常識・非常識
 香典の常識を考える

香典の表書に「御霊前」と書くと非常識になることがある

 先日、お昼のワイドショーを見ていたら、作法の先生が「香典袋の表書は、御霊前と書くのが無難です。」と言っておられたのですが、これでは誤解を招きかねないと感じました。文具屋に行けば、既に「御霊前」と印刷されている香典袋がよく売られていますので、疑いもなく使ってしまいそうですが、霊の考え方のない宗派もありますので香典袋の表書には注意が必要です。仏と霊は共に抽象的な概念であり、両者は混同されやすい様ですが、宗派によって思想が異なります。たとえば、仏教の中でも浄土真宗系では、亡くなったらすぐに仏になる(往生即成仏)という思想を持つため、香典にも御霊前(霊の前にお供えする)と書くのは間違いです。仏教でも霊を重視する宗派もありますし、神式でも英霊、とか精霊とか霊意識があります、またキリスト教も霊を扱うことがあります。

 香典等の作法について下記にまとめました。

  1 香典の一般的な表書きは、「御霊前」、これで仏式、神式、キリスト教式に使えます。
        「仏事の礼式と心得」より
  2 香典の表書きは、御霊前、御香典、御香料などと書く、相手の宗教が分からないときは、
    御霊前と書くのが無難でしょう。浄土真宗では、御香典を使います。
        東北冠婚葬祭常識研究所より
  3 香典袋の表書きは、香典、香料、御仏前のいずれでも良いでしょう。
        「浄土真宗の仏事」より


会葬の作法と香典の表書

宗教の種類により会葬時の作法が異なりますので、このときにお供えするものと香典袋の表書きとも関係がありますから、その作法と、それに関連するお供え物、香典袋の表書きを考えて見ましょう。

宗教 会葬作法 作法に関係するお供え 香典袋表書
仏教 僧侶、遺族に一礼、祭壇前で一礼の後、焼香、合掌礼拝、僧侶、遺族に一礼 香典
御香典
神道 玉串の根元を右手、枝先を左手に取り、右に回して根を祭壇に向けて置き、2礼2拍手一杯。柏手は音をたてない。 玉串
榊・さかき
御玉串料
御榊料
キリスト教 献花は、花を右にして受け取り、90度右に回して花を手前に、茎を先に持ち替えて献花台に置き、一礼する 御花料


香典の表書あれこれ

 香典の表書は、宗教の種類や宗派によっても若干異なります。葬儀は厳粛で荘厳な儀式であり、信仰の世界との関わりもありますので香典の表書は、できるだけ適性な表現をしたいものです。
 それでは、いろいろな香典の表書きを紹介します。

宗教 表書 使用範囲 意味 備考
仏式 御霊前
ごれいぜん
一般 霊前に金品を供える 霊を意識する宗派でのみ
真宗系では使用しない。
 〃 御香典
ごこうでん
ごく一般的 死者の祭壇に香の代りに金品を供える 御香奠とも書く
 〃 御仏前
ごぶつぜん
一般 仏様の前に供える
 〃 御香料
ごこうりょう
一般 死者の祭壇に香の代りに金品を供える
 〃 御弔料
おとむらいりょう
会社等 会社などか゜弔慰を現わす時に使用
神式 御玉串料
おんたまぐしりょう
一般 死者の祭壇に玉串の代りに金品を供える
 〃 御榊料
おんさかきりょう
一般 死者の祭壇に榊の代りに金品を供える
 〃 御神前
ごしんぜん
一般 神様の前に供える
 〃 御霊前
ごれいぜん
一般 霊前に金品を供える
キリスト教 御花料
おはなりょう
一般 死者の祭壇に花の代りに金品を供える
 〃 御弥撒料
おみさりょう
カトリック ミサのお礼
 〃 御霊前
ごれいぜん
一般 霊前に金品を供える


とはなんでしょか?

香典の表書きに御霊前と書いたものがありますが、一体霊とは何でしょうか?
霊で連想されるのは、幽霊、怨霊、先祖霊、背後霊、水子霊、呪縛霊と色々の言葉がありますが、何れも神秘的で、暗いイメージの言葉が多く、あまり関わりたくない気もします。世の中一般の霊の解釈や各宗教での霊についての考え方を探って見ましょう。

広辞苑の霊の解説
@肉体に宿り、又は肉体を離れて存在すると考えられる精神的実体。たましい。Aはかり知ることのできない力のあること。目にみえない不思議な力のあること。また、その本体。B尊いこと。
⇒ 一般に平たく言うと、霊とは、不思議な力をもつた存在で、霊魂ともよばれるもの。


各宗教上での霊の考え方


儒教 霊については、語らず。
 「子、怪、力、乱、神を語らず」と論語にありますが、不思議な現象や、神秘な現象について論ぜず、もつと実践的なことを論じるという教えのため、霊については、あるとも、ないともいってはいけないという考え方なのでしょう。

ユダヤ教 霊は命の根源と信じる
霊魂を「ネフェシュ」と呼んで、神から与えられた生命の根源であり、動物の中にもあり、血液の中に宿っていると信じられている。

キリスト教 霊魂の永遠の存在を信じる
ユダヤ教の流れをくむので人間に宿る霊魂は、死後も天国にあって静かに安らぐと信じられている。

仏教 霊は、「空」であ。即ち人間の心が作り出すものである。
@ 今から2500年前にインドで仏教(仏になlり、苦悩から解脱する教え)を説かれたお釈迦様のところに、マールンクという青年が訪れ、「肉体と霊魂は一つであるか?、人間は、死後も存在しつづけるか?」と尋ねられると、お釈迦様は、「ここに毒矢で射られた人がいると、医師が毒矢を射た人はだれだ、毒矢の成分は何だ、何で射られたのかそれが分からぬうちは治療せぬと頑張れば、彼は死ぬことになろう」と説かれた。先ず応急手当をして命を救うことが問題であろう、即ち死後の世界があるか、ないか、霊魂は、存在するのか、しないのか、そんな問題に頭を悩ます必要がない。大事なのは、私か今直面している人生の苦を解決することが大切だと教えられた。
A 般若心経では、色即是空、空即是色(色はすなわちこれ空にして、空はすなわちこれ色なり 色とは物質のこと で、空とは、存在の有る無いを超越した存在の意味)の教えに照らせば、霊の存在も空であり、心の中で作り出すものとなる。

浄土真宗の死後の世界
 苦悩を抱え、地獄に堕ちたくないと願う凡夫に阿弥陀仏が仏の方からはたらいて下さって、南無阿弥陀仏と称える心の起こったとき、私たちが死んだら極楽浄土に往生できるようお取り計らい下さるのであるから、浄土真宗の死後の世界は、阿弥陀仏が手を差し伸べて極楽浄土に仏として迎え入れてくださる世界であり、霊界も霊も存在しない世界である。即ち仏教とは、仏にしていただく教えであるので、霊を主体的に述べる教えでないので、御霊前という言葉も使用しない。

(参考)
NTT東日本 マナーと常識
http://dmail.foo.ne.jp/manners/k2_2.html
早分かり葬儀参列
http://www.sanretsu.jp/kouden/omotegaki.html



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