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雪が降りしきり、クリスマスムード一色のエンフヴィル。
その街外れにある人気の無い墓場に、赤い番傘を差し、真っ黒なトレンチコートを着込んだ
「…静……お前が居なくなって今日で六年目だ。オレは今もおまえの事を一時
たりとも忘れた事はない……
そう言って彼は、普段は吸わないタバコに火をつけた。
「……静、お前を殺した『十字のアザを持つ魔族(やつら)』を、オレが絶対… その後に続く台詞は、涙とともにかすれていった……。 ――がさがさ…… 物音と共に近付く並々ならぬ悪意、それを感じて険しくなる真弘の表情…。 「…誰だ!!」 そこに現れたのは、顔に十字のアザがついた……魔族の男だった。 「久しいな…最後に会ったのは君の『ペット』を動けぬ君の眼前で切り刻んだ時以来だなぁ…」 その言葉を聞いて怒りあらわにするも、勤めて平静を装う真弘。
「主犯格のお出ましか……本来なら八人すべてに逢いたかったが……貴様に…、 「ふっ……それは光栄だ。だが、私としては…廃人になった君に会いたかった けれどねぇ……」
魔族の男の、傲岸不遜,かつ慇懃な態度の裏には、鞘に収まっていてもなお禍禍しい
……力の差は余りにも歴然としていた。 「がはっ……!!」 勢いを失い、前のめりに倒れる真弘。
「クックック…どうした、君の『ペット』の仇はまだ傷一つ付いてはいないぞ……そんなんで
聴こえるように、大きな声で挑発する魔族の男。彼の『ペット』という言葉に反応して、 「てめぇぇ……『静』を…オレの女を……その汚ねぇ口で汚すんぢゃねぇ!!!!」 怒りと共に、真弘の右目が眼前の魔族と同じ血の色に変わった。 「てめぇは…絶対……に…ぶっ殺して……やらぁー―――――!!!!」
その叫び声と共に、怪我人とは思えない足取りで真弘は『静』を愚弄した男に向かって 「愚かな…貴様は誰に牙を剥けているんだ……?」 「オレの女を…幸せを…未来を…地獄の底に叩き落とした……最低最悪の…ゴミ野郎だぁ―――――!!」 真弘が放ったその一撃は魔族の男の片腕に阻まれた……そして。
と、そこに、黒いフードを目深に被った男が現れた。 「『アグ・ナーヴォン』様、そろそろ、時間でございます…」 と、言いながら『アグ・ナーヴォン』に血糊が付いた懐中時計の時間を見せる。
「そうか……、もうそんな時間か……久々に会ったというのに暇つぶしにしかならんとは…… そういいながら、黒フードの男を引き連れて『アグ・ナーヴォン』は去っていった。 「……『アグ・ナーヴォン』か、その名前、この痛みと共に…刻ん…だ……」 雪原に咲く、アネモネ畑の上で、真弘は気を失った。 吹き荒れる街外れの中を歩く怪しげな二人組、そのうちの体格のいい方が立ち止まる。 「…グ……」 うめき声を噛み殺す彼の足元には、数滴の赤い血とともに、右腕が落ちた。 「ア…アグ・ナーヴォン様…どうなされました!!?」 主の異変に気付き、近寄る黒フード。 「フフ……何でもない」 「ですが……どう見ても…」 「腕が落ちた程度のこんな傷、『クロイツ』お前の手ににかかれば問題はない。そうだろ?」 「確かに…でも、このままでは……」
そう言いながら主の右腕を付け直す黒フード――クロイツ――彼の右手には毒蛇が絡む
「クロイツ…それよりも、嬉しいのだ……我等が『あのお方』にお仕えになってから幾星霜、 主の右腕を元の状態にしたクロイツは… 「ははっ!! それでは……本国に戻りましょう…」 ……そして彼らは、地面に残った血痕を残して『跳』んだ。 〜断章 Past & Nightmare〜 (……夢を…見ていた) ………オレがまだちっちゃなガキだった頃……桜が満開のある晴れた昼下がりに…銀色の髪した…天使に出会った。 19年前・公園の小山・春 『ンにゅぅ……ん。誰?……おねぇちゃん』 『……初めまして…これから、キミの家にお世話になる【苧環 静】(おだまき しず)…よろしくね!まーくん』 『しず……ちゃん? 頭にネコみたいな耳生えてるけどなんで?』 『ネコじゃないって! きつねだよ!!』 『きつね……? なんで?』 『だって、あたし、ライシアンだもん。尻尾もあるよ……』 『ほんとうだ! すっげーやわらか〜〜い』 『こらこらぁ! そんなに触っちゃだめだよぉ!!』
