青い鳥


【第16回】  幽助は蔵馬の質問にうーんと唸った。 何故強くなるのか……。 幽助は、少し考えてみる。 ――やっぱりこれしかないだろう!  すぐに幽助は答えにたどり着いた。 考えがまとまった幽助は、ふと飛影を見た。 「Σうっ!!」  すると飛影はいつもに増してギン!と目を吊り上げ、 さらに耳をダンボにしていた(ように幽助には見えた)。 質問に対しての幽助の答えを『聞く気満々』の態勢だった。 (本当、一体何なのだろう???)  幽助の頭には「?」がいっぱい飛んでいる。 「え、えーと、なんで強くなろうとするかというと…。」  幽助がそこまで言うと、 ――ゴクリ  飛影が喉をならした(かのように幽助には思えた)。 飛影はすごく幽助に集中している。 真剣そのものであった。 (オレ、そんな立派なこと言うつもりねーんだけどなぁ;;;)  幽助はなんだか言いにくくなってしまった。 すると 「貴様!何している!早く言え!!」  飛影が苛立ってた。 幽助は仕方なく強くなりたい理由を言う。 「負けたくねーからだよ。」 (は?)  思わず飛影は間抜けな声を出しそうになってしまった。 また、同時に茫然としてしまった。 「ケンカに負けたくねーから強くなろうと思うんだけど、オレは。」  幽助が繰り返して言う。 飛影はまだ茫然としている。  それはそうだろう…。 自分がずっと悩み、見つけ出せなかった答え。 幽助は、その答えを持っていた。 しかし、その答えは、バカみたいで。すごく単純で。  一方蔵馬はそんな幽助の言葉と飛影の反応にクスッと笑う。 一人でこの状況を楽しんでいるようだ。 飛影としてはこんな蔵馬の態度に腹が立つ。  しかし、飛影は、幽助の単純な答えに納得しつつあった。 バカみたいに単純だから、かえって「なるほど」と思ってしまう。 ――が!!飛影は納得するわけにはいかなかった。 「何故負けたくないんだ!?勝たなければならない理由とはなんだ!?」  必死に納得しまいと抵抗(?)する飛影。しかし幽助はあっさりと答える。 「オレ負けず嫌いだからなぁ。」  理由は『負けるのが嫌いだから』!? どうしてこんなに簡単なのだろう……。 だんだん体の力が抜けてきた気分になってきた。 「だって、お前だって負けるより勝つ方が好きだろうが?」  当たり前である。当たり前すぎて、幽助の言葉が素直に入ってくる。 しかし、飛影は考える。反論を。 「じゃあ、貴様は何故戦うんだ!?」  この反論の答えは飛影自身分かっていた。 好きなんだ。幽助はケンカが好きなんだ。 ただ”それだけ”なのである。 飛影の予想どおり 「オレ、ケンカ好きだもんよ!」  と幽助は答えた。  あまりに単純で あまりに簡単で あまりにくだらない答え。  でも、それが 飛影の中にあった迷いをなくしてしまう。  しかし、飛影は、納得したくなかった。納得しそうだけれど、納得したくはなかった。 なぜならば、「負けるの嫌いだから」「ケンカ好きだから」――という答えで 今までの悩みが消えてしまったら、悩んでいたオレの方がバカみたいではないか! そんな飛影の気持ちを察してか蔵馬がコソッと飛影に耳打ちする。 「ね?幽助に聞いたら解決するでしょう?」  蔵馬は先程からくすくす笑いっぱなしである。 飛影は面白くない。 結局は蔵馬の思惑どおりになってしまったのだから。 「お前は何のために生きる?生きる目的は?」  飛影にとって最後の質問である。 どうせ、幽助のことだ。 またどうでもいい理由を言うに決まっている。 そして、どうでもいい理由を言って欲しかった。  しかし、幽助は困った表情をしたままで、質問の回答が返すことができなかった。 「何をしている。早く答えろ。」  飛影は急かした。幽助は唸りながら言った。 「え〜〜…、生きる目的なんて考えたことねーぞ…。」 ――……。 絶句。 飛影は言葉が出なかった。  その時ちょうどトーナメント開催の合図があった。 「おっ!やっと始まるみたいだぜ!!行こうぜ。飛影!蔵馬!」  そう言って飛影と蔵馬の返事を待たず、幽助は走って行った。 ――生きる目的なんて考えたことない。  幽助のその言葉が飛影の頭の中に何回も何回も響いた……。
