「反三国志 関雲長北伐戦記」
   
一巻:中原へ切り開く道 二巻:河北へ突き進む道 三巻:統一へ踏みしめる道
  著:河原谷創次郎  学研 歴史群像新書
解説:
 関羽雲長を主人公とした三国志シミュレーション小説。
(一巻)
 呉軍に包囲された麦城から脱出する前夜、夢で北斗南斗の神と遭遇した関羽は封神されることを断り、代わりに敵将呂蒙が封神されることも断る。
 そして心機一転した関羽は麦城を包囲する呉軍に反撃、それを食い破ることに成功する。
 荊州での魏、呉から挟撃を潰した蜀軍は君主劉備の理想、漢帝国回復のため中原へ進出し魏群と激しく戦うこととなる。 (二巻)
 魏軍の包囲からからくも抜け出した蜀軍は魏軍西方軍団・併州軍団・匈奴軍団・河東集団を連続して撃破、洛陽を確保する。
 更に魏王曹操の前衛、夏候惇を許都全面で討ち取る事に成功する。
 同じころ揚州に呉軍が迫るが、蜀軍から開放された張遼が帰還。呉王孫権率いる呉軍を徹底的に叩きのめす。
 また、呉軍は襄陽で張飛に甘寧を討たれ、本国を諸葛孔明に先導された山越賊に焼かれ一気に没落する事となる。
 勢いに乗った蜀軍は後方の騒乱を馬超、劉循が鎮圧し、張飛、関羽、趙雲が一気に魏都「業β」を突く作戦に出る。
 しかし、連戦で魏軍を破った関家軍は黄河・倉亭津にて曹家嫡男の曹ヒ率いる精鋭「万弩射声」に致命的な大敗を喫してしまう・・・
(三巻)
 関家軍を除く蜀軍は順調に華北攻略を進めていた。
 魏軍は魏都「業β」に篭城するも乱世の奸雄こと曹孟徳が死去、蜀が中原を制覇したかに見えた。
 そこに蜀での惨劇と江陵への呉軍再侵攻が伝えられる。
 馬孟起が囚われ、黄漢升戦死、悲報を受けた蜀軍、否、劉玄徳率いる侠客の群れは中原をひた走る。
 

感想:
(一巻)
 神様を怒鳴りつける関羽。
 更には赤い装束で人の数倍の速さで動き、額の傷を隠すためにプロテクターを装着し、それで命拾い…どこかの赤い彗星ですか?貴方は(笑
 しかしながら、三国志モノとしてはお約束の関羽生存のネタをスムーズにするために北斗南斗を出したのはOKなんじゃないですかね(三国志の別の人物が北斗南斗に借をして寿命を延ばすという話があり)。
 で、この世界では関羽の代わりに○○が封神されたわけですが後々には○○廟が各地の中華街に立つんですかねぇ?関羽が義賊で塩の密売人(=商売人)ということで華僑が崇めてる側面もあるからなぁ。
(二巻)
 呉軍フルボッコ・・・
 とりあえず、呉軍は地方勢力以下の戦力・国力に落ち込みました・・・OTL
 これで魏蜀二大勢力による決戦となるわけですが・・・一〜二巻において魏軍は徐晃、曹仁、夏候惇、曹真、曹休を失い、蜀軍は史実では死亡している筈の関羽・関平、馬良、厳顔、法正が生存…チート過ぎますよ。
 まあ、それでも無敵関家軍が「万弩射声」に長篠の三段撃ちよろしく大敗してますから何が起きるか分かりませんなぁ。
(三巻)
 魏軍が曹孟徳の死去で崩壊し、蜀の天下と思いきや南蛮、そして呉が立ちはだかります。
 不意の襲撃で法正が死去するも形ができてしまっていたので歴史を変えることはできず、蜀は最後まで勝ち抜きます。
 そして、コレまで馬刀を使っていた関羽が何故、青竜円月刀のイメージをもたれるようになったのか?スマートに最終決戦と絡めつつ描いていきます。
 やはり関羽は神様なんですねぇ






