僕の他愛もない日常生活です。愚痴じゃありません。

その61 つける薬なし その62 失敗は覚えておいて下さい その63 虚偽の申告
その64 ある秋の日  その65 ハード真っ白け その66 スゴイ人 
その67 鬼は中 その68 噂は噂を呼んで、、、 その69 妻、市政に乗り出す

その51〜60はこちら

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その70 昔話に喩えるならば

 あれ?奥さんがいない。休日の午前中、朝食も終わってゆっくりしていた時のことです。随分と長い間彼女を見ていないことに気付きました。そういえばさっき歯ブラシもってウロウロしてたよなぁ、どうしたんでしょう。僕は何の気無しに洗面所のドアをそーっと少しだけ開きました。電気が付いています。やはりここにいるようです。 でも歯磨きの音もなにもしません。まさか倒れてたして。。。
 多少びくびくしながら、もう少しだけドアを開けて1センチ程度の隙間から洗面所を覗きこみました。奥さんがこちらに背を向けて鏡を見ています。そして、鏡に映っていたのは「吃驚仰天しながら笑う顔」の妻でした。
!!!!!そう、目を大きく見開き口を大きく開けた驚愕の顔。少年マンガみたいな顔です。ぼくはその瞬間呪縛にかかってしまったように体が固まってしまいました。う、動けない。。。
 一体なににあんなに驚いているのでしょう?動けないまま時間が過ぎました。嫌な汗がべったり咽のあたりを冷たくしています。その間多分3秒程度だったと思うのですが僕にはものすごく長く感じました。そして今度は「吃驚仰天しながら笑う」からいきなり「すんごい酸っぱい顔」に変身しました。鼻に向かって顔中の筋肉を集めた顔です。こ、これは何事?奥さん育児疲れで体の調子が悪いんでしょうか?それとも育児ストレスで頭の調子が悪いんでしょうか?あんなに遊んでるのにまさか嘘ですよね?!僕に見られているとは知らず「すんごい酸っぱい顔」からまた「吃驚仰天しながら笑う顔」に変身しました。この顔になる時には小首が左に傾きます。や、やばい人だ。。。僕は声をかけることもできずにドアをそーっと閉めました。

 「たらりらったらーん♪」
鼻歌を歌いながら何事もなかったように戻ってきた奥さんに僕は聞かずにはいられませんでした。
「ね、ね、ね、い、今、何してたの?」
「あん?見てたの?やーねー、恥ずかしいわねぇ。顔体操よ」
顔体操?(興味のあるかたはこちらをどうぞ)聞けば写真写りの余りの悪さにショックを受け、このままではいけないと顔体操を始めたそうです。
 たしかに奥さんの写真は悪い、というより変なんです。夫の贔屓目に見ても「ヒト」に見えない。先日のBBQの写真では笑顔の奥様たちの中、ひとり腹話術人形ハリーポッタ−の絵を張り付けちゃったかって感じで浮きまくって写ってましたからね。各御家庭にあの写真があるかと思うと泣けてくると落ち込んでました。「元ヤンキーの腹話術人形」。あぁ、お気の毒。

「こっそり覗いて黙って帰るなんて『鶴の恩返し』みたいだね。」
僕がびっくりして声がかけれなかったことを話すとこんな感想が返ってきました。いいえ、そんな美しいもんじゃありません。そうですね、あえて言うなら『食わず女房』。

※「食わず女房」:御飯をまったく食べずに働くばかりの女房を不思議に思った夫が出かける振りをして台所を覗くと、女房は背中の大きな口から握り飯をバクバク食べる化け物で、びっくりして声もかけれなかったという日本昔話


その69 妻、市政に乗り出す?

 以前は全くと言っていいほど関心がなかったのに最近の奥さんは選挙に熱心です。先日も都合で都議選を棄権すると残念そうに受付票をビリビリに破いてました。

 そして先週。今度は市議選がありました。
「今度は行くわよ。就学前の幼児の医療費タダにしてもらうわ〜!」
と朝から行く気マンマン。僕も王子も気合いに圧倒されてお昼前に出かけました。
出がけに
「身分証明書とか持たなくいいの?」と訪ねると
「これさえあれば大丈夫よ!」
2人分の受付票を頭上高くかざしてくれました。