【第17回】  飛影は、動かなかった。 ピクリとも動かなかった。 幽助が走っていく姿をただただ見てるだけだった。  生きるのに目的はいらないのか? そうなのか? そういうものなのか?  でも、目的がなかったら生きてる意味がないではないか。 「飛影。貴方は堅く考えすぎですよ。」  蔵馬は気付いている。飛影がひどく困惑していると。 「目的のために生きるのはそれはそれでカッコいいかもしれませんが、  目的のためだけに生きるなんて息が詰まってしまいますよ?」  飛影は、蔵馬を見る。何か言いたいような表情だった。 一体何を言いたいのか。 蔵馬は理解していた。  目的のためだけに生きてきた飛影。 そんな飛影が、いきなり今現在自分より迷いなく生きている者に 生きる目的なんて考えた事ないと言われたのだ。 じゃあ、一体何のために生きるのか。 分からなくなるのも無理はない。 「好きなように生きてください。飛影。」  蔵馬は、微笑みながら言う。 「生きる目的なんてね、オレもないですよ。やりたいことはありますけど。  確かに目的があった方が、  何のために生きているのかという”生きている意味”がはっきりするけれど。  でも、オレは今のところ”生きている意味”をはっきりさせるより  自分の好きなように生きれたらそれでいいです。」  飛影は、ムスッとしている。 いつも考えすぎるくらい色んなことを考えてる奴から、 ”考えすぎだ”と言われているのだ。  いつもよりやや低めの声で飛影が言った。 「貴様のやりたい事ってなんだ?」 「南野秀一。」  蔵馬はキッパリと言った。 そのあと、気のせいだろうか? 蔵馬の表情がいつもより穏やかになったように見えたのは。 「オレは、当分人間をしていたい。  もちろん、人間をすることがオレの生きる目的じゃない。  でも、オレは、人間でいたい。  南野秀一でいたい。」  ああ、この顔は、あのバカ(幽助)と一緒だ。  迷いなき者の顔だ。 生きている輝きを持っている者の顔だ。 オレとは違う”顔”だ。 「だいたい、生きる目的なんて大きなものを背負って生きるのは、オレは疲れちゃいます。  それにその目的達成してしまったら、なんだかもう死ぬしかないじゃないですか?  だからね、寄り道はした方がいいんですよ。」 「寄り道?」 「目的なんて難しい事を考えずに、自分の好きなことをしましょう、飛影。  自分のしたいことをどんどんやっていくんです。  目的なんてね、きっと探したって見つからない。  ”見つかるべき時”にならないと見つからないものですよ。  それまでは、とりあえず目的に縛られることなく自由なんですよ。」  オレはしたいことをどんどんしていったら、人間の子になってしまった。 人生という名の道を歩む途中でのアクシデントだった。 人生の中の寄り道。 最初は”仕方ない”と思っていたのだ。 それが今では”幸せ”に思う。 初めは寄り道だったはずが、いつのまにか寄り道じゃなくなった。 こんなこというと年寄りくさいけれど、本当に人生って分からない。  人生という名の道には、別れ道がたくさんある。 どの道を選ぶかによってきっと進むべき道――生きる目的――は 変わってくる。  もしかしたら、生きる目的なんてものは最後の最後にならないと 分からないかもしれない。 人生という名の道を歩く途中で、やりたい事をたくさんして、 色んなアクシデントに出会って、寄り道もたくさんして。 それで、人生という名の道を歩ききった時、今まで自分が歩いてきた道を振り返る。 その時初めて ――自分はこのために生きてきたんだ と感じるものかもしれない。  だったら、目的になんかに縛られず、やりたいことやったほうがいい。 自分の思うとおりに生きた方がきっといい。 自分の好きなように生きた方が絶対いい。 「飛影。目的なくなって良かったじゃないですか。  やっと自由になれたんですよ。  やっと自分のしたいようにできるんですよ。」  相変わらず、飛影はムスッとしていた。 けれど、蔵馬の言っている事は理解してるようだった。 「お――い!!飛影!蔵馬!何やってんだよ!!開会式始まるぜぇ―――!!」  幽助の声が聞こえた。 蔵馬は幽助の方へと走って行った。 飛影に一言言い残して。 「飛影。今、あなたが一番したいことは何ですか?」  蔵馬は偉そうな事を言っていた。 