Sister Meets Brother(『―U´s文庫/ナルラトホテプ―』より)

 このSSは……
1)シスター・プリンセス(以下:シスプリ)が嫌いな人
2)シスプリは好きだけどその二次創作が嫌いな人
3)シスプリで咲耶が余り好きでない人
4)原作の設定に則っていないと嫌な人
5)マイシスである咲耶とお兄様の喧嘩シーンなんて見たくない人
6)このSSの作者である『ほろふる!』が嫌いな人

 ……これらのうち,ひとつでも当てはまる人は読まないで下さい
ませ。これらの条件に一つも当てはまっていなければ是非とも
読んでやってください。

 何時の頃からだろう…この人の事を好きになったのは。
 何時の頃からだろう……血の繋がらない『義兄(あに)』の事を 愛しき人として思い始めたのは。
 今、私の隣で眠るこの人の事を、一緒の毛布の中でまどろみなが ら出会った時の事を思い出した。

1st Girl Meets Boy

 そう、まだ私が小学校入って間もない頃……パパが飛行機事故で 死んでから半年くらいに、
ママがお義父様(おとうさま)と再婚する 事が決まって、お互いの家族の事を知るために
顔合わせをした時の 事だった…。

「ママ〜〜、どこに行ったのぉ……?」

 『顔合わせ』の当日、お義父様の家族――言うまでもないけれど お兄様と衛ちゃん、千影に
鈴凛ちゃんの家族――が来るまでの時間に 余裕があったので、待ち合わせ場所になっていた
ホテルを探検して いて……自分がどこにいるか判らなくなって……蹲って泣いてしま ってたの。

「ひっく…! ひく……、あ〜〜〜ん」

 そんなときだった。泣いていた私の元に一人の男の子がやってき た。

「どーしたんだよ……こんな所で泣いて…」

 その男の子はぶっきらぼうな口調で泣いている私に話し掛けてき た…。

「あんたには関係ないでしょ?」

「関係ないって……? お前なぁ…泣いている女の子を無視して去 っていったらオレ、親父に怒られるんだぞ…」

 そう言いながら、その男の子は私の手を取ってこう言った。

「どうせお前もオレと同じようにホテルを探検して迷ったくちだ ろ? それだったら一人よりも二人でいたほうがいい。一緒に家族 を探そう」

「すいませ〜ん、この子の……そー言えばさ,ここに誰と一緒に来て たの?」

 私の手を引いていた少年は,肝心な事を聞いていなかった。

「あのね……ただやみくもに探そうとしたの? あきれた。いっし ょに来ているのはママと生まれたばかりの妹よ」

 そう言いながら私の目には涙は止まっていた。

「へぇ……オレの方が少し多いな」

「多いっ……て?」

「親父と妹が三人」

 その言葉を聞いたとき,ふと,今朝ママが言っていた事を思い出した。

『双刃(ともは)……さんて言ってね…そこには上に男の子が一人, あなたの下に女の子が三人いるのよ』

 その事を思い出した私は少年に名前を聞いた。

「オレか? オレは双刃輝晃(てるあき)…小学四年生だ」

「え? て、事は私より年上だったの…それに双刃(ともは)……っ て」

 びっくりした。まさか,自分に親切にしてた少年が自分より年上 で…しかも、これから兄になる人だったなんて。

「オレが自己紹介したからにはお前もやんなきゃ不公平だろ?」

「そうですね。私の名は……咲耶。小学一年生です」

 これがお兄様との出会いだった…。それから少し経って……。

2nd Sister VS Brother

「お義父様(おとうさま)のうそつきー! 約束したじゃない! ど ーしてTDL連れてってくれないのぉ!!」

 苗字が『双刃』になってから始めての夏休み。私たちは,一学期 の終わり頃から家族みんなでTDLに行くことを約束していたの… でも、決行の日の一週間前に、急な仕事が入ってしまい、それが原 因でその予定はキャンセルになっちゃったの。

「あんなぁ咲耶……親父には親父の都合ってもんがあるだろ…?  わかってくれよ…」

「おにいさまは良いわよ! 別に行っても行かなくてもいいんでし ょ?」

 お兄様と一緒になった当時は、『お兄様』ではなく『おにいさ ま』と呼んでいたけど, この当時はよそよそしさが手伝っての呼び 方だった。

「何だよその言いぐさは…咲耶! お前だけがTDL行けなくてが っかりしているんじゃないんだ! 少しはみんなの気持ち考えろ よ!!」

 そういってお兄様は、私を……

 ――PANG!!

 頬を引っ叩いたの……最初,何が起きたのか判らなかったけど、 叩かれた痛みよりも……

「……お…おにいさまのばかぁ!!」

 ――BANG!

 その時の怒りで今度は私がお兄様を殴ってしまい……結局、 お義父様とママに止められるまで殴り合っていたの。

 赤くはれた頬のまま部屋に入ると、私は喧嘩してたときのテンシ ョンがよみがえり……

「なによおにいさまなんて……ばかばかばかばかばかぁ! 大っ嫌 い!!」

 ――ぼふっ!