 さて、投票所につきました。奥さんが僕の分と合わせて受付しようとすると、おじさんが言いにくそうに

「あのぉ、これは都議選のものですね」

「おやぁ?」

 「あぁ」
 後ろで王子を抱いたまま、膝から崩れ落ちる僕。
 「おやぁ?」じゃないでしょ。あなた市議選の受付票、破いちゃったの!あの時、勢いよく破いたてたのが今日の分だったの!あーあ、せっかく来たのに投票できないじゃないのよぉ。
 呆然とする奥さんとあきれ顔の僕に向かって係のおじさんは笑顔でこう言いました
「大丈夫ですよ。身分証名、持ってますか?」
はい。僕は免許証持ってます。いつだって身分証名くらいは持って歩きますよ。用心深いんだから。
でも奥さんは。。。「これさえあれば!」って言うくらいだから当然何も持ってきていません。

 結局僕一人で端っこに連れて行かれて代理票を書かされて投票しました。あんなにやる気だった奥さんは会場の外でポケットに手突っ込んで石蹴ってます。またもや「空回り大車輪」炸裂です。それにしても他人様からみたらまるで僕が忘れ物したみたい。恥ずかしい。

「もう、すっごい恥ずかしかったんだからね!」
「いいじゃん、ぜぶらは投票できたんだから。あたしなんてさ、、、」
なに不貞腐れてるんですか。違うでしょ。

 その後、この失敗には一切コメントせず、シムシティ(注1)をひっぱり出してきて夜な夜な都市作りに精を出しています。なにも選挙に参加できなかったからってゲームで憂さ晴らしすることないと思うんだけど。。そのうち市会議員に立候補するとか言い出したらどうしよう。もっとすごい空回りをしそうで恐い。

注1)シムシティ:市長として町をどんどん繁栄させ、運営していく都市開発シュミレーションゲーム(マッキントッシュ版)。20年近く昔からパソコンオタクに根強い人気を誇っています。3年前の誕生日に僕がプレゼントしました。


その68 噂は噂を呼んで、、、

「実は育児仲間の間で立場が危うくなっている」
ある日の夜、もの言いたげにしていた奥さんが深刻そうな顔で言いました。一瞬にして僕の脳裏には

『陰湿イジメ!公園で母子共に仲間はずれ。もう私達、此処には住めません!』

みたいな女性週刊誌の見出しが浮かび上がりました。えぇ?!僕達引越すの?マンション買ってまだ3年なのよーーーー!!
「な、なんなのよ、それ」
「あのね、じつはね、」
ついつい動揺してオネエ言葉になる僕に奥さんが説明をはじめました。

 「・・・・・・・」
話を聞き終わった僕はなにも言う気が起きませんでした。別に引っ越しをする必要はありません。

 もう15年近く昔の話ですが、奥さんはこの近くの大学に通っていました。その頃この辺りは開発され始めたばかりで、どこもかしこも山を切りくずされた荒野でよもや10数年後に人が住む場所になるとは想像できないへき地でした。
 奥さんは育児仲間に当時の模様を
「昔はこの辺はゼロヨンレースばかりやっててねぇ。たまに見に来たものよ」
と表現したそうです。
すると奥様から奥様へ話が伝わるうちに
「ゼロヨンレースを見に来た」>「ゼロヨンレースに出ていた」
に変換され、さらにゼロヨンレースを知らない奥様に至っては
「ゼロヨン」>「車のエンジンをブンブンふかす」>暴走族>彼女は族あがり>元ヤンキー
と変換されて、最後に
「昔、ヤンキーだったようには見えないね」
というコメントで本人に戻ってきたそうです。
 本人、さすがに仰天して訂正して歩いてるらしいですが、既に各人の旦那さんにまで「あぁ、元族の人?」という認識をされているそうです。

 近日中に初のファミリーバーベキューが実施されます。彼女はその席でお父さん達に直接誤解を解くつもりでいるらしいですけど、いかがなもんでしょうね。ただの酔っぱらいの絡みにならなきゃいいですけど。。。それよりなにより、僕、「彼女の夫」として皆さんの前に出るのに気がひけます。だってやっぱり恥ずかしいでしょ。みなさんだって僕の立場だったらそう思うでしょ、ねぇ。


その67 鬼は中

 一昨日は節分でしたね。みなさん豆まきなんてしましたか?うちは初めてやりました。
 僕はお風呂から上がるやいなや鬼のお面を渡されベランダへ出され、でも、寒いけど僕も鬼初体験だし、こういうのってパパっぽいからうれしくて
「よーし、脅かしてやるぞぉ」
とやる気十分に王子が豆を捲きにくるのを待ちました。