(………オレがはじめて静に会ったとき、大人しくて、可愛い娘だな…と、思った。
17年前・真弘の家・夏 『…まー!アンタね、静ちゃんのお気に入りの服を汚したんでしょ!! これであいこじゃない!!!!』
『だってさだってさ…かーちゃん、アレってばしづが近所の男の子と遊んであーなったん 『…たく……アンタねぇ…』
(………彼女絡みで何かあると、すぐオレが槍玉に挙げられたっけなぁ。
でも…どうしてオレ、 13年前・真弘の家・秋 『まー−ぼー−! どうしたの?そんな所で……』 『……静には関係ねぇよ!!』
『……ふふぅ−−ん、もしかして、いっつも遊びにいってるフェブラリィの家のメイドさん 『……うっさいなぁ! 静に何が解るんだよ!!』
『だって解るもん!! …あのメイドさんが好きになった人って……あたしの……すきだった 『泣くなよ…静…オレまでまた…えぐ…えっぐ……』
『『わ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!! わ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(………結局朝まで泣いて、二人してオヤジとおふくろたちに迷惑かけちまったな……。 13年前の寒終3日・真弘の家・冬(静の誕生日の夜)
『真弘、静ちゃん、折角の静ちゃんのお誕生日だけど、今日は母さんと龍真(リョウマ――真弘の兄)と共に 『『父(おとう)さん! 行ってらっしゃい!』』 『おとうさんたち、いっちゃったね』 『……うん。でも、静……本当にいいのか? 父さん達に黙って魔物退治なんて……』 『嫌ならいいんだよ! 一人でも行くから』
『そんな事言ってないって!! ……オレもいくよ!! 静一人行かせると危険だし…それに,一人で (この事件が、あいつに対する思いに気付いたんだ……) 同年同日、森の中 『静! …逃げろ!! 【ライシアン狩り】が直ぐ其処まで来てる!』 『でも、まーぼー! このままじゃ……追いつかれちゃうよ!』
『ここはオレに任せて、あいつはたった一人でここにきてる。地の利の上ではこっちに分がある!! 『う……うん』 (だが、結局それは失敗に終った) 『ケケケケ…小僧、なめた真似し腐ってからにィ……』 (……そういいながら、うつ伏せになったオレの顔を踏み付けるライシアン狩りの男) 『くぅ……ちくしょう…』 『だが、てめぇを殺せば、あの銀髪のキツネは俺の物も同然だぁ……』
(……オレの近くには、【グラヴィティ・チェイン】で拘束された静の姿が見えた。舌なめずりしながら 『クッ…カカカカカカ〜〜〜!! あの世で泣きごと言ってるんだなぁ…小僧!!』 (…殺される……!! そう思ったとき、やつの身体に向かって氷の弾丸が走った)
『水の守護者(ガーディアン)玄武よ…我が声に応えよ 我が思いを汝の氷刃に変え 我に害するものを 『ごあばぁ!!……こ、…このキツネがぁ!!』
(……ハチェットの切っ先をオレから静に代えたライシアン狩り。それによって維持されていた 『やめろぉぉ!! 静に……静に手を、出すんじゃねぇ−−−−−−−−−!!!!!!』 (……無我夢中だった。ヤツに静を傷つけたくないと思っていた) (……オレは必死でヤツに対して手にした木の棒で戦意が喪失するほどにぶん殴った……) 『このクソガキがぁ……殺してやるぅ…ごろぢでやるぅ……!!』
(……ぼろぼろになってなお怒り狂うライシアン狩りに対しても、オレは恐怖も容赦もなく殴りつづけた…… 『静、に…手を出すと……ゆるさ……ねぇ!!』 (……ヤツに対して止めの一撃を刺そうとすると、後ろから) 『そこまでだ!真弘!!!!』 (……聞きなれた声がそれを静止した) 『まー!お前がそばに居ながら、何故、静を外に出した……』 『ごめん、リョウ兄……』
(……殴られる!……そう思ったとき……オレの代わりに、誰かがぶっ飛ばされるのが聞こえた 『『静!!』』
