、表向き冷静な振りをしてヒナに詰め寄る。

「おにいたまにね…ヒナの初めてのキスを貰って欲しかったの……だから、おにいたまが喜ぶ様に
チョコバナナを買ってもらったけど……」

 その後の言葉が出ないのか、ヒナはぽろぽろと涙を流す。

「ば〜か…そんなことで泣くんじゃないよ。オレだって正直うれしかったよ…まさか、ヒナの一番欲しいのがオレだったなんてな……」

 そう言いながらヒナの頭をなでてやった。その一言を聞いたヒナは……

「おにいたま……ダイスキ!!」

 泣き顔から満面の笑みに表情を変えてオレに抱きついた。

 ……こりゃあこのままバイトに行ったら、ヒナのことが心配だな……。

 ……今回の仕事、オレが抜けても他の奴等がいるからな…キャンセルして休み貰おう。
ユーカリの木に抱き付くコアラのようになった彼女を見て、オレはそう固く決意した。

  〜END〜

  〜執筆者あとがき〜

この原稿上げるまでに大変無駄な時間の使いこみ&無駄無駄ァなテキストを詰め込んでしまって
モー。しわけありません(爆)。
今回はBGMにスピッツの『涙がキラリ』を聞きながら読んでやって下さいませ。

それにしても今回も何故か一寸痛い(前回は精神的に、今回は物理的に)シーンがありますけど、
顔を背けずに読んでやって下さいな。

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