「ほら、王子。『鬼はー外!』」
奥さんの誘導する声が聞こえました。
窓が開きました。来た来た来た、よーし、
「がおーー」
、と飛び出そうとした瞬間
「あ、王子。外出ちゃダメよ。やっぱ閉めとこ。ガラガラガラ、ピシャ!」

 そ、そんなぁ。僕は空しくガラス越しに鬼を演じました。暖かい部からそれを笑顔で見守る息子と鬼妻。
「王子、『鬼は中、福は外』にいるからね」
 聞こえないように小さな声でガラス越しに王子に語りかけました。鬼は中から笑顔で手を振っています。さ、さむい。お願いだからもう中に入れてください。


その66 スゴイ人

 数日前の夜、奥さんがビデオで新しく始まったドラマを見ていました。王子に振り回されてオンタイムでは見れなかった為です。僕も他にすることもないのでおつき合いして見ていました。全部見終わると1時間20分くらい経っていました。初回スペシャルということで枠が少し長かったようです。

「ねぇ、あたしって凄くない?」
「なにが?」
「初回スペシャルだなんて知らなかったのよ、これ」
「うん」
「だけどなーんか嫌な予感がして予約終了時間を30分後ろにずらしていたの」
「う、ん、、」
「普通に一時間で予約してたら最後の盛り上がり、見れなかったんだよ」
「・・・」
「あたしって勘が冴えてる、凄い!こういうのって『第六感』っていうのかな?それとも『女の勘』?どっちでもカッコイイじゃないのよ」

 かなり御満悦の御様子ですが、実はあの日、時間設定したのはいいけど予約ボタンを押し忘れ、時間がきても録画は始まらず、慌てて手動で録りなおしたんですよねぇ。しっかり録画が開始されたことに安心して彼女はさっさと寝ちゃったんです。ビデオが回ってないのを見つけて教えてあげたのも。番組が終わっているのをちゃんと確認して手動で停止したのもです。

 まったく、肝心なことぜーんぶすっかり綺麗に忘れてくれちゃって、奥様。いや、ほんとうに貴方という方はスゴイ都合のいい方です。あんまりにも凄過ぎて返す言葉もありません、はい。


その65 ハード真っ白け

 今、僕はお布団の中です。時間は深夜3時ごろ。頭まで布団にもぐって朝がこないようにお祈りしてます。

 今日は金曜日の夜。マッキントッシュ(我が家のパソコンです)のOSの最新バージョンを入手した僕は、ワクワクしながら帰ってきました。僕は職業柄、ハードを新しく繋げたり、ソフトのバージョンを上げたりするのが大好きなんです。そう、どちらかというと作る人。一方奥さんは絵を描いたり、写真を加工したり、ビデオを編集したりメールしたり、と使う人なんです。(我が家の場合はすべてにおいてこれが成り立っているわけですが。。。)。

「ねえ、絶対大事なのはなに?」
作業をする前に奥さんの大事なデータのバックアップをとらねばなりません。
「うーんと、メールのアドレス帳と年賀状用の住所録、それからこのHPのソース、デジカメの写真、いっぱい集めたMP3(音楽)ファイル、編集中のビデオ、くらいかな。ビデオ以外はぜーんぶここに集めておくからね」とデスクトップ上のフォルダを指差しました。

 ず、ずいぶんいっぱいあるのね。わかった。
まずはメールのバックアップ。
年賀状の住所録のバックアップ。
そしてビデオ。はい?2ギガ?そんなにいっぱい?1時間以上かかります。終わるころにはくたびれてきちゃいました。その間に奥さんは王子を寝かし付けに寝室へ行ってしまいました。

 まだかな?まだ終わらないかな?一人だと余計長く感じます。奥さんは王子と一緒に寝てしまったらしく戻ってきません。
 あ、もうすぐ終わりそう。。。
 お、終わったぁ!
 これで肝心のバージョンアップができる。

 さ、ハードをフォーマットしよ!これでパソコンの中身は一回全部キレイになくなりました。僕はうれしくていそいそと作業を始めました。うふ、楽しいな。

「あー、うっかり寝ちゃったよ」随分とたってから奥さんが戻ってきました。その頃には作業はほとんど終わっていました。

「できたよ、ほら」
「ふーん」
画面をのぞきながら奥さんが気のない相槌をうちます。
「ね、すごいでしょ」
「ところでビデオだけじゃなくて、残りのバックアップ全部とってくれたんだよね」
「へ?」
「音楽とか、HPのソースとか」
 あわわわわわわわ。。。。取ってない。ビデオのバックアップが長過ぎて残りがあるの忘れてた。。。

