青い鳥


【第1回】  −−人間と妖怪は共存できるのか・・・・・?!−− その答えは・・・・・・・?  屋台のラーメン屋に1人の客が入った。 「おう!蔵馬!!」  屋台の主がその客の名を呼ぶ。 蔵馬がラーメンを食べに来るのは 久しぶりのことであった。 「いつもの頼むよ。幽助。」 「おう、まかせとけ!」  蔵馬は、何回か幽助のところへと ラーメンを食べに来ていた。 そして、いつも食べるのは 野菜のたっぷり入ったラーメン。 気に入ったらしい・・・。  しかし、蔵馬は仕事上の関係であろうか、 最近は全く屋台には顔を出さなかった。 だから、幽助と蔵馬が会うのは 本当に久しぶりだったのだ。 「へい、お待ちどう!!」 「ありがとう、頂きます」  蔵馬は優しく微笑んで割り箸を割る。  ・・・・・・・・? 幽助は思った。 蔵馬の様子がなんかおかしい? なんだか・・・・・悲しそうというか…… 何かを”あきらめた”ような……。 「なあ、蔵馬・・・・。  なんか、あったのか?  しばらく会わないうちに・・・・。」  蔵馬は、じっと幽助を見つめる。 そして、ふっと笑い、 「オレ、そんなに変な顔してました?」 「・・・・まあ・・・・な・・。」  こういう時は、そっとしといた方が良かったのかな・・・?  蔵馬の顔がますます悲しそうになったような気がした。 すると、蔵馬が突然このようなことを言い出した。 「オレ達は、人間なのかな?妖怪なのかな?  とても、中途半端ですよね・・・・。」 「・・・・・・・??????」  幽助には蔵馬の言っていることが分からない。 「幽助、オレ、魔界に行こうと思うんだ。」 「ふうん。なんか用があんのか?」 「・・・・・・・・魔界の住民になろうと思う。」 「え?」  魔界の住民・・・・・? 魔界に住むということだろうか?  でも、じゃあ、今の生活は・・・・・・。  幽助の頭の中が整理できる前に 蔵馬からわかりやすい、はっきりとした 結論が聞こえた。 「オレは、魔界へ帰る。  人間界での暮らしは・・・・・・もう、捨てる・・・・。」 「ちっ!!  また人間が迷い込みやがったぜ!!」  邪眼の力を使い、人間の記憶を操作し パトロールをしている飛影。 正直、パトロールをしているときの飛影は 機嫌が悪い。 はっきり言って、飛影はこんなくそ面倒くさいことは したくはないのだ。 こんな事をしている時間があるのなら 強くなるための修行をしたいのである。 「大変ですね。よく人間が迷い込むんですね?」  急に背後から声がした。 振り返ると蔵馬だった。 「なんだ!!!  今度は貴様か?!  なんのようだ!!!!!」  怒ったように飛影は言う。 よほど機嫌が悪いらしい・・・・。 「”今度は”って・・・・・・?  ああ、前に幽助が飛影に会いに来たんでしたっけ?」 (これはまた別の話)  蔵馬が飛影の隣に歩み寄る。 「フン、用がないのなら、人間界に帰れ!!  邪魔だ!!」  すると、蔵馬は、魔界の空気を吸って 気を失っている人間に近寄り 夢幻花の花粉をかがす。 そして、飛影の方を振り向き 「記憶を消す手伝いならできますよ。」  にっこりと微笑みながら言う蔵馬。 さすがに蔵馬は、行動の仕方が違う。 もし、これが幽助なら 「フン、用がないのなら、人間界に帰れ!!邪魔だ!!」 なんて、飛影に言われたなら 「邪魔ってなんだよ、邪魔って!!!!!」 と、反論し ケンカになっていただろう・・・。 現に幽助が前に飛影に会いに来た時、 (パトロール中(終了直後も含む)の飛影が  機嫌最悪と全く知らなかったせいもあるが) 幽助は、飛影の機嫌を見事に最大限に損ね 幽助と飛影は盛大にケンカしたのである。 (すぐに仲直りしたけどね。これはまた別のお話)  飛影は蔵馬に対し、怒る気も失せたようである。 ふと、蔵馬の顔を見てみると、 頬が少し腫れている。 「おい?どうでもいいが誰かに殴られたのか?」 「あれ?心配してくれるんですか♪」 「殺すぞ!」 「(……そこまで言わなくたって……;;;)これはですねぇ……。  ……幽助に殴られたんです…………。」  これには飛影も少々驚いたようだ。 「!?幽助が貴様を殴った?  フン、珍しい事もあるものだな。」 「オレが、人間界の暮らしを捨て  魔界に住む、と言ったら、殴られました。  …………思いっきり…………」  そう。 思いっきり・・・・”手加減”されて・・・・・。  しかし”手加減”という言葉はふさわしくないかもしれない。 幽助は別に”手加減”したわけではないのだから。  あの時・・・・・・ 「人間界に戻ってこないって・・・・・・。  え??どうして???なんかあったのかよ???」  かなり、幽助は混乱している。  まさか、蔵馬が人間界の暮らしを捨てるなんて?! 正直、信じられなかった。 しかし、冗談には聞こえない。 蔵馬は真剣である。 「実はね、幽助。  オレはもう、いつだって妖狐に戻れるんだよ。  もう、この体は完全に妖化してしまっている。  もう、この体は人間の−−−南野秀一の体じゃない!!  妖狐蔵馬の体なんだ。」 「え?じゃあ、今の姿は・・・・?」 「今の姿は変化しているだけのはなし。  もともと妖狐には変化の能力がある。」 「・・・・・・?  じゃあ、いいじゃねーか?なんか問題あるのかよ?」 「今の生活、つまり人間界での生活を続けるには  ずっと変化能力を使い続けないといけない。  別に、不可能なことではない・・・・。  しかし、もし、気を抜いてしまったら・・・・?  妖狐に戻ってしまったら・・・・?」  蔵馬の表情が険しくなる。 幽助は言葉が出てこなかった。 蔵馬の言わんとしていることがすぐに理解できたのだ。 「・・・・もし、妖狐の姿をあの人に見られたら・・・、  どうなるんでしょうね・・・・・・。」  あの人−−−蔵馬の母親!!  やはり、蔵馬は、母親を傷つけたくないのだ!! 自分の子供が人間でないと知ったら・・・ どんなに傷つくだろう・・・・? 異形な姿になったら、絶望するのだろうか? だから、蔵馬は、そうなる前に、自分から去ろうと言うのだ!! 「十分母さんをだまし続けた。もう限界なんです。」  幽助は、蔵馬の気持ちはよく分かった。  でも・・・・・・。 なんでだろう・・・? 本当にこれで良いのかよ?  それが一番いい方法。 それが一番正しいこと。 オレもそう思うし、何より蔵馬が出した答えなんだ。 間違ってないし、良いに決まってる。  でも・・・・・ なんか・・・・・ よく分からねえが、良くない気もする。 間違ってないけど、間違ってる。 そんな気が・・・・・する!!  蔵馬はさっきとは異なり、 ゆっくりと静かに でも、どこか悲しそうな瞳を見せながら 言った。 「さっき・・・記憶を消してきた。」 「・・・・・な、なんだと?!」  このとき、幽助は熱いものを感じた。 これは、怒り・・・? 訳も分からず、カッとなった。  蔵馬は、そんな幽助の様子に気付かなかったのか 構わず話を続ける。 「家族の記憶、会社の仲間の記憶、南野秀一を知っている者  みんな記憶を消した・・・・・。  もちろん、母さんも・・・・。」 「・・・・・・!!!!!」  何て言ったらいいのだろう? この気持ちを表現できる言葉は 幽助は知らなかった。 ただ、次の蔵馬の一言が 幽助に表現できない言葉の代わりである行動をさせたのだ。 「これが、一番正しい方法なんだ。」 バシッ!!!!  2人とも、しばらく、時が止まったように動かなかった。 幽助自身、殴った事について驚いていたのかもしれない。 蔵馬も殴られて驚いていたのかもしれない。  2人とも互いの気持ちは分かっていたと思う。 蔵馬の言っている事は幽助にとっても他人事ではなかったし、 だからこそ、蔵馬は幽助にこのことを打ち明けたのだ。  沈黙が流れた。 そして、ようやく蔵馬が口を開いた。 「仕方ないじゃないですか・・・・。  自分を選ぶか、相手を選ぶか・・・・・。  どちらしか方法はないんですから・・・・・。」  −−人間と妖怪は共存できるのか・・・・・?!−− その答えは・・・・・・・?  