『……ゴメンナサイ…まーぼーをこんな目にあわせたのは、全部、あたしのせいなの。だから…… 『……そうか。ごめん、まー…静。とにかく、かえってお誕生会にしような……』 『『うん』』 (そして、家路に急ぐ途中、オレは頬を腫らした静に声をかけた) 『静…まだ、ほっぺた…痛いの?』 『うん……でも……』 『でも?』 ――KISS!! 『これで、直ったよ……まーぼー、ありがと。かっこよかったよ』
(……この、頃だな……これが『静』に対して気になっちまった原因…なんだな……でも…… 〜終章 Endless Pain〜
ここはクラウド医院。 「全くこの男は……治しても治しても怪我をこさえてやってきおってからに……」 滅多な事ではこんなことはいわないドクタークラウドも、この日ばかり言わざるを得なかった。 「ルシード、輸血用のO型の血液が足りない。献血に走ってくれないか…」 「あ、あぁ…」 真っ赤になった真弘を見ずに、ディアーナがドクターに問う。 「あのぅ……あたしは……どうすれば……」 「一応、ルシードの邪魔にならないように大人しくしてろ」 「わ……わかりました…」 叱られた仔犬のように大人しくそれに従うディアーナだった。 「……何とか血液は集ったようだな…これで、あとは……」 そういいながら黙々とオペを始めるドクターであった。 マサヒロの怪我の手術から一時間後……
「……今は、ギプス用の石膏が切らしてるから添木で何とかしてるが……さて、ルシード、
「あぁ……何時もの様にパトロールしてる途中、墓場の方角でカラスたちが鳴いていたから、 「なるほど……で、次」 事務的に冷たくカルテに書き込むドクター、淡々と前後関係を話すルシード。それから十分後…… 「そういうわけか……に、してもこいつは何かにつけすぐこっちに入院するもんだから……この男は……」 「それで……怪我の状況はどうなっている?」
「右のアバラと肩甲骨に何本かのヒビに…右腕及び右足が単純骨折。それによる大量出血と言った所か 一方、真弘の病室では……。 「ほんっと、真弘さんってばよくここでぐ〜〜〜っすりと寝てますねぇ……」 独り言を言いながら、真弘の寝顔(?)を見るディアーナだった。 「でも、寝てるときの真弘さんってばなんっか意外と可愛いですねって、何一人でぶつぶつと……」 そういいながら、真弘の顔をじ〜〜〜っと近くに見つめるディアーナ、そこでいきなり真弘が…… ――がばぁ! 「静〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!」 と、言いながら勢いよく起き上がって、ディアーナを抱きしめた。 「キャ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!」 いきなりの事で気が動転し、ディアーナは近くにあった洗面器で真弘をぶん殴った。
「静〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜……きゅう」 「ルシード、後で自警団(第一部隊)のほうに連絡入れてくれ…」 「あ……あぁ」 と、そこにディアーナがやってきて…
「ちょっと待ってください! あの…先生、ルシードさん……。もしかしたら真弘さん、
「他の誰か……か、わかった。貴様がそこまで言うのなら今回は大目に見てやろう 「あぁ……、本来なら即刻ブタ箱行きだがな……ドクターから聞いた状況で それやると…やばいしな」
真っ白な雪が全てを包み込む。それはまるで、枯れたる世界を『銀色の月』へと
〜To be Continued〜
〜執筆者あとがき〜
数年くらい前に上記のサイトに掲載されていた奴を一つに纏めて、今見ると『うわぁ! すっげぇ変』と感じた 次のエピソードでは、もっと暗く逝きます……(賢者の石の材料になって来い!!)。
あと、おいらのmooPBeMSSでお約束? なイメージCVリストをば。
PC
福士真弘(PC047)自キャラ……中井和哉 NPC
トーヤ・クラウド……小杉十郎太
苧環 静……茂呂田かおる
アドルフ=B=アグ・ナーヴォン(アグ・ナーヴォン)……若本規夫 ……最後まで逆上せずに読んでくれて有難う御座いました。 |