「あ。」

 その一言で奥さんはすべてを察してしまいました。
「何やってんのよ」
低い声で唸るように呟くと、くるっと背中を向けるとスタスタと寝室へ行ってしまいました。
その背中に向かって僕は必死に叫びました。
「メ、メールだけはちゃんと元通りになるから、だ、大丈夫だよぉ!」

 あわわわわわわ。落ち着かなければ。奥さんが「大事」って言ったもの全部消しちゃった。とりあえずメールだけは大丈夫なはず。これさえ大丈夫なら奥さんもあとは笑って許してくれるはず。僕は深呼吸をしてメールボックスを復旧する作業を始めました。
 え?メールも・・・戻らない。つまり、、、本当の本当にハード真っ白け。ってこと?ぼ、僕としたことがぁぁ。

 時計はもう深夜2時をまわっていました。うー、どうしよう。これ以上やっても仕方がないので寝ることにしました。あぁ、明日なんと言ってお詫びをすれば許してもらえるのかしら。朝がくるのが恐くいよぉぉぉ。


その64 ある秋の日

 これを読んで下さっている皆さん、もうこのネタは飽きたと思います。僕だってもう飽き飽きしてます。でもいくら飽きてもなぜか次々と起こる性別間違いネタ。。。一体なにがいけなんでしょう

 休日の昼下がり、マクドナルドでの出来事です。
「ちょっとトイレ行ってくる」
と席を立った奥さん。随分と長い事戻って来ないなぁ、と思って姿を消した方に目をやると、向こうからズボンとパンツを足首まで降ろし、Tシャツをまくりあげて笑いながら歩いてくる少年が目に飛び込んできました。(ここでびっくりしたアナタ、いくらなんでもこれが奥さんでしたなんてオチじゃありませんよ。そんなことがあったら真剣に今後を考えます)
 推定10才前後のその少年はその姿のまま店内をうろつき廻り、そこにいる全ての人の視線を釘付けにしていましたが、やがて「スター」と呼ばれるマックのお姉さんに拉致されて親御さんの元へ更迭されました。

 そんな騒ぎの後、うちの奥さんが憮然とした表情で戻ってきました。怒っているような情けないような、納得のいかないような微妙な表情でした。
「どうしたの?」
「いや、今トイレのドアを開けたらさぁ」
「うん、ずいぶん長かったね」
「お尻丸出しの少年が居たのよ」
「確認するけど女子トイレに入ったんだよね」
「あたりまでしょ。そいでさ、個室は空いてたんだけど彼が出てくるまで廊下で待ってたのね。ほら、ズボン上げて手を洗うかと思って」
「。。。」
「でも、しばらくしたらその格好のまんま出て行っちゃったの。すれ違い様に私に変な微笑みを残して。」
「うん、さっきウロウロしてた」
「でね、あたしが個室に入ったらお土産が流さずじまいで残ってたのよ。それだけでも災難でしょ」
「まだ続きがあるの?」
相変わらず事件に巻き込まれる人だなぁ。

 黙って続きを聞くと、仕方ないのでブツを流して自分の用をたしていたら、凄い勢いでドアをノックされて呼ばれたそうです。
『ドンドンドンドン!!お兄ちゃーん!ドンドンドンドン!!お兄ちゃーん!』
って。。。
 そして彼女が個室から出ると変質者ルックの少年が満面の笑みで
「きゃははっは、お兄ちゃーん」
と出迎えてくれたそうです。

 「あたしさぁ、まさか女子トイレで男に間違えられるとは思わなかったわ。一応子供も産んでるし、生物学上は女であることは証明されてるからいいんだけど。」
 生物学上問題があったら僕がパニックですよ。けれども、苦笑いを浮かべながら呟く彼女がいつもとちがって元気がなかったので
「大丈夫だよ、どこで間違えられても一緒だよ」
と慰めの言葉をかけました。
「ぜぶら、もういいよ。それ、なんの慰めにもなってないし。。。」
ちょっと哀し気な雲の広がるある秋の日の出来事でした。