【第2回】  気が付いたら、蔵馬を殴ってた。 なんか、カァッとなって・・・・・。  あいつは、記憶を消したと言った。  記憶が消えるってどんな感じ?  ものを忘れることは、しばしばあるけど 忘れても、思い出せる。  でも、消えちゃったら・・・? もう、思い出せないんじゃないのか?  あいつは、命捨ててでも助けたかった母親――南野志保利の子供。  でも、記憶がなくなったら、 あいつは、母親(南野志保利)の子供じゃなくなるじゃないか!! 記憶がなくなった母親(南野志保利)にとって あいつは”無”の存在になってしまうのだから・・・・。  それが腹の立った理由なのだろうか?  ただ、殴る瞬間躊躇してしまった。  蔵馬の気持ちは、本当によく分かる。 分かりすぎるから怒り(?)を感じた。 自分の大切な人の記憶を消して、それで、どうして  ”それが一番正しい方法” なんて言えるんだよ?! ……でも、分かりすぎるから拳の力を弱めてしまった。  オレもいつかは、『選択』を迫らせる日が来る。 必ず来る!! −−−自分を選ぶか、相手を選ぶか・・・。 蔵馬は相手(母親)を選んだ。 相手を傷つけないように、自分(今の生活)を捨てるのだ。  そんなに遠くない将来。 『選択』の日はやってくる。 その時、オレは、どちらを選ぶ?  オレがとっている方法は 一番いい方法のはず。 一番正しいはずなんだ。  こうすれば、母さんは幸せになれる!!  幽助に殴られたとき、 どうして殴るんだろう?と思った。 でも、同時に 幽助なら、 ”殴ってくれる” とも思った。 オレと幽助は同じ。 妖怪でありながら、人間として育ってきた。 (幽助は、ちょっと違うけど・・) そんな者がそのまま延々と人間界に暮らしていけるわけがない!! 幽助もいつかはオレと同じ『選択』を強いられる。  そのとき、君はどんな答えを出すの? −−人間と妖怪は共存できるのか・・・・・?!−− その答えは・・・・・・・?  蔵馬が魔界へ行き、何日か過ぎた。  あのあと(幽助が蔵馬を殴った後)蔵馬は黙って 屋台を去った。 (もちろん代金は払ったよ) 多分、そのまま魔界へ行ったのだろう・・・。  それからというものの、幽助はものすごく不機嫌であった。 腹が立っていた。 ここ何日か客も少ない。 なぜなら、ラーメン屋の主の顔が怒っているのだから。 客も行きたくても行けないのである。 恐いから。(笑)  そのことに全く気付いてない幽助。 客が来ないことにますます腹を立てていた。  そんなとき、1人の客が来た。 「おいおい、おまえなぁ。一応、客商売なんだからよ。  もうちょっと、営業スマイルしろよ。」  桑原である。 幽助が不機嫌なのは一目瞭然であった。 すぐに顔にでるのですぐ分かった。 「うるっせなぁー!!!!今は、そんな気分じゃねーんだよ!!  んで?注文は!!!!?」  イライラしながら、幽助は注文を聞く。  こいつは絶対客商売向いてねぇな・・・・。 心の中でつぶやく桑原。  これで料理の腕が悪けりゃ、3日でつぶれてたな この屋台・・・・・。 あ〜、今日雪菜さんと一緒じゃなくて良かったぜ。 (雪菜ちゃんは静流さんとお出かけ中) 更に心の中でつぶやく桑原。  心の中でつぶやくところ、大分桑原は大人になっている。 もう、幽助とも長い付き合いになる。 こういう時は、なるべく下手に出てやり、 幽助をなだめるのが一番良いのだ。 そう思った桑原は、 う〜〜ん!オレって大人!! と、自分で自分を褒めていたりする。 ・・・こういうところはまだまだ子供である。 「ん〜〜・・・・。  じゃあ、チャーシューの特大頼まぁ。」 「あいよ。」  幽助は、やる気なさそうにしたくにかかる。  やれやれ・・・・・ 話を聞いてやっか・・・。 「なあ、何があった?」  何かあったことは、もう明らかである。 桑原の問いに幽助は 「べ、つ、に!!」  ・・・かなりへそを曲げている。  世話のやける奴だなぁ・・・・・。  桑原はもう、あきれかえっている。 しかし、このままじゃあ、絶対つぶれるぞ、このラーメン屋!!  ふぅ、とため息をついてから 独り言のようにつぶやく。 「おめえ・・・・  もしかして、自分で何で腹が立っているのか  分かってねぇんじゃねーか?」  ・・・・・・・・・。 沈黙。 返事が返ってこなかった。 ――図星か?! 桑原は、幽助の顔をチラッと見た。 なんとなく、迷っているような……そんな感じがした。 何気ない桑原の一言に「なんて答えたらいいのか?」 そんな感じの顔だった。 ――何で腹を立てているのか分からない――  そうかもしれない・・・・・。 桑原にそう聞かれて 答えられないでいる。 そう。 幽助はずっと意味も分からず 腹を立てていたのだ・・・・。 「なあ、もう一回聞くぜ?何があったんだ?」  再度桑原が問う。 少し沈黙があった。 そのあと、やっと幽助がポツリポツリと話し出した。 「……蔵馬が…人間界の暮らしやめて魔界に行くんだと。  んで、南野秀一に関わった人の記憶を消したんだって。  みんな消したんだってさ、母親さえからも・・・・・。」  幽助は、簡単に短く答えた。 桑原はやはり、ビックリしていた。 が、どうして蔵馬がそんなことをしたのか わざわざ幽助に聞かなくても 分かったような気がした。 「でもよ〜〜、オレにはなんにも言ってくれねぇんだな!!  蔵馬の奴!!  魔界に行くならオレんとこにも、  挨拶に来いっつーの!!」  幽助はその問いにはすぐに答えた。 「ああ、オレ、蔵馬殴っちまったからな。  蔵馬行くに行けなかったんじゃねーの?  強くは殴ってねーけど、頬はれてたし・・・・」 「なるほど・・・・・・・・・・・・・・・・・・  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん?  殴った??  ・・・・・・・・・・・  殴っただとぉぉぉぉぉぉおおぉぉっぉおぉぉおおぉ!!!!!!」 「なんか腹が立ったんだよ!」  これは、驚いた。 さっき蔵馬のことを聞いたときより驚いた。 いや、別に幽助の 『腹が立った。だから、殴る。』 という行動はいつものことだから 不思議でも何でもないのだが・・・・・。 ”オレを殴る、飛影を殴る” これは幽助の行動として自然である。 ”蔵馬を殴る” 何というか、意外というか・・・・・。 驚いたのだ、本当に・・・。 「でも、何で、腹が立ったんだろうな・・・・。  オレ・・・・・・・。  なんかさ、蔵馬の気持ちも分かるんだ。  でも、腹が立つ。 ・・・・・・いや、だから、腹が立つ。」  ”でも”と”だから”の違い。 この違いにどれほどの意味が込められているか 幽助は分かっていない。 ただ、桑原は分かりかけてきた。  多分、当事者ではないから。 第3者であるから。 人間であるから。 ――分かってしまうのだ。 「なあ、浦飯?  蔵馬が人間界を捨てたからといって  お前まで捨てる必要はねぇんだぜ?  捨てたかったら好きなときに捨てたらいいし  捨てたくなかったらずっと捨てなかったらいい。」  桑原は力強い声で言う。 真っ直ぐに幽助を見て。 「何が一番正しい方法で何が一番に良い方法か考えるなんて、  超不良の名が聞いて呆れるぜ。  お前はお前の好きなように、したいようにするのが  一番良い方法じゃねーか?」 「はぁ?何言ってんだ?お前???」  そういうものの、幽助は多分気付いてる。 桑原が言っている意味を。 それがどんなにありがたいことかを。 「もしさ、何十年後かにさ、お袋さんや螢子ちゃんが  お前を拒絶しちまったら、オレのとこに来いよ・・・・。  頭ナデナデして、慰めてやるよ。」  そう、ずっと思っていた。 今は幽助は普通の人間の姿と変わらない。 