「関ヶ原群雄伝」
     
 一巻:大谷吉勝の決意  二巻:織田秀信の覚悟  三巻:小早川秀秋の決断
著:智本光隆  学研   歴史群像新書
解説:
 大谷吉勝を主人公とした歴史シミュレーション小説。
一巻:
 関ヶ原前夜、太閤秀吉の死後徳川家康と対抗して豊臣家を守っていた前田利家が死去したとき、後ろ盾をなくした石田三成は福島正則ら七将に襲撃される。
 太閤秀吉の薫陶を受けて育った大谷吉勝(大谷吉継の息子)は三成を救うべく伏見へ向かう。
 その後、徳川家康により上杉討伐が宣言されると家康の専横に憤った吉勝は姉の縁を頼り稀代の謀略家、真田昌幸と渡りをつけ、自らと同じ「豊臣の子」らと手を組み反徳川の兵を挙げることとなる。
二巻:
 織田秀信…過去に三法師と呼ばれた織田信長の孫。
 彼も歴史の皮肉とは言え豊臣秀吉によって養育された「豊臣の子」である。
 一方、徳川家康は真田昌幸配下の忍、楠木党らの活動で西軍挙兵を知らず、上杉と戦端を開く。
 伏見城落城を知った時には上杉軍により先鋒を叩かれ「徳川四天王」榊原康政を失っていた。
 二人の息子に上杉軍の抑えを任せ、急ぎ軍を西に向けた家康。その先鋒となった元豊臣恩顧の大名達は岐阜城に進路を向ける。
 偉大なる祖父の誇りと豊臣の子としての人生、織田秀信は軍を率い木曽川攻防戦に発つ…
三巻
 小早川勢の参陣、織田信秀の犠牲の下、木曽川攻防戦に勝利した西軍は清洲城を占拠、勢いに乗じ小牧山も占拠する。
 家康は矢作川にて決戦を狙うが、石田三成、大谷吉継ら文治派奉行は矢作川対岸に新たな城を築き対抗する。
 決戦となる中、また不穏な動きを見せ始めた小早川勢に東西両軍が調略を仕掛ける中、吉勝は「豊臣の子」として小早川秀秋の元を訪れる。
 

感想:
一巻:
 関ヶ原なのでやはり真田昌幸が出てきますが、あまり関わらないような感じ?
 徳川+豊臣恩顧大名VS文治派+西国勢の流れは変わりませんが、本来なら脇役であるはずの大谷吉勝ら「豊臣の子」が中心となるため、若干ヒロイックな面が強いような気がします。
 「豊臣の子」が中心と言うことで、ココまであまり内面が描かれなかった小早川秀秋も(経緯的に裏切りそうですが)きれいに描写されるのではないか?と思いますので期待できる話になるのではないでしょうか。

二巻:
 ヒロイックと言うよりも青春群像じみた作品と評価したほうが良いのかもしれません。
 「織田秀信の誇り」と言うタイトルどおりに織田秀信が副主人公格としてその誇りと覚悟を咲かせてくれます。
 そして元豊臣後継者という過去にかかわる小早川秀秋の苦悩、偉大なる父を越える事が出来ない大谷吉勝の焦り、徳川家康の息子にして「豊臣の子」でもある結城秀康の父との対立…
 更には息子同然に育んできた石田三成と福島正則の対立に胸を痛める北政所(於祢の方)などなど、人間関係をメインに書き込んでいる様子で非常に好感の持てる作品となっています。
 この流れであれば「3巻の壁」は突破できるでしょうが(流石の学研も歴史群像対象の優秀賞受賞者のデビュー作を捨て置くとは思えませんし)、ドコまでこの勢いで続けられるか?ソコが勝負の分かれ目ではないでしょうか? 三巻:
 この作品は歴史小説のスタイルをとったジュブナイルですな。
 それでこの作品の評価が下がるわけではなく、逆に歴戦の者たちである父親世代と伍して動こうとする苦悩、自分たちのつながりを信じようとする純粋さ、そこらへんを楽しめる良作だと思います。
 実際、三巻突破はならず、所謂「俺たちの戦いはコレからだ!」エンドなわけですが、ジュブナイルというスタイルによく似合う終わり方だと思います。
 ただ、この作品では二人の剣豪である伊藤景久(一刀斎)と佐々木小次郎、それに忍者もどきの楠木玉櫛が動きすぎてしまって主役たちである「豊臣の子」らを喰ってしまっているのが難点ですね。
 ともあれ、正統派歴史シミュレーションとは言いかねますが、このジャンルでの新たな流れの先駆けになるかもしれない良作だと思われます。