幽助はバカな事しか言わなかった。 でも、2人の言葉がオレの迷いを断ち切ったのは事実だった。 借りができたと思った。 「フン、とりあえずトーナメントに優勝してやる!!」  トーナメントに優勝したら、次何をしたいのか。 そんなのは全然分からない。 でも、そんなのはトーナメントに優勝してから考える。 とにかく”今”のしたいことはトーナメント優勝なのである。 「そういえば、幽助には報復すると言っておきながら  全然してなかったしな……。」  独り言を言いながら、飛影は一人笑っていた。  蔵馬が人間界を捨て、魔界に来てから、数日がたった。 蔵馬を見てると死人を見てるようだった。 はっきり言ってむかついた。 何回切り刻んでやろうと思ったことか。 人には偉そうに「したいことをしろ」と言っていたくせに。 蔵馬にはしたいことがあるんだ。 人間界で母親と暮らしたいんだ。 じゃあ、何故魔界にいる?! したいことがあるのに何故しない!? もちろん蔵馬のことだ。事情があるのだろう。 しかし、それがどうした。 事情がどうであれ、したいことがあるのだろう? したいことがあるのにしないのなら、それこそ何のために生きる? ――殺してやろうか……。  本気で思う。 しかし、何故オレがわざわざ殺してやらないといけない?とも思う。 さらに、奴(蔵馬)には借りがある。 今が借りを返す時だろう。 しかし、どうやって借りを返せばいいのだろう? 殺すのは借りを返した事にはならないだろうし。 「おい。この人間も手遅れだな。」  隣にいた妖怪の声にハッと我に返る。 今はパトロール中なのだ。 下に転がっている人間を見る。 確かに手遅れだ。 あともって1時間の命だろう。 魔界の空気を吸いすぎている。 肺の洗浄は間に合わない。  パトロールをしていて、手遅れな人間は少なくない。 あと数時間の命の者、あと数分の命の者、もう既に死んでいる者。 魔界は果てしなく広い。 こんな少数でパトロールしたって間に合うわけがない。  いつも思う。 止めを刺してやろうかと。 どうせあと長くて数時間の命なのだ。 もう死ぬのは免れない。 ――死が確定しているこの数時間。 ――生きている意味があるのだろうか?  そんなことを考えている時、ふとひらめいた。 ―――暗黒鏡―――  そうだ……。暗黒鏡だ……。 ”この方法”を使えば、”なんでもできる”じゃないか。 きっと蔵馬にも借りを返せる。  飛影は早速行動に移った。  大サービスだぜ、蔵馬。 オレがわざわざ霊界まで行って貴様のために暗黒鏡を盗んできてやるんだからな。
【第18回】  桑原は、蔵馬に会いに、飛影に教えられたとおり魔界の近くの森の中に来た。  こんな時、霊感に優れてる自分の能力をありがたく思う。 森の中に入った途端、蔵馬の妖気をはっきり感じることができた。 ここから、蔵馬のいるところまでそんなに遠くない。 「く、桑ちゃ――ん!!待っとくれよ――!!」  かなり後ろの方からぼたんが走ってくる。 桑原は足を止めた。 しばらくしてぼたんがようやく追いついた。 ぼたんは、ハアハア言っている。 「はぁ……やっと追いついたぁ……。」 「別に無理してついてこなくても良かったのによぉ。」  桑原は、ぼたんと違い、息が全然あがっていない。 まだまだ全力で走り続けられる余力があった。 当然、ぼたんが桑原のペースに追いつくわけがなかった。 「で、でもさぁ〜。蔵馬のことが気になって気になって……。  あたしもさ、蔵馬を助けたいんだよぉ。」 「……………そっか。……そうだよなぁ。」  蔵馬のところまであともう一息。 蔵馬はまだ暗黒鏡を使っていない。 「急ごうぜ!ぼたん。蔵馬のいるところはもうすぐだぜ!!」 「うん!!」  桑原の言葉に、ぼたんが元気に答えた。 「オレが先の事まで知っているだと?」 「ああ、だってそうじゃねーとつじつまあわねーもん。」  幽助は自信があった。 自分の言っている事は当たっていると。 「逆に、飛影が先の事まで知っていると仮定すると  何もかもつじつまがあってしまうしな。  オレたちが飛影のところへ行く事も  ”クラマ”ってのがどこで暗黒鏡を使うのかも  ”クラマ”を助ける事ができるのかどうかってのも。」  飛影は、フフンと笑った。 それは「ご名答」という意味の笑いだったのだろう。 