だから、今も今までどおり暮らしている。 でも、もう、当分は幽助の姿は変わることはない。 変わらないのが人間でない証。  ときどき、思う。 最近はよく思う。  外見がずっと変わらない息子って 親からしたら、やっぱり ・・・・・嫌・・・・・かなぁ。  幼なじみで同い年のはずなのに あいつだけ年をとるって やっぱり ・・・・・嫌・・・・・だろうなぁ。  オレは人間界に帰ってきたけれど……。 ずっと人間界に居続けることは無理なんじゃないだろうか?  数十年後、一緒にいることはないんだろうな。 オレはずっと若いまま。 そのうち、誰が見ても 親子には見えなくなるんだ。 それでも、親子でいてくれる? そんな酷なこと出来るわけがないじゃないか!  あいつはだんだん年をとる。 女だから、きっと年老いていく自分の姿を見られたくないと思うようになる。 多分いつか「会えなくなる」。 いくらオレが気にしないって言っても あいつは気にしないわけがない。 「オレはさ、もう、妖怪とかお化けとか慣れちまったし、  自分の外見がどうとか、相手の外見がどうとか  あんまり気にしねーしよ。」 「・・・・・・・・。」  幽助は黙ってしまった。 ただ、黙々とラーメンを作っている。 桑原は話を続ける。 「これだけは言っておくぜ!  お袋さんや螢子ちゃんが拒絶するかどうかなんてわからねぇ!!  先のことなんざ、絶対に誰にもわかんねーんだ!!  だから、このまま人間界に居続けるのも魔界に行くのも  お前の自由だ。  お前が選んだ道なら、それが一番正しい道になる。  行きたい道を選べよ!浦飯!!  正しい生き方なんかあるもんか!あったとしたら、それは自分が決めるんだ。  正しい生き方は絶対1つじゃねーぞ!」  幽助はぴたっと動作を止めた。 ――行きたい道―― 魔界に行くのが正しいと思っていた……。 魔界に行かなければならないと思っていた。 特に蔵馬が魔界に行くと言い出してからは。 だって、拒絶しないわけないから。 拒絶するに決まっているから。 幽助はそう思いつつ桑原を見た。 桑原は幽助の視線に気付き再び話し始めた。 「お前が魔族だって事知ったときにお袋さんと螢子ちゃんの反応はどうだった?  お前が人間じゃないと知って、態度が変わったか?」 「・・・・・・・・・・・」 「まあ、とにかくよ・・・、オレが言いたいのはさ、  お袋さんや螢子ちゃんが、お前が人間じゃないということだけで  外見だけを見て  お前を嫌ったりするような人間かよ?  それは、オレよりお前の方がよく知ってるだろう?」  ああ……そうか。 うん。知ってる。よく知ってる。  何と言えばいいのだろう? とても嬉しくて、泣きたくなるような気持ち。 そんな気持ちに幽助はなってきた。 「逆を考えてみろよ。  お前が年を取っていって、お袋さんや螢子ちゃんが年を取らなかったとして。」  そのうち、オレはお袋の年齢を越しちゃうとして……。 そうなったら、はっきり言ってすごく嫌だ。 もしかしたら、2人に対して拒絶してしまうかもしれない。 でも、嫌だけど、すごく嫌だけど……、 お袋や螢子を嫌になるわけじゃない。 オレは外見は変わっても気持ちは変わらない。 「なっ!一緒だよ。拒絶されて嫌われたらオメーの性格が悪いせいだ!  なんでもかんでも人間じゃないからというくだらね―理由に  しがみつくんじゃねーぞ!」  ムカッ!!  でも、軽くなった。あれだけ重かった気持ちが この短時間に。 もし、幽助が素直だったら「ありがとう」と言ってることだろう。 そんな幽助の気持ちに気付いているのかいないのか、 桑原は最後に笑ってこう言った。 「とにかく、お前のしたいようにしろよ!  やるだけやって駄目ならそこで初めて迷えばいい。  でないと、後悔するぜ。」 ―――今はまだ迷う時じゃない!!―――
