第14回がんのこどものターミナルケア・トータルケア研究会(平成12年11月18日)にて、発表した内容です。

    由佳の闘病中に感じた事を発表しました。
    今はいろいろな面でずいぶん改善されてきております。
    これは、当時の事として読んでいただきたいと思います。 


  由佳の入院中に感じた事を発表させていただきます。
 
 まずは、 治療の選択をするときですが、慣れない医学書を読み、主治医から症例を聞きはしましたが
古いデータしかなく、私たちにとっては決め手のないものでした。
このような時は、実際同じ経験をされた人たちから生の声を聞きたかったと思います。  
また、セカンドオピニオン、主治医以外の医師から話を聞く事ですが、 
こういうことももっと行われてもいいのかなと思っています。 
同じ病院の医師だけでなく他の病院の医師からも、話を聞く事が出来ればすばらしいだろうなと思います。
そして、私は今同じ選択を迫られている人たちに会って話をしたいと思います。
子どもを亡くした親との交流を好まない方もみえると 思いますが、もし話を聞いてくださる人がいるならば、
娘が経験してきた事、親の目を通して感じた事を話したいと思います。  
 
 また、子供の予後が悪い時、親は信じたくなくても死が迫っている時に、親として何をしてあげれるのか、
これはやり直しのきくことではないので・・・・
その時には分からなくても実際子供が亡くなってから思う事はたくさんあります。  
由佳は、その日が突然訪れたように思います。亡くなる3時間ほど前からもう何も話さなくなりました。 
私は由佳をじっと見つめてはいましたが、何も話しませんでした。
由佳が答える事もなかったので、ただじっと由佳の事を見ていたと思います 。 
亡くなったその時はよく分かりませんでしたが、 
後になって思う事は、その間あの子が何も話さなくても私の声を聞く事はできたはず。 
だったら、なぜいろいろ話さなかったのだろう。悔いる日が続いています。 
これが、もし事前にアドバイスとして聞く事ができたなら、どうだったのだろうと思います。 
とても難しい事とは思いますが、嫌でも我が子の死を迎えないといけない親たちにとって必要な事のような気がします。 
我が子の死を迎える親の心構え、必要だと思います。 
 
 入院生活の中、治療以外の面で辛いなと思った事ですが・・。 
無菌食が始まったときのことです。由佳は個室から大部屋へ変わりました。 
年の近い子供たちと同じ部屋と言う事で由佳はすごく喜びました。しかし、困ったのは食事やおやつの時でした。 
由佳は無菌食しか食べる事ができないのですが、同室の子が由佳の目の前でお饅頭を食べながら
「ゆかちゃんは、おまんじゅう たべれないんだよね」と言う。
カップラーメンの匂いがしてくる。どうしてこんな我慢をこの子にさせないといけないのだろうと思いました。  
入院中の子供にとって食べる事は楽しみな事。 
移植にあたってそれが制限されていると言う事を由佳はよく理解はしていましたが、 
何日も続くととても辛かったと思います。
大部屋の中でこのような事が起こることは当たり前のことなのでしょうが、付き添っている  
親たちも分かってはいても、自分の子供のことで手一杯になってしまう。
他のお子さんの事まで気遣う余裕はなかなかないのが現実だと思います。
私自身その事はよく分かってはいても、自分の子がこんなに我慢ばかりしないといけない事はとても辛いものでした。 
ましてやもっと小さなお子さんが同じ状態だったら、どうなるんでしょう。 
 
 由佳があれほど院内学級を喜ぶとは思いませんでした。
 学校へ行ける日のあの生き生きとしていた姿が目にやきついています。
本当に楽しそうでした。元気でいれば当たり前に行く学校ですが、長い入院生活を送る子供たちにとって勉強だけでなく
集団行動の必要性を切に感じました。 
入院生活の過ごし方も同じ一日を過ごすのであれば、なんとなく過ぎていってしまうのではなく、計画性のある一日の方が
子供たちにとっても、付き添いの親にとってもメリハリのある生活が送れると思います。 
また、治療中の励みにもなると思いました。 
由佳の場合、こんなに楽しみにしていたたんぽぽ学級でしたが、入院中学級に行けたのは数日だけでした。 
学級が無かった頃から思えば、もちろん良かったのですが、もっと行かせてやりたかったと思います。 
先生が病室のほうへ来てくださって個別に勉強をみてもらった事は多かったです。 
勉強の遅れを取り戻すにはこれだけで良いと思いましたが、やはり子供が求めていたのは友達とのふれあいです。
治療と治療の間にもっと学級へ通わせてやりたかったです。  
私が忘れられないのは、たんぽぽ学級が終わった頃教室まで由佳を迎えに行った時のことです。
由佳は私を見るなり、大きな声で、「なんで来たの? すぐ帰ってよ。」と怒ったのです。 
あの時の由佳は、病室と学級とのけじめをきちんとつけようとしていたのだなと思います。 
私は、由佳に本当に大事な事を教えられたと思っています。
 
私がもう一点望む事は兄弟を失った子供たちのケアについてです。 
今中学2年になる息子がいますが、由佳の事に全く触れようとしません。 
それだけ辛い事を経験しているのですから、仕方ない事と思います。 
苦しんでいる兄弟たちもいると思います。
自分でコントロールできる子はいいのですが、コントロールの仕方を間違えてしまう場合もあるかもしれません。 
そんな子供たちの心のケアをどのようにすれば良いのか、考えなくてはいけないと思います。
兄弟たちの思いもぶつけ合うことが出来る場があると良いかもしれません。 
 
子どもを亡くして感じる事は、皆たくさんあると思いますが、それぞれ違う思いがあるでしょう。
私は、入院中24時間由佳と一緒にいることができました。無菌室も一緒でした。 
先生方、看護師さんたちには、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。 
 



 これを医療者の方々に話してから、9年が経ちます。
 先日、医大で患児のお母さんたちと話をした時に、ずいぶん変わってきたなと感じました。
 セカンドオピニオンは自然に行われていると感じました。
 また、たんぽぽ学級の位置づけもしっかりしていると思いました。 
 病室の様子は、残念ながら分かりませんでしたが、新病棟も完成間近です。良い方向に進むと思います。    
 (平成21年7月10日)


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