幽助は勝手にそう解釈した。 「…………”クラマ”ってのは、本当に助からないのか?」  幽助としては、とりあえず、記憶を返してほしいのだ。 ”クラマ”が助からない以上、記憶は返ってこない方がいいのだろう。 それでも、気になってしまうのだ。 ”クラマ”を思い出そうとする度に、よみがえる悔しい想いが。 きっと記憶が戻ってしまうと、その悔しい想いがますます大きくなってしまう事だろう。 ”クラマ”が死んでしまうのだから。  しかし……。 (オレの記憶は、オレのもんだ!!  勝手に盗んだ上に、とっととくたばっちまうなんて許せねー!  死ぬなら、オレに記憶返してから死にやがれってんだ!!)  幽助は、怒っている。 記憶を消されたなんて、初めは実感がなかった。 別に”クラマ”というのが何か分からなくてもどうでもよかった。 でも、仲間(蔵馬)のために言い合いをしている飛影と桑原を見て、 段々と記憶を消された実感がわいてきた。 ――”自分だけ知らない”というのは不愉快だ!!  だいたい、思い出せそうで思い出せない――というのが イライラしてしまう。  何が何でも記憶を”クラマ”から奪い返してやる。 そして、絶対”クラマ”って奴をぶん殴ってやる!  記憶が戻り、なおかつ”クラマ”を助ける方法……。 ――ある。  幽助は、思いついてしまった。 とんでもない方法だけど、上手くいくかどうかなんて分からないけれど。 「ああ、もう蔵馬が暗黒鏡を使う頃だ。」  飛影はハチマキをとり邪眼を開けた。 「桑ちゃん!!あの光は!!」  ぼたんが叫んだ。 その光の方向は、蔵馬のいるところと同じだった。 「まさか!!暗黒鏡か!!?」  桑原は、嫌な予感がした。 「悪い!先に行く!」と言い、ぼたんの返事も待たずに全力で走り出した。  飛影は邪眼を使い、蔵馬の様子を見ている。 蔵馬は、暗黒鏡に願いを言った。 そして、蔵馬は今その願いの代償に命を取られている。  飛影は邪眼で、蔵馬の周りを見回した。 「フン、蔵馬の近くに桑原がいる……。」  桑原は、走りながら祈った。 オレの”勘”よ。今回は、はずれてほしい!! ”勘”がもし当たってしまったら、蔵馬は……。 「蔵馬は今まさに死を迎えようとしてるところだぜ。」  心臓がドックンドックンとうるさかった。 縁起の悪い”勘”を振り放すように走る桑原。 しかし、走れば走るほど不安は大きく募った。 「暗黒鏡が光を放っている。」  桑原は、”ちくしょう”と呟きながら走り続けた。 「まるで、蔵馬の最期の命の光のようだな。」  走って走って走り続けた。 「その命の光が消える時……」  疲れるという言葉を知らないかのように、桑原は、走り続けた。 「奴(蔵馬)は死ぬ。」  今回、桑原の”勘”はこのように告げていた。 「あとほんの少しで桑原が蔵馬のところにたどり着くだろう。  ――だが。」 ――間に合わない!!!――  桑原は少し明るい場所に出た。 月の明かりが差し込んでいるので、周りとは雰囲気が違うように感じる。 桑原はピタッと足を止めた。 見つけた。 蔵馬を。 蔵馬の近くには暗黒鏡が転がっていた。  暗黒鏡の光は消えていた。  飛影は、邪眼を閉じ、ハチマキをし直した。 もう邪眼を使う必要はない。  桑原は、ようやく気がついた。 蔵馬の妖気を、もう感じる事ができないということに……。
【第19回】 −−人間と妖怪は共存できるのか・・・・・?!−− その答えは・・・・・・・?  願いを唱えると暗黒鏡が光を放った。 その光の中で、蔵馬は探し求めていた『答え』を聞いた。 その『答え』を聞いた途端、蔵馬は闇へと堕ちていった。 ――オレは、そんな答えを求めていたわけじゃない!!―― と思いながら……。 「蔵馬……?」  ようやく桑原の元にたどり着いたぼたん。 ぼたんの目には、倒れている蔵馬、へたりこんでいる桑原、転がってる暗黒鏡が映った。 「蔵馬……。」  つぶやくように言うぼたん。 しばらくたってぼたんの瞳から涙がポトポト流れ落ちた。 「蔵馬ぁ〜……。」  ぼたんは泣きながら何度も何度も蔵馬の名を呼んだ。 桑原は地面を睨まま、何も言わなかった。 「で、これから貴様はどうするつもりだ?」  飛影の言葉に幽助は笑いながら 「なんだよ?先のこと分かってんだろう?」 