【第3回】  どうして・・・・? どうして、こんなに心が沈んでいるのだろう? 魔界に来て、もう何日もたつのに・・・。  蔵馬は、ただ1人、魔界の風に吹かれ、たたずんでいた。 ここは、魔界全土がよく見渡せる場所。 風の通る道。 ここにいると、つい、考えてしまう。  ――本当にこれでよかったのだろうか?―― と。 「おい、そこは、オレの場所だ!」  後ろから、急に声がした。 考え事をしていたから、気配を感じ取れなかった。 しかし、別に驚かなかった。 「やあ、飛影。貴方もここがお気に入りなんですね。」 「フン・・・・」  否定しない。 やはり、お気に入りらしい・・・。(笑)  飛影は、蔵馬に近づく。 「なんだ、貴様は、まだここ(魔界)にいたのか。」  蔵馬は、飛影の方へと振り向き、 「言ったじゃないですか、  ずっとここで暮らすつもりだって・・・。」  ぴたっと飛影は足を止める。 「本気で言ってるのか?」 「もちろんですよ。」  蔵馬は表面上にこやかに答える。 飛影は、そんな蔵馬をにらみつけた。 そして、こう言った。 「フン、くだらん野郎だ!!」 「・・・・?飛影?」  飛影は、くるりとまわり また来た方向へと戻っていこうとした。 「飛影!!」  蔵馬は思わず飛影を呼び止める。 飛影は、足を止めた。 しかし、蔵馬の方へは向かず 「何で貴様は、妖狐に戻らない?」  蔵馬は、ハッとした。 同時に動揺した。 飛影はかまわず話を続ける。 「その様子じゃ、妖狐にいつでも戻れるんだろう?  戻れるのに人間の姿のままというのは何故なんだ?」 ―――あ…………。  なんということだろう。 言われて初めて気が付くなんて!! 魔界に来て、何日もたつというのに 蔵馬は、一度も妖狐に戻ろうとしなかった。 「人間は、人間の世界へ戻れ!」  飛影はそう言って、去って行った。 「ごちそうさん!!」  桑原は、汁まできちんと飲む。 こんなにきれいに食べる客は少ない。(たいていの客は汁は残している。) でも、食べてもらう方にとっては、 桑原のような食べ方は気持ちがいい。 「それじゃあなっ!」  桑原は、お金を置いて立とうとする。 その時、幽助が、 「あのさ・・・・・。  オレ屋台終わったら蔵馬んとこ行って来る。」 と、言った。  桑原は、ふっと笑って、 「そっか。」  わざわざ、そんなことを言うのは 気持ちに整理ができたということだ、と 桑原はそう理解した。 蔵馬に会うって事は、何で蔵馬を殴ってしまったかも 気付いたのだろう。 「もう、バカのくせに考え込むなんて事やめろよ!」 「バカはよけいだ、バカは!!」 「バカだろう?」  笑いながら桑原は屋台から出ていこうとした。 その時、 「浦飯!!」 「ん?」  幽助には背を向けたまま桑原は言った。 「……オレは長生きするぜ。オメーなんかよりもよっ!!」  母さんがたとえオレのことを忘れても オレは絶対に母さんのことを忘れない。 オレにとって母(南野志保利)は永遠に母である。 ――それでいいじゃないか・・・。  本当にこれでいいんだ。 オレはそう思ってるはずなんだ!!!  でも・・・・・ オレは、南野秀一でいたがっている。 人間界での暮らしを望んでいる。  願い・・・・・。 願ってはいけない願い。 願っても叶わない願い。 その願いは、母をいつしか苦しめる。  母を悲しめたくない。 母には幸せになってほしい。 これもオレの願い。  相反する願い。 両方はかなうはずがない。 どちらかを選ぶしかない。  ほら・・・・ そう考えたら、オレのとった行動は 一番良い方法じゃないか。  何をそんなに迷う?  何をそんなに迷う? ――何をそんなに迷うんだ!?  迷う事はないはずなのに、 オレはここ(魔界)に来てからずっと迷い続けている!!  誰か答えを教えてほしい……。 −−人間と妖怪は共存できるのか・・・・・?!−− その答えは・・・・・・・?