 そう言って、お兄様の部屋側の壁にクッションを投げ付けた の……。自分の考えを正当化するようにして。
 心の中では……自分が正しい筈だと思って…でも、本当は自分の 方が正しいと思っていないのに……それを認めたくないから、『正 しい事』から逃げたかったから…。そんな事を考えていたら何時の 間にか泣きながら眠っていたの。そしてその夜の事……。

「咲耶ぁ……! メシだぞぉ」

 部屋の中が暗く感じた時、お兄様の声が階段の下から聞こえた。  その声を聞いた私は、思わず……

「いらない! おにいさまと一緒にご飯なんて食べたくない!!」

 と、言ってしまったの。それを聞いたお兄様は……

「何だよそれ! まだおこってんのか……!? いい加減にしろよ 咲耶!!」

 そう言いながらドタドタと音を立てて二階に上がってきたの。

 お兄様が私の部屋に入ろうとドアに手をかける。その向こう側 で、ドアノブを引っ張って抵抗する私……でも、小学一年の女子 (わたし)と小学四年の男子(おにいさま)の腕力ではどう考えても天 と地ほどの差がありすぎて、その抵抗は無駄に終わった。

「咲耶…! 本当にいい加減にしろよ!!」

 そう言ってお兄様は私の手を掴み、無理やりにでも下に行かせよ うとして引っ張った。でも、私はそれを…
「いやぁ!」

 力いっぱい拒んで、お兄様を階段に突き落としてしまったの。

 お兄様が階段を転げ落ちるのを見たとき、私の目には……飛行機 事故で死んでいったパパが、今度は自分の目の前で死んでしまうよ うな錯覚を覚えて、思わず夢中で階段を降りた。

「おにいさま…おにいさま……おにいさまおにいさま……いやぁぁ ぁ〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

 私は泣き叫びながら階段を駆け下り、ぐったりして動けなくなっ たお兄様に近づいて……

「やだぁ……しんじゃやだぁ……死なないでよぉ…おにいさま ぁ……」

 そういいながら、私がお兄様を揺らしていると,その手を握っ て……

「咲耶……」

 その一言を言った後,気を失ってしまったの……。その事件が原 因でお兄様は、夏休みを過ぎても一週間ぐらい入院しなければなら なかった。

3rd Sister Kissed Brother

 ――KNOCK KNOCK!

「おにいさま…入りますね……」

 その年の夏休みも終わりに近づき、その時にやっと私はお兄様の入院している病院に面会に行くことが
出来た……それまで、お兄様を事故とはいえ、怪我をさせてしまったことに何らかの申し訳無さを感じて、
その時までずっと面会する勇気がもてなかったの。
そんな時にお兄様からの伝言で一言『咲耶に会いたい』と、言っていたの……それで、私は決心したの。

「あぁ……いいぞ」

 お兄様の病室にはお兄様のほかに,何人かいるのだけどその時は他の人たちはどこかに出払っていて
兄様一人、ベッドの上で私を待っていた。

「あの……おにいさま……」

 入ってきた瞬間に生まれる気まずい沈黙…それは,今まで会えなかった空白の時間を
そのまま圧縮させたような感じだった。

 何か話さなきゃ……それはわかっているけど、その言葉が出てこない。そんな時にお兄様が……

「咲耶……その…ごめんな…すまなかった…」

「おにいさま? 何を…」

「もう過ぎてしまってどうしようもないとは思うけど、おまえの 顔…引っ叩いて喧嘩になったろ?
 あの後親父にこっぴどく叱られ て……それで…」

 お兄様が言いたかったこと…その続きを言うように……

「それは私だって同じ…本当は私が悪いのに、ついムキになっ て……ゴメンナサイ」

「ふっ…どうやら,咲耶もそう考えてたんだな」

「おにいさまだって…」

 その一言で,お兄様と私は…久しぶりに笑うことが出来た。

「それじゃ……おにいさま…仲直りの証にね……目を閉じてほしい の」

「仲直りの証に? なんでだ? いきなり……」

「だって……すっごくはずかしいんだもの…おにいさまが目をあけ ていたら」

「そうか…目……閉じればいいんだろ?」

「うん……」

 そう言いながら私はお兄様に近づいて

 ――KISS!

 お兄様の頬に口付けをした。

「さ,咲耶!? お……おまえなぁ!!」

「けんかの後に仲直りするには『ほっぺにちゅ』するのが良いんだ って……」

「どこでそんなことを…? まさかTVの影響か?」

「うん!」

 力いっぱい頷いた私の顔は,頬にキスされたお兄様同様,真っ赤に なっていたの。

「何だよ…咲耶……トマトみてーに真っ赤じゃねーかよ!」

「そーゆーおにいさまだって……お日様みたいだよ…」

 今までギクシャクしていたのが嘘だったかのように…私とお兄様 は二匹の子犬のようにじゃれあっていたの。

 Finale?

「思えば……最初に会ったときはお互いにあんな様な感じだった な……」

 そう私はつぶやいて、今だ目を開けないお兄様の頭を優しく撫でる。
 そして……

「お兄様…ラブ……じゃ、なかった…大好きよ

 あの頃を思い出して,耳元で囁きながら,その勢いで頬に口付けをする……。
 今度は自分の『思い』を伝えるために……。

〜END?〜

  〜執筆者あとがき〜

 この作品は『咲耶BDSS』と,銘打っておきながら誕生日プレゼントも何もないただ単に過去の思い出
を綴った半ば反則に近いSSです(元のヴァージョンをUPしたのが’03年の暮れですし)
 この頃から、主人公(テル)は妹に翻弄されてばっかりだなぁ……トカ思いつつ。
今回のこれに関しては、少し乙一作品の影響やら(原作での)咲耶の作品を参考に
したりして書き上げました。
 ちなみに個人的にこの作品は、これが始まりといった感じでありますので。

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