「フン。まさか本当に”あんなバカなこと”をするつもりなのか?」  別に飛影は幽助を心配してるわけではない。 飛影は、呆れているのだ。 これから幽助のすることが本当に”バカ”としか言いようがないのである。 「……ん〜〜……。確かに賢いやり方じゃね―けど…。」  一か八か…。 幽助のこれからしようとしていることがうまくいく保障なんてどこにもない。 それにへたをすれば命を失ってしまうのだ。 余程のバカじゃない限り、できない方法だろう。  そのことは幽助も承知なのだ。 さらに言えば、非常に”他人”まかせな方法。 その”他人”に自分の命を預ける形になる。 よって、その”他人”が信用できる人物でないととても幽助の提案する方法は実行できない。 しかし、その”他人”とは、蔵馬なのだ。 もちろん、蔵馬は信用できる人物である。 でも、今の幽助にとっては蔵馬は見知らぬ者なのである。 そんな面識のない人物に幽助は自分の命を預けると言う。 「オレには、絶対まねできんな。」  呆れてものが言えないとはこのことだろう、と飛影は思った。 「………でもオレさ、意外とうまくいくんじゃねーかなぁって思ってんだ。」 「フン、成功する根拠もないくせに。」 「……ないことも……ない…かなあ。」  意味ありげに言う幽助。 「…?どんな根拠があると言うんだ?」  飛影は、今から起こることは知っている。 幽助がどんなにバカなことをしでかすかも。 でも、そのバカな行動に、まさか根拠があるなんて飛影は知らなかった。  幽助はいきなり準備運動をしだした。 一通りこなした後、 「よっしゃ!!じゃあ、あいつらんとこ行ってくらぁ。」  幽助は走りだした。 「おい!根拠を…。」  飛影の言葉を遮るように幽助は言った。 飛影の方へ振り向き笑いながら。 「根拠はあるんだけどさ、その根拠言ったらまた『バカ』って言われるから言わねーよ。」  再び幽助は人間界へと走り出した。 あっと言う間に、幽助は、飛影の視界から消えた。 「フン、そうだな。貴様の言うことだからな。  よほどバカみたいな根拠なんだろうな……。」  飛影は、無意識に笑みを浮かべていた。  どれくらいの時間ここに座り込んでいるのだろう……? 声を上げて泣いていたぼたんも今はただ、座り込んでいる。静かに涙を流しながら。 ずっと茫然としていた桑原だったが、ようやく頭が動き出した。 頭を動かしたことで「後悔」と「絶望」が生まれた。 ――後悔。 どうしてあの時、立ち止まった? どうしてぼたんを待ったんだ? 一刻を争う時だったのに。 もちろん、ぼたんの気持ちを汲んでやりたかった。 しかし、オレは甘かった。ぼたんが悪いわけじゃない。 考えが足りなかったオレがバカなんだ。  あの時、ぼたんを待たずに走り続けていれば……!!  オレは、心の中のどこかで「蔵馬が死ぬわけない」と思っていたんだ……。 ――絶望。 これからどうしたらいいんだろう? ……どうしようもないではないか? 蔵馬は、もう死んでいる。なのにどうやって助けられる? ぼたんが近くで泣いている。霊界が助けてくれることはないだろう。  蔵馬を助ける手段は残されていないのだ!! 「おっ!!オメーら見っけ!!」  不意に後ろから声が聞こえた。 桑原もぼたんもわざわざ顔を見なくても声の持ち主は、幽助だと分かった。 「オイオイ……。オメーら、すげー暗ぇぞ。」  仲間が死んで暗くならない方がどうかしている。 幽助は記憶を消されているから仕方ないけれど、明るい口調の幽助に少し苛立ちを感じてしまう。 桑原もぼたんも黙ったままだった。  幽助は、ムッとした。 二人とも幽助を無視しているのだ。 誰にもかまってもらえない子供のように幽助は拗ねた。  その時、ふと幽助の目に暗黒鏡が入った。 ――やっぱり、やってみないとどうなるか分からねーよな!  幽助は、暗黒鏡に近づいて行った。  桑原は、ずっと地面を見ていた。 ぼたんは、倒れている蔵馬に背を向け涙を流していた。 だから、気付かなかった。  幽助が何をしようとしているか、暗黒鏡が再び光を放つまでは…。