その63 虚偽の申告

 車の保険の更新のお知らせが来ました。ふー、もうそんな時期なのね、1年って早い。。。王子が生まれてからの時の流れに思いを馳せつつ、封を開け、契約の内容に目を通すと、
「あれ?」
僕は契約内容が記してある紙をテーブルの上においてもう一度じっくりと見直してみました。車の保険は結婚前から継続して奥さんのものを引き継いでいるのですが

 契約者:ぜぶらの妻
 性別:男(!?)
 年齢:XX(実際より4才もサバ読み)
 職業:会社役員(偉いのね)

なんだこりゃぁ??こんなインチキ臭い内容で契約していたらなにかあっても保険金降りないんじゃないのぉぉぉぉ?僕は本気で不安になり洗い物をしている奥さんに声をかけました。
「ねえねえ、この保険、ずーっとこんなインチキで契約してるの?」
「はぁ?」
なーに訳わからない事言ってのよ、と言いたげに奥さんが顔をあげました
「今まで何もなかったからいいけど、これじゃあ危ないよ」
怒らせないように、諭すように、穏やかに、でも厳しさを込めて、言葉を選びながら話しました。
「なんの話?」
洗い物の手を休めて彼女がこっちにやってきました。僕は用紙を彼女のほうへ向けて見やすいようにしました。
「ほら、あなた性別と年齢と職業に嘘の申告をしてるよ」
「・・・嘘でしょ」
僕から紙をひったくり契約内容を見つめています。

「なんでそんな虚偽を申告したの?もしかしたら保険料もっと安くなるかもよ」
「・・・」
「他人に男と間違えられるのは仕方ないけど、自分で間違えちゃダメだよ」
「・・・」
「そういえば、この前もジーパン屋で”お父さん”って呼ばれたんだよね」
「・・・」
いつもの事ながらついつい調子にのる僕。そしてしばらくして用紙から顔をあげた奥さんが納得したように言いました。

「これ違う」
「なにが?」
「うちはZ社の保険だもん。これA社の見積もりじゃないのよ」
「え?なんでA社から勝手に見積もりがくるの?」
「去年相見積もりとったときの情報を元に送ってきてるだけじゃん」
「はぁ(キョトン)」
ち・な・み・に、あたしA社の見積もりなんかとってないわよ」
「え?そうだっけ(ってことは。。。)」
「安い方にするって言っていろんなところから見積もりとってたのはぜぶらでしょ!こーんなインチキ書いたのも
全部あんたでしょうがぁぁぁ!!!!!

 違う、違う、誤解、誤解だよ!きっとA社のミスに決まってる!僕がこんなこと書くわけないじゃない!ほんと、誤解、僕じゃない、信じて、お願い、きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ(エンドレスエコー)


その62 失敗は覚えておいて下さい

 ・・・
 僕は寝そべったまま、あんぐり口をあけて呆然としてしまいました。そこにはカッパが居たのです・・・

 日曜日の夕方。「ちょっと前髪伸びすぎだなぁ、揃えてくる」と王子用の刃付きコーム片手に奥さんが洗面所へ姿を消した数分後の出来事でした。
 バン!
勢い良くドアの開く音がして、現れたのは、、、カッパでした。
?!なに、その頭は?!前と横がザンギリで後ろだけ長くて、そうですねぇ、昔のアルシンドみたいな感じ。ついさっきまで前髪も横も随分と長かったんですよ。どうやったらあんな短時間でそんなに切れるのかしら。
「あは、切り過ぎちゃった。変?」
カッパが僕に尋ねます。変って。。。もちろん変ですよ。
「ちょっと後ろとのバランスが悪いよね」
僕の返事は待たずに勝手なコメントが続きます。いつも僕が試しに切らせてくれと頼んでもまったく相手にしてくれない癖に自分であんなにザクザク切っちゃうなんて。理不尽な怒りが込上げてきて、思わず膝を叩きながら声を荒げてしまいました
「なんのためにあんなにお金と時間をかけて美容院に行っているのよ、あなたはっ!もうぅぅぅぅ!」
「興奮するとオネエ言葉になる癖、直した方がいいよ」
ふん、カッパに言われる筋合いはありません

「で、どうすんの、それ」
「直して」
はい?僕が?
「やってみたいって言ってたんじゃん」
確かにそうだけど。。。そんな失敗の後始末はイヤです。直らなかったら全部僕のせいになっちゃうじゃないですかぁ。。でも気弱な僕に断る勇気はありませんでした。王子の散髪道具一式を出して、掃除機だして、洗面所に椅子をおいて。。。