【第4回】  夜。 人々は眠りについている。 この人も例外ではない。 熟睡だ。 グーグーといびきをかいている。  そこに1人の少女が立っていた。 そろーっとその寝ている人に近づいていく。 そして、少女は、つんつんとその人をつつく。 その人は起きない。  今度はパシパシとその人を軽くたたく。 その人は全く起きる気配がない。  いらだった少女は、バシッバシッと 思いっきりその人を殴ってやった。 「う・・・・んんん???」  その人は、ぼーーーっと目を開けた。 すると、自分の部屋にいるはずもない人影が・・・・!!!! 「ぎゃあぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁ−−−−−−−−!!!!!」  その人の声に驚き、少女も 「きゃあああああああぁっぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!!!」  結局、その人の家族全員が起きることになった。 「まぁーったく・・・・。  せっかく、あたしが気を使って、みんなを起こさないように  そろーっと慎重に行動してたのに!!!  桑ちゃんが恐ろしい声出すから、ビックリしたじゃないか!!」  その少女というのは、ぼたんであった。  さっき大声を上げたため、静流、雪菜、桑原の両親が 桑原の部屋に来てしまった。 すぐに、事情を説明して、各自戻っていったが。 「びっくりするわぁぁぁ!!起きたらいきなり人影があるんだからよ!!  シルエットだから、誰だか分かんなかったしよ・・・。」  桑原はあくびをしながら、そう言った。 「だいたい、レディーの顔を見て悲鳴を上げるなんて  失礼なやつさね!!」  ぼたんは、ちょっと機嫌を損ねてる。 「だから、顔が見えなかったって言ってるだろう?!  ところでよう・・・・ぼたん。  こんな夜中に何しに来たんだ?!」  桑原にそう言われて、ぼたんは、はっと思いだした。 「そうだよ!!こんなのんびりしてる場合じゃないんだよ!!  大変なんだ!!大変なことが起きちゃったんだよぅ!!!」  ぼたんの慌てようは、尋常じゃない。 「ど、どうしたんだ?!何があったんだよ!?」 「暗黒鏡が・・・・・、  暗黒鏡が盗まれちゃったんだよぉぉおぉ!!!!」  ・・・・・・・・・。 一瞬の間。 「なにぃぃぃいいいぃぃぃ?!」  桑原もだいたいのことは知っている。 当然、暗黒鏡のことも話で聞いている。 「なんかね、あっと言う間に盗まれたらしいんだよ。  警備の人の話では。」 「あっと言う間だとぉ?!」 「スピードが速くて、顔も見れなかったし、気がついたら暗黒鏡も  盗まれてて……って言ってた。」  ぼたんは、困り果てたように言う。 桑原は ―そいつは無茶苦茶強ぇぞ。― ぼたんの話を聞いてそう感じた。 ”スピードが速くて、顔も見れなかったし” ”気がついたら暗黒鏡も盗まれてて”  つまり、そいつは堂々と入り込んできたんだ。 警備の目を盗んでこっそりと入って盗んだのではなく 真正面から入ってきたんだ。  何故なら、こっそり入ってきてこっそり盗まれていたら ”スピードが速くて、顔も見れなかったし” というセリフは出てこなかっただろうし、 こっそり入ってきて暗黒鏡を盗もうとしていたのを 見つけたのなら ”気がついたら暗黒鏡も盗まれてて” というセリフも出てこないはず……。  そいつは自信があったんだ。 スピードに……。 「警備の奴らは無事だったのか?」 「あ、警備の人は、全員怪我一つなく無事だったんだけどね。」  怪我一つなく!? 真正面から入り込み顔も見られず、 さらに相手に怪我をさせることなく、あっと言う間に盗み出す。 とんでもない早業だ!! 「それでさ、幽助のところに行こうと思ったんだけど、  幽助、家にも、屋台にもいないしさ・・・・。  だから、蔵馬に相談しようと蔵馬の家に行ったんだけど、  蔵馬も家にいないし・・・・。  仕方ないから、飛影に頼もうかと思ったんだけど、  飛影は魔界にいるんだろ?  魔界にあたし一人で行くの恐いし・・・・。  もう、あたし今、わらをもつかむ思いなんだよぉ。」 「ちょっと待て(怒)オレはわらか?!」 