【第20回】  急に辺りが明るくなった。 一体何なのだろうと桑原は顔を上げた。 暗黒鏡が光を放っていた。 なんと、幽助が暗黒鏡を使おうとしていた。 ぼたんもこの光景を見て、驚いた。 驚いている桑原、ぼたんを全く気にせず、幽助は、暗黒鏡に向かって言った。 「あのさ、”クラマ”を生き返してくれねーか?」  幽助の願いを承知し、暗黒鏡が光を増した。 その時、 『ちょっと待ったぁぁーーーー!!!!』  今まで口を開かなかった桑原とぼたんが慌ててハモりながら叫んだ。 さらに、ぼたんは、暗黒鏡を幽助から取り上げ、 桑原は、幽助の腕をガシッとつかみ、暗黒鏡から遠ざけた。 「痛てーな。そんな強くつかむなよ。」  幽助は、桑原の手を振り払い、言った。 「ったく、オメーらいきなり何するんだよ。」 『それはこっちのセリフだぁぁああぁぁああぁーーーー!!!!』  以前にも言ったことあるようなセリフを、再び桑原とぼたんは、ハモらせ、叫んだ。 「テメーこそ、いきなり何するつもりだったんだよ!!」 「そうだよ!!暗黒鏡を使ったら、命を取られるんだよ!!忘れたのかい!!?」  すごい形相で、幽助を叱りつけるように怒鳴る桑原とぼたん。 あまりにも迫力ある顔で二人が怒るので、思わず幽助は言葉を失ってしまった。 「オメー記憶がないのに、なんで蔵馬を生き返そうとしたのか分からねーけどな、  いいか!絶対に暗黒鏡は使うなよ!」  桑原は、ここまで一気に言うと、少し間をあけ、幽助から視線をそらし、再び言った。 「蔵馬が生き返ったって、オメーが死んだら、意味無ぇんだからよ……。」  今まで大きな声を出していた桑原だったが、最後のセリフだけは、小さかった。 ――もう仲間を失うのは、耐えられない……。 そういう気持ちが込められていたのだろう。 「嫌だ。」  ……… 「は?」「え?」  桑原のセリフで、しんみりした場の空気が、幽助の一言で一気に破壊されてしまった。  桑原にとっても、ぼたんにとっても、幽助の一言が予想できるものではなかったので 幽助が何を言ったか、理解するのに時間がかかった。 「暗黒鏡は、オレ、絶対使うぜ!」  幽助は、ニヤッと笑った。 何かを”たくらんでいる”顔だ。 「オ、オメー、何する気だ?」  恐る恐る尋ねる桑原。 今までの経験上、幽助のたくらみは、その大半がとんでもないことなのだ。 今回は、暗黒鏡がからんでいる。 とんでもないことに決まっていた。 「何するって、決まってんじゃねーか!  ”クラマ”を生き返して、記憶を取り戻す。」 「え?え?どうやって!!?」  ぼたんが興味津々といった感じで幽助に聞いた。 「その方法っていうのがな……」  幽助は、自信ありげに話し出した。  桑原とぼたんは、ポッカ――ン…としていた。 幽助の話を聞き終わり、桑原は、やはり「幽助のたくらみ=とんでもないこと」という 方式を頭の中に描いていた。 「どうだ!いい方法だろう?!」  幽助は、やる気満々だった。 「あ〜〜〜……、幽助……、やる気満々のところ、悪いんだけどさぁ。  あたしは、絶対やめといた方が良いと思うんだけど。」 「そうだぜ、上手くいくとは思えねー。」  桑原とぼたんは、幽助の案にあまり賛成ではないようだ。 「それにだ!もしかしたら、オメー………死ぬかもしれね―んだろ……?」  幽助の案というのは、一度幽助が暗黒鏡を使って、蔵馬を生き返さなければならない。 つまり、幽助は必ず死ななければならない。 計画では、幽助は生き返る予定なのだが、あくまで予定なのである。 生き返れる保証は、全く無く、生き返れることなく死んだままということもありえるのだ。 「でもさ、他に何かいい案あるか?”クラマ”ってのが生き返って、オレの記憶を戻す方法。」  あるわけない。 桑原もぼたんも黙ったままだった。 「なっ!無ぇだろう?」  勝ち誇ったように言う幽助。 「それにさ、心配いらねーって!オレ、上手くいく自信あるしさ!」 「どっから沸いてくるんだよ、そんな自信。」  呆れたように言う桑原。 この案について飛影と話してた時、飛影も呆れていた。 飛影と全く同じように呆れる桑原を見て 幽助は、苦笑いをした。 「そんなに無謀な策じゃねーと思うんだけどなぁ。」 「だから、その根拠を言えってんだ!どうせ、無いんだろう?」  やはり、飛影と同じような事を言う桑原。 意外と飛影と桑原って、気が合うんじゃないだろうか……? と幽助は思ったが 言葉に出すと、絶対否定されるので、心の中にしまっておいた。  