「どうぞ」
声をかけるとカッパはスタスタと準備された椅子に座りました。
「あのねぇ、後ろは生え際に癖があるから切り過ぎないでね。で、前横とバランスよく。イメージはタッキー(滝沢秀明)」
・・・なんか勘違いしてませんか?
「なに言ってるの、状況をよく考えて下さい」
「ケチケチ言うなよぉ、おい」
もう、タチの悪いオヤジに絡まれている気分です。涙こみ上げてきました。

 シャキシャキシャキシャキシャキシャキシャキ
僕は用心深くハサミを縦に入れて作業を進めました。ここで切り過ぎたら最悪の事態になってしまいます。なんとか無事にこの場をしのがなければ。。。唯一の救いは王子と違って動かないところです。
 シャキシャキシャキシャキシャキシャキシャキ
20分も頑張ったでしょうか。なんとか切り過ぎる事も無く、さっきよりはマシになりました。
「あら、結構上手じゃない。鏡ちょうだい」
 僕は彼女に後ろが見えるように鏡を傾けました。なかなか自分でもよく切れたと思います。奥さんもなかなか満足した様子です。あー、よかったぁ。ホッとすると一気に汗が吹き出しました。

「お疲れ様でした」
全てが落ち着いた後、奥さんがコーラを持ってきてくれました。ささやかなお礼と謝罪です。
「おう、ありがと。我ながら上手にできたと思うよ」
「そうね、助かった。ありがとさん」
穏やかにお礼なぞ言われると気分がいいです。出来栄を見ながら
「んー、でも左が少し長いかな?こんどはもう少しバランスに気を付けてやってみるね」
僕がこう言うと
「なーに言ってんのよ、髪は女の命。ちゃんと美容院でプロに切ってもらわなくっちゃ!」
はいぃぃぃ?「なーに言ってんのよ」こっちの台詞です。自分のしたこと、もう忘れちゃったんですか、この人は。
あーあ、今日も骨折り損のくたびれ儲けねー。


その61 つける薬なし

 「くー、あと5枚!」

ビールの補充をしながら悔しがっているのはいつも脳天気なうちの奥さん。これはサッポロ生搾りのシール72枚一口で必ず景品がもらえるキャンペーンに応募しようとしているところです。彼女のお目当てはピクニックシート。これからの季節、レジャーのお供に欲しいようです。
『ビールを飲んでさらにピクニックシートがもらえるなんて一石二鳥!そうでしょう!』
を合い言葉にここしばらくせっせと生搾りを飲みました。とはいっても王子の授乳タイムとの兼ね合いもあって奥さんのペースが全開ではないのと、最初の頃キャンペーンに気付かずにシールを捨ててしまっていたのがここにきて痛手になっています。(僕ひとりで飲むと恨めしそうな視線が痛いのでそんなに飲めないし)
「そう、あと5枚か。でも最近シール貼ってないんだよね、そろそろキャンペーン終わりなんじゃない?急がないと。今買ってきちゃおうか?」
僕はほとんど埋めつくされた応募シートをみながらつぶやきました。あれ?
「ねぇ」
「なに、いいから早く買ってきて!」
奥さんはもうお財布を出しながら僕に買物行かせる気マンマンです。
「これ、締めきり5/20だよ」
「なんですって?????」
奥さん、あまりにびっくりしたんでしょう。瞳孔開いちゃったのかと思うほど目を見開き、ついでに口もおっきくあけて、開けたままで腹話術師みたいにかん高い声で叫びました。よくそんな芸(こと)できますね、僕はこっちに吃驚。

 締めきりから一ヶ月も過ぎてるのに毎日せっせとシール貼っては「あと○枚!」なんて楽しそうにしてたよなぁ、いつも思うけどなんでちゃんと応募要項とか読まないんだろう。ゲームセンターとかでも説明も読まずに100円入れて
「あわわわわわわわわわ、なんだこりゃ?!」
とかいいながらすぐにゲームオーバーしちゃうんです。で、
「うん、だいたいわかった。もう一回」
ってまた100円。最初の100円は説明読めば使わなくて済むんだよね、ほんとは。

あと一歩のところまで埋めつくされたシール。今となっては空しいひと月です。

 もうこれは持って生まれ、さらに永年培った性格なので直せと言っても無理でしょう。彼女はしばらくショックで固まっていました。いいです、そのまましばらく固まってて下さい。

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