「狽っ……;;;  あ・・・・あははははははは。  言葉のあやさね  細かいことは気にしないでおくれよ(^^;)」 「・・・・・・・・」  しかし、幽助も蔵馬も飛影も、今魔界にいる。 となれば、やはり魔界に行くのが今の段階で一番の良い方法だろう。 何より、暗黒鏡を盗んだ奴はほぼ間違いなく S級妖怪(または同等の力を持つ人間?)なのだから…。 そう桑原は考えた。 「よし!!!オレ、ちょっと魔界に行ってくらぁ!」 「ええ?!どうしてだい?!」 「今、浦飯達は、魔界にいるんだ。  妖怪のことは、あいつらに聞いた方がいいだろう?  盗んだやつの手がかり、なんにもねーんだろう?」  ぼたんは、しばらく考え、 「うん、わかった!!  そのかわり、あたしも行くよ!!  もともと霊界の問題だしね!」
【あとがき】 秘密ページ続きものの第2弾。 この話の登場人物は、まあ、色々出てくるのではなかろうかと思います。 今回の話もたくさんの方が書かれている内容と思います。 コミック18巻を見る限りでは、蔵馬さん、しょっちゅう妖狐さんに 戻ってるようで……。 完全に戻るのもそう遠くないなぁと思いました。 ――じゃあ、人間界の生活どうするんだろう? あ、でも、一般的に妖狐って変化能力あるという話ですよね? (蔵馬にあるのかは不明ですが。 この話ではあることを前提に話をすすめてますので よろしく!) 暗いし、長いし、辛気臭いしというお話です;; 読むとちょっと暗い気分になれるというおまけつき♪ どうぞ、お付き合いくださいませ。 第2回の話は桑原くんがカッコいいです。 桑原くんが言うからカッコいいセリフが多々あります。 蔵馬もそうですが、幽助も今後どうやって暮らしていくのだろう? と疑問に思います。 螢子と結婚は、私はほぼ無理だと思っています。 幽遊白書終了後の幽助の将来は結構過酷なんじゃなかろうかと思っちゃって……。 温子さんはともかく(ああいう性格だから)、 螢子ちゃんはいつか幽助と会わなくなるでしょう。 「もう会わない」というのではなく自然と会わなくなるんじゃないかなぁと思います。 もちろん、愛情がなくなるわけじゃないのですが。 だから唯一幽助を人間界につなぎとめるのが桑原くんじゃないかなぁ。 幽助って結構寂しがりやと思うのです。 原作を読むとそう感じ取れちゃいます。 その寂しがりやだというところを第2回の話で全開した感じですね。 ただ、幽助は立ち直り早いんです。単純だから。 第2回のお話の核は、したいことがあるならとっととしなさい。 何を迷う事がある? したいことしていて不都合が生じたら、その時に迷いなさい。 ―――というところでしょうか? 第3回で初めて、4人とも出番がありました。 今までありましたっけ? 幽助、桑原くん、飛影、蔵馬が一緒の回に出てきた事って……。 ほんとにどうでもいいことですが、嬉しかったものですから(^^) 第4回では苦悩してます、蔵馬さん……。 妖怪と人間の共存のテーマの場合、幽助を中心にしてもよかったんですが 幽助を中心にすると、すぐに立ち直っちゃって、 ストーリが書けなかったと言うかなんと言うか……;;; どうせ、悩むんならどん底まで悩んでくれないと ストーリが続かないわ……ということで蔵馬中心の話になりました。 話は変わりますが、桑原くんと幽助って大好きです♪ 私の理想とする桑&幽は 『青い鳥』第2回(前回)の話と今回の話を読んで頂いたら 分かっていただけると思います!! で、どうしても桑ちゃんに言わせたかったセリフ 「……オレは長生きするぜ。オメーなんかよりもよっ!!」 なんとなく、でも、どうしてもこのセリフだけは言わせたかったんです。 上手く説明できませんが(^^; 第4回はちょこっと息抜きの回です(^0^) 青い鳥は全体的に重いお話なので、今回のように桑ちゃん&ぼたんちゃんという 漫才コンビで軽めにしようかなと思った次第で。 しかし、あまり軽くならなかったです……。 一応今回の話からストーリが進んでいくので(多分) このお話の感想メールお待ちしております。
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