成功する根拠。 実は、結構あったりするのだ。 「なぁ。”クラマ”って奴は、オレを見捨てたりする奴か?」  急に真面目になって、幽助は、桑原に問う。 いきなり真面目になられたので、桑原は戸惑ったが 小さく深呼吸をし、真剣に答えた。 「絶対蔵馬は、そんなことしねー。」  幽助は、桑原の目を見た。 「”絶対”か?」  桑原も、幽助の目を見る。 「ああ。”絶対”だ!」 「オレは、”クラマ”を信用していいんだな?」 「ああ。蔵馬は信用できる!オレが保証する!!」  その言葉を聞き、幽助は笑いながら、桑原を指差した。 「よし!オメーのその言葉、信じるぜ!!」  この案は、蔵馬がどういう行動に出るかによって大きく左右される。 成功のカギを握るのは蔵馬なのである。 よって、幽助が生き返れるかどうかも蔵馬次第と言っても過言ではない。  もし、蔵馬が非情な奴で幽助を見捨てたら、幽助の死は確定してしまう。 (蔵馬が非情な奴ではなくて、幽助を生き返そうと必死になったとしても  蔵馬の行動が失敗に終われば、幽助は生き返れないが。)  しかし、幽助は、なんとなく蔵馬は信用できると思っている。 蔵馬に関する記憶は、一切残っていないから、全くの勘であるけれど。 逆に言えば、記憶だけしか消されていないのだ。 今までの信頼とかが残っているのかもしれない。 だから、蔵馬を信用してしまうのだろうか。  また、桑原は、蔵馬を信用してもいい、と言っている。 幽助は、桑原を信用してる。 その信用している奴が言う言葉。 どうして、疑う必要がある?心配しなければならない理由がどこにある? 蔵馬を信用していいのだ。 だから、大丈夫。 オレは、見捨てられない。 ――蔵馬は信用できる!オレが保証する!! 「オメーのその言葉が、成功する根拠だよ。」 「はぁ?」  桑原は、”どういう意味だ?”という顔をしたが、 幽助は、何も言わず、ぼたんに近づいていった。 「大丈夫だよ。絶対成功するからさっ!」  そう言って、幽助は、ぼたんに”暗黒鏡くれ”と手を伸ばした。 ぼたんは、幽助に暗黒鏡を渡していいのかどうか迷ったが、 「仕方ないさね。あんた、一度やるって言ったら、絶対にやっちゃうもんね。」 幽助に、暗黒鏡を手渡した。  幽助の「大丈夫」は、はっきり言って、全然信用できない。 いつもいつも「大丈夫」でないところまで行ってしまう。 けれど………。 それでも、いつもいつも前に進んでいる。 今現在、どん底にいる。 それが一歩でもはい上がることができるのなら、 ちっとも大丈夫でない幽助の「大丈夫」にかけてみようじゃないか。 「言っとくけど、あたし絶対に、あんただけは連れて行きたくないからね!」  ぼたんは、笑顔で言った。しかし、心配そうな、不安そうな、 今にも泣きそうな、そういった表情は、完全には隠せなかった。 そんなぼたんの表情を見て、幽助は、困ってしまった。 「なんだよ。そんな顔すんなよな。全く、信用ね―なぁ、オレ。」 『当たり前だぁ!!』  幽助の言葉に、また、桑原とぼたんは、ハモってしまった。 (そんなに無謀な案かなぁ……?)  せっかく、我ながら名案!!と思った案なのに、 誰一人として、名案と思ってくれないのは、少し面白くない。 幽助ただひとり、成功すると信じている。  成功する根拠は、何も「蔵馬を信用できる」ということだけではない。 成功する決定的な根拠があるのだ。  それは、飛影である。  飛影は、何故かは分からないが、先のことを知っている。 おそらく、この方法をとった幽助たちの結末も知っているのだろう。 でも、飛影は何も言わなかった。 この方法について、「バカ」と言っていたが、決して、止めなかった。 もし、この方法の結末がバッドエンドなら、きっと飛影は、止めてくれたはず。 飛影は、止めなかった。  だから、幽助は、確信している。 この方法は、絶対に上手くいく、と。 「あ、そうだ!あのさ、一つ聞きてーんだけどさ。  記憶戻ったら、記憶が消えてた時の記憶って消えんのか?」  再度、暗黒鏡を使おうとしていた幽助が、急に思い出したかのように 桑原とぼたんに言った。 幽助の質問に桑原とぼたんは首を傾げた。 「さあ、まあ、確かによく聞くけどな。記憶が戻ったら、記憶が消えてた時の記憶が  消えるって話。  でもさ、それって完全な記憶喪失の場合の話じゃねーのか?  それに、人によって違う気もするしよ。」 「でも、どうしてなんだい?なんか消えちゃまずい記憶でもあるのかい?」 「しなきゃならねーことがあるんだ。  じゃあ、忘れた時の為に、オメーら代わりに覚えといてくれよ。」  幽助の言葉に再び首を傾げる桑原とぼたん。 「あ、ああ。別に良いけどよ。なんだよ?しなきゃならねーことって?」  桑原の質問に、幽助は、ニッと笑い、言った。 「無事記憶が戻ったらさ、真っ先に”クラマ”をぶん殴ってやる!」 
【あとがき】 第16回書いてて思ったこと…平和だなぁ〜、飛影編って。ほのぼのとしたお話になってきました。 さて、次回飛影編最終回です。やっと核の部分が書くことができます♪ 察しの良い方なら、飛影の謎の部分を解明できるのではないのでしょうか? 今回は、幽助が飛影に答え(?)を教えたという形になりましたが 次回は、蔵馬が飛影に答えを教えるという形になります。 さて、皆さんは「生きる目的」持っていますか? 「どうして生きてるのですか?」と質問されて答えられますか? 普通、答えられないですよねぇ……と私は思うのですが。 「私は○○のために生きている!!」と言えるのは それはそれで良いことかもですが、なんだか窮屈な感じがしてしまうんです。 次回はそういうお話です。 第17回で飛影編終了〜 さて、今回のお話の後半を読んで、察しの良い方なら、 「青い鳥」の飛影の謎(何故飛影は先の事を知っているのか)が解けたんじゃないのかなぁと。 でも、解かないで下さい、お願いします(笑) まあ、別に解いたとしても、お話にそんなに支障はないので良いのですが、 「青い鳥」の最終話近くで、飛影氏の謎を解答しようかなぁと思っているので。 察しの良い方、どうか飛影氏の謎の解答に気付かない振りしてくださいm(_ _;)m 飛影編とは異なり、第18回はいきなりシリアスってみましたがいかがでしょうか? 蔵馬FANの方々、怒るかしら……と思っていたのですが、意外と冷静(?)で 「続きが楽しみですぅ〜vvv」というありがたいメールを頂きました。 蔵馬が死んでも、あまり衝撃がなかったみたいで、ちょっと寂しかったです、私(苦笑) 第18回は、第13回の続きとなりますので、もう一度第13回を読まれてから 今回の話を読んだほうが分かりやすいかもしれませんね。 間に飛影編が入ってしまったので、内容を忘れてしまっているかも。 第19回時点の「青い鳥」のポイントは、 ・蔵馬は、今後どうなるのか?       ・飛影は、何故先のことを知っているのか? ・幽助の案とは?             というところでしょうか? 幽助の案については、次々回に出てくると思いますが、 あまり、立派な案ではございません、どうぞ期待しないで下さい。 「案」と呼んで良い代物なのか……非情に怪しいです;;; おめでとうございます〜〜!!20回目突入ですぅ☆(誰に対しておめでとうなんだか…?) 私は、やはり、幽助、桑原、ぼたんの3人組が一番書きやすいです。 まあ、蔵馬さんも書きやすい方ですけど。 でも、この3人だと、シリアスになるはずのところが あまりシリアスにならないんです(笑) だから、すごく好きです。 第20回で妙に書きたかったのが、4人の絆だったりしますv ――というより、幽助が皆を信用してる、というのを書きたかったのです。 幽助は、何故、記憶を消されているのに蔵馬を信用できるのか? それは、記憶のあったときに、余程、蔵馬を信用していたから。 さらに、桑原が「蔵馬を信用して良い」と言うから。 もし、幽助が桑原を信用してなかったらその言葉も信用できず、当然、蔵馬も信用することができない。 また、幽助は、飛影を信用しているから、この案が上手くいくと思っている。 飛影が信用できない奴なら、バッドエンドでも黙っているかもしれない。 バッドエンドなら、絶対に「やめろ」と飛影は言ってくれると、信じているから 幽助は、この案を実行する事ができる。 4人の絆ってば、良いですね〜♪――というのが今回のお話。 このお話の感想メールお待ちしております。
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